2022年9月25日日曜日

『ひねもすのたり日記』

「これ読む?」
と、『あしたのジョー』が大好きだった息子が持ってきたのは、ちばてつやの『ひねもすのたり日記』(小学館、2018年)でした。


長く長編漫画を描いてこられたちばさんは、面倒な「漫画を描く」という仕事から解放され、それでもなにかと忙しい生活を送られていましたが、編集者にくどき落され、重い腰を上げて18年ぶりに筆をとったという、1話が4ページで完結する自伝漫画です。
家族で満州の奉天に住んでいた幼いころから現在まで、時代を行きつ戻りつ、おりおりの物語が詰まっている、すべて彩色された力作です。
「人が死ぬ話が多いけど」
と、息子。
「戦中戦後の話もあるし、漫画家仲間がみんな高齢だから、しかたないんじゃないの」
といっても、「高井さんが他界した」などと、死は決して暗くは描かれていません。


それより、食べるものも満足にないなか、乳飲み子を含む幼児4人を連れて中国大陸をさまよい、


無事に引き上げ船までたどり着いて帰国してきたご両親の生きる力の方が、強く伝わってきます。


どのページもよく書き込まれていて、絵の楽しいこと、隅から隅まで楽しめます。


「4冊出てるらしいけれど、古本で売ってたのは2冊だけだったから」
と、2冊渡してくれた息子。


その2冊を数日、変わりばんこに絵をじっくり見返して、それはそれで楽しめましたが、続きも読みたくなって、3巻と4巻を買ってしまいました。


お話はまだまだ続きそうです。
それにしてもちばさんの記憶力の確かなこと、もし私に絵心があったとしても、どの時代に何があったかはすべて忘却の彼方、町の様子、食卓の回り、机の回りなど何一つ思い出せそうになく、たった1枚の絵を描くにも、3年ぐらいかかってしまうことでしょう。



 

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