2018年9月29日土曜日

タータンチェック

ひと月ほど前に、たくさんのふしぎの2018年9月号、『すてきなタータンチェック』(奥田実紀文、穂積和夫絵、福音館書店)を買うつもりで本のネットショップをチェックしていて、横にちらっと出ていた『ナミブ砂漠、世界で一番美しい砂漠』(野村哲也文、写真、1916年)の方を買ってしまったことがありました。
『すてきなタータンチェック』は、そのときは、「まぁいいや」と思ったのです。
ところがhiyocoさんのブログで、『すてきなタータンチェック』を取り上げていて、面白そうでした。やはり買おうかと調べると、次の月の号が出る時期で、9月号の発売を差し止めている期間というのがありました。
「あっ、買えない!なんで?」
と慌ててしまいましたが、そんな期間も過ぎて、また発売されたので買いました。


たくさんのふしぎは、表向きは子どもの本ですが、とても詳しい説明で、何歳くらいからわかるかしら?大人の私は、とても勉強になりました。

タータンチェック(タータン)は綾織りです。
綾織りにすると目が詰まるので、もともと寒いところで着る布として織られたタータンが綾織りなのは、当たり前と言えば当たり前です。
風よけ、雨よけの、トレンチコートやレインコートにするギャバジン(これもイギリス発祥。有名なメーカーはバーバリー)も綾織りで織られています。
それに対して、平織りの布は、目を詰めては織りにくく、風を通すので、暑い季節や、暑いところで着るのに適しています。
もっとも、例外もあります。平織りでもごくごく細い糸で織れば目の詰んだ布ができるし、カンボジアの綾織りの絹のように、しゃきっと張りがあって、身体にまとわりつかないので、熱帯でも快適に着られて、寒いところでは風を通さないので暖かく感じる布もあります。

綾織りにもいろいろあり、表と裏の糸の出方(飛ばし方)を変えると、長く出ている方の色が目立つので、表裏が違った印象になります。例えばジーンズは、経糸を藍で緯糸を白で綾織りにしていて、糸の出(長さ)を表と裏で変えているので、表は青く、裏は白く見えます。
ところが、タータンは表裏同じ目(2目綾織り)で織っています。そのため、裏表とも同じ印象に見えます。
また、タータンは、経糸と緯糸の並べ方(縞のつくり方)を、必ず同じ色で同じ配列にしてあるそうです。それは知りませんでした。

日本でも、タータンはお馴染みです。今もあるかどうか、横浜の元町にはタータンチェックの専門店がありました。
ときおり、タータンのブームも訪れました。タータンのひざ掛けをあちこちで見かけた時があったし、タータンをスカートやスカーフに取り入れたトラッド・スタイルが流行したこともありました。


高校生の制服のスカートは、今もタータンがたくさん見られます。

と、ここまで書いて、私はタータンとは、全く無縁に過ごしてきたことに気づきました。
タータンにはなんとなく、お嬢さまの雰囲気がありました。実際高価なものだったかどうか、医者の子どもである従妹たちはよくタータンを着ていました。
私の場合、長じても、タータンを身に着けたことは、マフラーでさえありません。タータンとのつき合い方がわからず過ごしてきたのでしょう。


これら、タイの浴用布パッカマーのチェックは、経糸緯糸を同じように並べて織っているので、もしこれが綾織りだったらタータンと呼ぶのにふさわしいのですが、平織りです。


そして、こちらの布(パッカマー)は、経糸と緯糸の色糸の配列が違い、対角線で折ってみると模様が重ならないので、タータンではないうえ、やはり平織りです。


平織りというのは、経糸と緯糸が一本おきにくぐるように織る織り方です。



手持ちの格子の布をチェックしてみましたが、どれも平織りでした。

スコットランドの高地の織りものであるタータンは、キルトと切っても切れない関係にあります。
そのことは、もちろん知っていましたが、この本で、キルトが比較的新しいものだと知りました。それまで、一枚の布を使うプレードだったものが、1720年代に上下が切り離されてキルトとなったのです。


言葉は知りませんでしたが、プレードは物語の中では大いになじみがありました。
ローズマリ・サトクリフの物語に出てくる男性の多くがプレードを身につけています。『ともしびをかかげて』のアクイラは、凍えるような寒い部屋から、少しでも暖をとろうと暖炉の前にプレードを持ってきて、ベルトを締め、襟もとで青銅と銀でできたブローチを止めて、進退を賭けて王の前で話をするために出掛けていきます。
ところで、ル・グゥインの三部作『パワー』に出てくるガヴィアは、高地人のチャムリからチュニックとキルトをもらい、キルトのはき方がわからず肩にかけて笑われています。
もっとも、サトクリフのアクイラは、ブリテンからローマが撤退した時代を舞台にしていますが、ル・グゥインの物語は架空の場所、架空の時代なので、どんな服装でも構わないのです。

女たちが糸を紡ぎ、堅機(たてばた)で布を織った時代から、タータンチェックは今日まで消えることなく受け継がれてきました。
ギンガムチェックやマドラスチェック(どちらも平織り)には親しんできた私ですが、これからも、フォーマルの感じがするタータンとつき合うことは、まずなさそうです。
本はとても面白かったのですが。










4 件のコメント:

hiyoco さんのコメント...

すごーい!こぼれ話だらけで楽しい!主音声と副音声を同時に聞いているようでした。思わずジーンズの裏めくっちゃったし(笑)。
綾織は目が詰まっているのですね。友達のバーバリーのコートを持った時にその重さにびっくりしましたが、防風防寒に適した綾織だったからなのですね。
私もタータンに縁がなかったかも~。

さんのコメント...

hiyocoさん
そうそう、織り目って飛ばすと締まります。自分の左右の手の指で、互い違いと2本飛ばしで組んでみたらよくわかります(と言っても指ではあまり組めないけどね)。

えぇぇ、hiyocoさんもタータンに縁がなかったのですか?お仲間ですね(笑)。
タータンが好きな人って、なんとなく思い浮かべられますよね。

でも、本は面白かったです。織りものにも衣装にも歴史があるんですね。
私としては、機械で織るタータンより、手で織ったタータンの道具、筬などのこと知りたいです。本の最後の、オリジナルのタータンを織った織り機は、綜絖も筬も金属です。どこの織り機かなぁ、スウェーデン辺りのかもしれませんが、もちろんスコットランドのハイランドには金属の筬なんかなかった、どんな道具を使っていたのか、とっても知りたいです。

karat さんのコメント...

スコットランドのあの衣装にはそういう意味があったんだと初めて知りました。つまり一枚の布を切らずに使って、とても暖かい服装で、長さ調節できたり、すっぽりとかぶれたり…。動物を育てて糸(ウール)をとって、布にして…、とても貴重ですから、切らずに着用したのですね。ただ、脇のプリーツはどうやって入れるのかが単純な疑問として残りました。ただ畳んだくらいでプリーツになるのかな…?アイロンかけたのかな?と。
私、お嬢様ではなかったのですが30代のころタータンチェックの巻きスカートを一着愛用していたのを思い出しました(^^;)。。写真の女子高生のような短さではなく、ひざ下丈くらいのですが、ウールでプリーツがあってとても暖かかったです。

綾織は平織りより締まるというのも初めて知りました。なるほど…

さんのコメント...

karatさん
プレードのタータンは、夜は毛布になったのでしょう。旅する時など便利ですね。
それにしても、このプレードの解説にある、2×4mの布、300年前にどうやって織ったか気になります。アフリカの布のように、1m幅の布を継いであるのかもしれない、あるいは1m幅の織り機で、ダブル織りという方法もないわけではありません。とにかく、人間が両手を広げて織れるより広い幅の織り機はないのですから、不思議です(段通の堅機はどんな幅にでもできるので、例外)。

プリーツはどうやったんでしょうね?アイロンは古くからあったのかもしれません。
サリーのように木綿の薄い布なら、畳むときれいに収まりそうですが、なにせウールですからね。でも考えてみたら中高生のプリーツスカートって、プリーツ加工してはありませんでした。雨に濡れたらプリーツが取れたりしませんでした?濡れたものは寝押しできないし、替えスカートも持ってなかったような(笑)。だからキルトも寝押しだったのかとも(笑)。
東南アジアのモン人は、縫って長く置いておいて細いプリーツをとります。あれもアイロンも使わずによく畳めていて、長くスカートとして使った古い布を伸ばして使っても、畳みじわは取れません。