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『パッチワーク絵』(文化出版局、1982年) |
宮脇綾子さんの展示会を見て、同じく布をたくさん持っていて、その豊富な布を縫い綴って絵にしたエドリカ・ヒューズさん(1907ー1999年)を思い出しました。文化出版局から、『パッチワーク絵』(1982年)という本も出ています。
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セント・デービッド大聖堂 90×80cm 1975年 |
エドリカさんは造形に関心の高い一家に育ち、父親の勧めで通った美術学校を卒業後、友人とスタジオを持ち、絵画の仕事などをしていました。
結婚して次々と5人の子どもに恵まれ、引っ越しや第二次世界大戦もあり、絵を描く暇はありませんでしたが、いつかパッチワークで絵を描きたいと、子どもたちに縫って着せた服の端布を捨てないで、丹念にためるようになりました。
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ヨークシャーの町 72×72cm 1981年 |
そして、リバプール近郊に住み始めた51歳のころから、パッチワークの制作に取り掛かりました。
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街の噴水(パリ) 72×72㎝ 1981年 |
東京で一度展示会があって、実物をたくさん目にしましたが、その布の使い方の巧みさには驚くばかりでした。
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窓辺のユリ 72×66㎝ 1976年 |
エドリカさんの娘である、友人の長島キャサリンが、
「あれは私のワンピースだったの。それからこれはインドネシアからお土産にした布」
などと、嬉しそうに解説してくれたものでした。長島夫妻は、1960年代初頭に3年ばかりインドネシアで暮らしていました。
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ウェスト・カントリーの雪景色 80×80㎝ 1973年 |
エドリカさんは、色別に16に分けた大きな袋の中から、使いたい布を探し出し、つくりたい形に切ってはピンで仮止めし、ある程度の大きさにした後布の端を折り込んで縫い合わせ、徐々に大きくしてつくります。
小さな下絵は描いていますが、実物の下絵は描かないで仕上げるというのだから、びっくりです。
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青と茶色の家のある風景 50×67㎝ 1979年 |
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部分 |
柄の小さい布だけでなく、柄の大きい布も大胆に組み合わせて、どの絵もとても立体的です。
布は色別に分けてしまっていたそうですが、その絵にぴったりの布を探すのは大変だったのかしら、あるいはそれが楽しみだったのかしら、楽しみだったような気がします。
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ハト 88×76㎝ 1972年 |
ジャッキー・ティルウィットさんは、エドリカ・ヒューズさんの実の妹さんです。
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モードレン・カレッジ 97×87㎝ 1976年 |
それにしても、5人の子どもたちはどんな服を着ていたのかしら?
パッチワークの素材になった布が、全部が全部子どもたちの服の端布ではなかったとしても、夏の短いイギリス(キャサリンはウエールズとしか言いませんが)で木綿の布がこんなにあるとしたら、四季折々、子どもたちはとても素敵な服を着ていたことでしょう。
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