2018年5月2日水曜日

きゅうりビン


きゅうりビンと呼ばれていたビンです。
1809年にイギリスのWF.ハミルトンが、ラムネ(レモネード)を入れるビンとして考案しました。
栓はコルクだったので、栓を乾かすとラムネの炭酸が抜けてしまいます。そのためきゅうりビンは、わざわざ立たないように、寝かせておくよう、底を丸くつくってありました。


文明開化がやって来た チョビ助とめぐる明治新聞挿絵』(林丈二著、柏書房、2016年)は、明治の新聞挿絵を、「路上な目線」で林丈二さんが観察した本ですが、きゅうりビンも載っています。


明治22年(1889年)7月の『江戸新聞』掲載の「夏の夜」第四話の挿絵です。
この絵を見て疑問に思うのは、きゅうりビンの保管方法です。


逆さに立てているのはいいとして、コルクを上にして立てているビンも、空ビンではなくて、中にラムネが入っています。これではコルクが乾燥して、炭酸が抜けてしまいます。

この茶店の人が知らずに立てていたとも考えられますが、もしかしたら、当時は炭酸が少し抜けたラムネの方が好きな客が、かなりいたのかもしれません。

清涼飲料よもやま話より

コルクの栓は、炭酸の圧力で飛ばないように、針金で留めてありました。

日本で最初にきゅうりビンを紹介したのは、1853年(嘉永6年)浦賀に来航したペリー提督という説があります。友好のしるしに栓を抜いたら音がして、それを聞いた日本人はピストルを撃ったのかと思って、刀を抜いたと言われています。

『文明開化がやって来た』によると、日本で最初のラムネは、明治元年(1868年)に東京築地で、中国人の蓮昌泰がつくりましたが、飲むとすぐにゲップが出る奇妙な飲みものとして日本人には敬遠され、当初、飲んだのは外国人ばかりでした。
ところが、明治18年(1885年)から19年にかけて、東京周辺でコレラが大流行したとき、「天然水は危険なのでラムネを飲むといい」という宣伝がなされて、ようやく日本人の間でもラムネが飲まれるようになりました。
上記の茶屋の挿絵は、コレラの大流行から3、4年後の夏ですが、そのころになると、町のあちこちできゅうりビンのラムネが見られるようになっていたようです。


きゅうりビンは、ずっと舶来(たぶんイギリス製)のものが使われました。
このビンは、GREENE KING & SONS、BURY ST EDMUNDSと楕円形に陽刻があり、その真ん中にLIMTEDと陽刻のある、イギリス製のビンです。

ブログ「レトロな小部屋」より、

ほかにも、きゅうりビンの絵がありました。
孫引きなので、絵の出典や、年代などはわかりません。


飲もうとコルクを抜いたとたん、ビンからラムネが勢いよく飛び出しています。
こうした失敗も、いろいろなところで繰り広げられたことでしょう。
  

 

欧米には、いろいろなきゅうりビンがあったようです。


焼き物製のものもあり、


底の形がおへそのようになったものもありました。


きゅうりビンのコレクターも多いようで、立たないきゅうりビンの飾り方にも、いろいろな工夫が見られます。


1872年に、イギリスのハイラム・コッドが、ラムネ玉の入っているコッドビンを考案しました。
本場のコッドビンの特許権が切れた1888年(明治21年)、大阪の徳永玉吉がコッドビンの研究・開発に着手して成功し、日本でもコッドビンが爆発的な勢いで広まっていき、きゅうりビンは廃れてしまいました。

1890年に、アメリカでガラスビンの生産がはじまっています。クラウンコルク(王冠)が考案され、これによってビン入り飲みものの生産は飛躍を遂げました。そして、コッドビンは、世界から消えていきました。
しかし、日本ではラムネは大企業ではなく、小さな町の工場でつくられていたので、王冠が普及した後も生き残り、スクリューキャップで使い捨てのペットボトルがあらわれるまで、長く親しまれました。

今でも、コッドビンを使ってラムネがつくられているのは、日本とインドだけになっています。
もっとも、現在の日本のラムネは、口がプラスティック、あるいは全体がプラスティック製の、使い捨てのビンだけで、分厚いガラスビンを使ってのラムネ製造は、インドだけですが。

消えゆく『本物』のラムネの話より

インドでは、ラムネには、ライムを絞り入れて飲むようです。







2 件のコメント:

hiyoco さんのコメント...

昨日うちにインド人が遊びに来ましたが、明日だったら「ラムネにライム入れる?」って聞けたのに残念!
私は子供の頃炭酸が苦手だったので、息子が飲むようになってから数回しか飲んだことありません。なのでビー玉の仕組みもあまり考えたことがないんですよね~(笑)。きゅうりビンのコルクを上にした気の抜けた方があればよかったかな?

さんのコメント...

hiyocoさん
あらぁ、残念でしたね。インドの人って幅が広いというか、日本人みたいに共通の認識などない気がするから、知っている人は知っていても、知らない人は全然知らない感じもします。国土だって、広いしねぇ(笑)。
hiyocoさんは炭酸が苦手でしたか。私は飲み物は熱いお茶ばかりですが、炭酸も飲めないことはありません。
長男が赤ちゃんのころアメリカにいて、下痢をして主治医に電話すると(いきなり言っても見てくれない)、まず炭酸飲料を飲ませなさいと言われます。嫌がる赤ん坊にスプライトを飲ませていると、毎回汚れていたおむつがだんだん汚れなくなり(お腹に何もなくなったか?)その旨を電話すると、初めて連れてきなさいと言われて、連れて行くと、もう治りましたよ、と言われる、そんなことの繰り返しでした。あんなに飲むのを嫌がっていたのに、3歳くらいになったら飲みたがっていました。
次男を日本で育てるとき、下痢してもアメリカ式にスプライトを飲ませられなかったし、熱を出しても、裸にして冷水を絞ったスポンジで身体じゅう拭くなんて、絶対できませんでした(笑)。よくやったよなぁ。それが、今でも長男の性格に影響しているかもしれません(汗)。