2012年7月12日木曜日

田植えの道具


『教えられなかった戦争・フィリピン編』(高岩仁編集・撮影)という映画の中に、フィリピンの田植え風景が出てきます。
確か、男性四人が歌を歌いながら田植えをしているところで、短いシーンですが、その田植えのあまりの早さは、見ていて涙が出そうになるくらい美しいものでした。

それに引き替え、プノンペン近郊の村の田植えは、なんともゆっくりゆっくりでした。
「なんでこんなに遅いのかしら?」
元同僚のナリンにたずねると、
「砂地で、土が硬いからだよ。プレイヴェン県だったら、そのフィリピンに負けず劣らず早く植えられるよ。土が違うからね」
という答えが返ってきました。

しかし、カンボジアには、もっと土の固い田んぼがあるようでした。


プノンペン近郊の村では使われていない、田植えをするとき、固い田んぼに穴を開ける道具です。

 
ギャラリーで開催された、生活道具の展示会のとき出版された冊子、『TOOLS AND PRACTICES』 に、木でつくられた「押し棒」と竹でつくった押し棒が紹介されています。コンポントム県のもののようです。



この道具が押し棒だと知っていましたが、田植えにそんな面倒なことをするなんて、実はその時まで半信半疑でした。
でも、この展示会を見に行って、納得がいきました。涙ぐましい努力です。

お米をつくる民族はみな同じですが、お米を栽培するのに適した土地であろうとなかろうと、長い時間をかけて、適地に変える努力をしてきたようです。


冊子に紹介されている押し棒は、木や竹の先を尖らせているだけですが、私の持っている押し棒には金属の先がついています。


それにしても、王侯貴族の使うものではない、たかが農具に美しい彫りものをしているところは、さすが木彫の国カンボジアです。



長さ58センチの棒に、別の木でハンドルをつけています。


ところどころ赤い色が残っているのは、もしかして漆を塗ってあったのでしょうか。


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