岩手県遠野の一市通り(ひといちどおり)に籠屋さん(荒物店)がありました。
店内の写真はうっかりしていて撮り忘れましたが、なかなか興味深い品ぞろえでした。
背負子、魚の筌(うけ)、米上げ笊、味噌漉しなど、所狭しと置いてありましたが、やはりここは東北、おもにはすず竹(遠野では篠竹と呼ぶそうですが、我が家のあたりの篠竹と同じものかどうかはわかりません )でできた籠でした。
一戸あたりのものと思われるお弁当籠、収穫籠、市場籠などが、数としては一番多かったでしょうか。
その中に、宮城県の肥料ふり籠がありました。
桜の木の皮とすず竹のコントラストが美しい籠です。持ち手のついているものついていないもの、深さのあるもの、大小いろいろなサイズでありました。
籠屋のおかみさんの話だと、以前は女性がつくっていたけれど今はその後継者の、70代の男性がつくっているとのことでした。
畑で、肥料を巻くとき使った籠ですから、籠目から肥料がこぼれないよう、太い桜の皮を、すず竹でしっかり絞めながら、編んであります。
「手仕事フォーラム」のHPより |
肥料ふり籠は、箕の編み方の応用だそうです。
平らに編んだものを四隅で畳んで綴じ、立ち上げて丸い縁にして、杉の枝の持ち手をつけています。
畳んで綴じるときと、縁を始末するときに麻紐を使っているのですが、なんとなくしっくりきません。それもそのはず、昔はフジの皮から採った繊維を使っていたそうです。
この、紐が麻という点だけで、買おうか買うまいか、心の中でしばらく悩みました。
桜の皮を集めるのが難しくなっているとか、後継者が育つかどうかなど、いろいろ問題があるのに、フジの繊維の紐を望むのは高望みですが、フジの繊維だったらと思わずにはいられませんでした。
ちょっとしたところで、それまでの作業がさらに生きたり、あるいは台無しになったりします。ほんのちょっとしたところだけに、難しいものです。
縁に回した真竹(遠野では唐竹と呼ぶらしい)の間から見えている、桜の皮は、とっても素敵です。
籠屋さんには、同じ方がつくった、桜の皮とすず竹を組み合わせた箕もありました。
箕も、縁に巻いたのが麻ひもでなければ、どんなに美しいかと思われるものでしたが、残念ながら、麻紐が美しさをちょっと損なっていました。
籠屋さんには売り物のほかに、古い籠や古い民具、古い花巻人形や附馬牛人形(つきもうし)などを飾ってありました。
花巻の流れを汲んだ古型の附馬牛人形は、とってもおおらかなものでした。
写真の撮り忘れが悔やまれますが、夢中になるとたいてい忘れてしまいます。
2 件のコメント:
憧れの(笑)肥料ふり籠がこういう町の荒物屋さんで買えるんですね…ガラス戸に貼ったドンジョヴァンニのポスターが面白いですが…。
それにしても、民芸品展示会等で見かける肥料ふり籠と何か印象が違って、「?」、と思っていたのですが、麻紐だったのですね。まあ、何かを作るとき材料の全部を調達するのはとても大変なのですが…。
karatさん
民芸品展示会で見かける肥料ふり籠も、みんなこれと同じ麻紐ですよ。というのも、どれも宮城県大和町の佐藤さんご夫妻の作ですから(笑)。籠屋さんの話では最近、若いお弟子さんができたようですがどうなることやら。
イタヤカエデ、桜、フジ、すず竹、それにカズラ、マタタビ、真竹などなど、全部採りどきが違うし、処理があるし、うまく保管しなくてはならないし、大変です。でも、それが丁寧に生きるということなのでしょうね。次の年の心配もしておかなくては、材料が枯渇してしまうし。
笠間にも益子にも竹籠屋さんがまだ健在です。でも、ここに住んでいるからですが、見たことのあるような籠ばかりで、欲しいと思うものはありません。でも、東北の籠屋さんはすごく面白かったです。花巻の籠屋さんも探して行ってきたらよかったかなぁ。弘前の籠屋さんにも行きたいです(笑)。
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