2025年4月25日金曜日

韓国の竹籠


韓国(李氏朝鮮後期)の枕籠(籠枕)です。
韓国の方から弁当籠と聞きましたが、お弁当を入れるには大きすぎるような気がします。貴重品入れではないでしょうか? 旅に出て、枕籠に貴重品を入れて、それを枕にして眠れば安心です。


内側には薄くだ(へいだ)竹ひごを網代に編んだものを重ねて、二重になっています。


縁は本体、蓋ともに、薄くだ幅広の竹を回して、クズのような繊維で巻いて留めてあります。この繊維がなんとも魅力的です。


外側は、細いひごと太いひごを組み合わせた平編みで、底を平らに編んでから、胴へと立ち上げています。
長辺の真ん中には太いひごを2本入れ、片方は2本で1本として扱い、片方は2本として扱っているのは、胴に立ち上げた場合、経ひご(たてひご)が奇数でなくては編めないためです。短片に太いひご4本、長辺に太いひご12本使うことで、胴に立ち上がると経ひごが8本(両側に立ちあがるので4本×2)+23本(12本×2=1)の計31本で編んでいます。


私は籠を編んだことがないのでわかりませんが、枕に具合がいいように、真ん中をへこませるのは、こういう編み方があって自然にへこむのか、あるいは編んだあとで、竹を湿らせて重石を置いてへこませるのか、どうなんでしょう?
身の方も真ん中がへこんでいるので、枕として使っているうちに自然にへこんだものとは考えにくいです。


身の方は、上をすぼめています。蓋はぴったり閉まるけれど、ブータンの弁当籠のように開けるとき必死で格闘する必要がない、絶妙な閉まり具合です。
ちょっとだけ残念なのは、籠の内側がわりとありきたりな網代編であること、


上の写真の籠たちのように、ドキッとするような内側だったらもっともっと素敵だったのに、というのはないものねだりでしょう。


『韓国の藁と草の文化』を見ると、竹で編んだ籠が掲載されているのは京畿道と全羅道の数例だけ、圧倒的に竹ではない素材の籠ばかりです。
韓国の、現在の竹籠事情はどうなっているのかとネットで探してみると、ヨメコさんという韓国に在住されていた日本人女性のブログの中に、「竹籠を探して潭陽(タミャン)へ」という記事があるのを見つけました。


ソウルでは編み組み細工はなかなか見つからず、売られている籠もヴェトナム製や中国製ばかり、そして韓国製の籠は高い! ヨメコさんは
全羅南道の潭陽まで出かけてみます。
さすが
潭陽には籠屋さんがたくさんあるのだけれど、潭陽でも中国製やヴェトナム製の輸入籠しか売っていない店もあります。竹細工どころの潭陽でも籠師さんの高齢化が進んで、ほんの少数の籠師さんしかつくっていらっしゃらないのです。



画素数が少なくて見にくいのですが、ヨメコさんのブログからお借りした潭陽の籠屋さんの店先の写真です。日本の籠屋さんにはだいたい竹素材の籠しか並んでいませんが、上の写真の上段に、草や藁で編んだらしい籠が並んでいるのが見えていて、韓国らしいです! 


さらに、高知県の「籠屋竹虎」の社長さんのブログに、2014年に潭陽の竹祭りに行ったときの記事がありました。


2014年をさかのぼること30年、1980年代半ばまで、潭陽には300年も続いた竹市場があったそうです。


潭陽の韓国竹博物館の広場には、籠売りの銅像が立っています。


また、博物館には竹籠市場のジオラマがあります。
竹虎の社長は、小さくなってこのジオラマに入り込んで、竹籠市場のおじちゃんやおばちゃんと話してみたいと書いています。
ミニチュアの籠は竹で編まれているのだろうか? どんな種類の竹籠があるのだろうか? 私もこのジオラマを見てみたいです。


さて、『かご・バスケッタリー 編み組みの器』(町田市立博物館の展示会の解説書、1984年)には、韓国の平編みの竹籠(国立民族学博物館所蔵)が掲載されていました。
日本には、浅い籠だったらこれと同じ編み方のものがありますが、深くて口がすぼまっている形を、平編みで立ち上げた籠は、私は見たことがありません。


上の写真は、韓国の深い籠と同じ編み方をした、岡山県勝山市の籠です。
豆を入れたり、ご飯を入れたり、箕としても使える、山陽地方の万能籠です。


浅いし形も違うので、比べるのは難しいのですが、平面を曲面にするので、「もう一つの面」はこんな感じにひごが集まっています。韓国の籠の「もう一つの面」は写真がないのでわかりませんが、籠が深いし、縁がすぼまっているので、ここでひごが超混み合うのではないかと想像しました。なんだか編むのに力が要りそうです。


比べても何の意味もないけれど、こちらは網代編みから立ち上がったカンボジアの、丸い底の計量籠です。深い籠を、角をつくらずに立ち上げていくなら、この編み方の方が無理なくまとまりやすく感じます。


韓国の籠たちです。





 

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