2018年1月23日火曜日

ぬり絵

先日の骨董市で、おもちゃ骨董のさわださんの店をのぞくと、ぬりえが箱にどさっと入れてありました。
さわださんは、
「ぬりえはどう?すごくいい状態だよ」
と言いながら、早くもビニール袋から取り出しています。
「紙ものはねぇ...」
と言いながら、中を開けて、一枚一枚見てしまいました。


とても粗末な紙ですが、保存状態はとてもいいぬりえが、箱の中には四種類ありました。
その中で、袋と中のぬりえのどちらもかわいい「みはるのぬりえ」と、袋の絵はちょっと好きじゃないけれど、中のぬりえの枠に色がついているのが珍しい「高級新版ヌリエ」をもらってきました。

幼い少女向けのぬりえで一世を風靡した蔦屋喜一は、1940年に「フジオ」の名前でぬりえを描きはじめましたが太平洋戦争の勃発により中断、戦後の1947年から「キイチ」の名前で再開しました。以後、1960年代半ばにアニメブームに押されてぬりえが廃れるまで、描き続けています。

妹二人が幼いころ、我が家にはいつもキイチのぬりえがあったので、年の離れた私もよく知っていました。
この、「みはるのぬりえ」と「高級新版ヌリエ」は、妹たちが親しんでいたキイチのぬりえよりずっと紙質が悪いので、1950年代のものだと思われます。しかし、文字が左からの横書きなので、戦後のものなのでしょう。


さて、「みはるのぬりえ」の袋の裏と表です。


袋の裏には、ひらがなが書いてあるのに読めません。
なんだっぺ?


中には、ぬりえが八種類、十枚入っていました。
 

田舎か町かよくわからない絵が面白い。右後ろの見えるのは、こんなのがあればいいなというあこがれの建物でしょうか?

「みはるのぬりえ」がいつ頃のものか、みはるとは誰かなどはわかりませんでしたが、ネットでぬりえを調べると「たけしのぬりえ」というホームページがあり、「たけしと同時期に活躍したぬりえ作家たち」の中に、みはるの名がありました。
ちなみに「たけし」のぬりえは稲津寅雄(1908-2000)が描いたもので、稲津は1934年にぬりえを描きはじめ、戦争で中断した後、1946-50年まで描き、以後は映画の看板描きなど、別の仕事をしています。
 

もう一つの「高級新版ヌリエ」の袋の表と裏です。
袋にもぬりえにも作者名がなく、何の手掛かりもありません。しかも、袋の絵と中のぬりえの絵を描いた人は違います。

「たけしのぬりえ」のHPの、「たけしと同時期に活躍したぬりえ作家たち」を紹介する欄には、みはるのほかに、きいち、きみこ、ひでを、ヒデオ、ひろし、ひろみ、よし子、まつを、けいぢ、みさ子などの名前が載っていて、それぞれの絵も掲載されていましたが、この絵は、そのどれにも該当しませんでした。
名前がないことが、「みはるぬりえ」より時代的に前を表すのか、単に名前を書くほどの作家ではなかったのか、そのあたりも不明です。


こちらは、6種類8枚入っていて、袋の絵よりかわいく描けています。
みはると比べて、全身ではなく上半身が多いのが、特徴と言えば特徴です。
 

「みはるのぬりえ」の洋服も「高級新版ヌリエ」の着物も、丁寧に模様が描き込まれています。これで遊ぶ子どもたちが喜んだか、想像の余地を奪われてしまったかは微妙なところですが、作家さんはさぞかし楽しんだことでしょう。

それにしても、女の子たちの髪の毛はみごとにちりちりにカールしています。
戦後すぐ、パーマやさんは復活しました。当時、パーマネントを当てて髪をカールさせていない大人女性は皆無の時代でした。着物しか着ない私の祖母や夫の母でさえ、パーマを当てていました。
子どものちりちりヘアが、波打つ髪への憧れを表していると思うと、時代の流れを感じます。






5 件のコメント:

hiyoco さんのコメント...

面白いですね!女の子の洋服の柄に見入ってしまいました。
読めないひらがなですが「ぎよよーる」でしょうか?フランス語でギヨールはパペット人形(手を入れて動かす人形)のことなので、それっぽい気がします。

hiyoco さんのコメント...

間違えました。ギヨールじゃなくてギニョール(Guignol)です。

さんのコメント...

hiyocoさん
わぁ、ありがとう。フランス語ときましたか。
学のあるところを見せようとしたのに、ギニョールと書こうとして、ギヨヨールと書く、しかもひらがななのに字を間違える、大いに笑っちゃいました。のどかでいいですね。もっとも、ぬりえ作家さんたちも食うや食わずで、のどかどころではなかったと思います。服や着物の柄も、描き込んで差別化しないと、取り上げてもらえなかったりして(笑)。
それにしてもあのころの少女の絵の脚の太さ、立体になったフランス人形もそうでしたが、半端じゃない太さでした。
その昔エチオピア人から、「どうして日本人は脚が太いんだ?あんたなんて太ってもいないのに、脚だけは太いじゃないか」と言われたのを、苦々しく思い出してしまいます(笑)。

karat さんのコメント...

懐かしいですね。きいちの塗り絵で遊んだくちです。みはるとかは知りませんが…。
数年前に、本屋で「きいちのぬりえ」という復刻のような簡単な冊子を見つけて懐かしくて買ってしまいましたが、それに塗るわけにもいかず、そのまま置いてあります。それを思い出して引っ張り出して、なんだか子供の足が妙に太く描かれているなあと思って見てまして、それでここにやってきて、上のコメント見て笑ってしまいました。(^^)。

さんのコメント...

karatさん
キイチのぬりえで遊んでいたのですね。駄菓子屋さんで売っていて、確かに一袋5円くらいじゃなかったでしょうか。
外国で東洋人を見かけて日本人かどうか知るのは簡単、姿勢が悪くて脚の膝を曲げたまま歩き、足首が太めだったら、100%日本人と言われていました(笑)。
私の友人によると、日本人は武士は重い刀を振り回し、農民は重い鍬を振り上げ、商人は重い荷を担いで歩き回ったから脚が太くなってんだって。科学的根拠はまったくありませんが、低栄養だったのに、それだけ時間をかけて身体を丈夫にしてきたということ、ご先祖さまたちに感謝しなくてはならないのかもしれません(笑)。