2025年12月26日金曜日

黒豆

 


お正月用に、生協で買った黒豆を煮ました。
『みおつくし料理帳』シリーズの中に、江戸の黒豆と大阪の黒豆の煮方の違いでお互いに譲らない場面が描かれています。江戸の人にとっては長寿を表すしわしわの黒豆が正しい煮方、大阪の人はしわのないふっくらと炊いた黒豆が正しい煮方というものです。そんなことになっていたとは、つゆぞ知りませんでした。
私が親しんできた祖母や母の煮た黒豆は、しわ一つないものでもなく、しわだらけのものでもなく、しわがないように炊いたつもりが、ちょっとだけ(だいぶ?)しわが残ったようなものでした。
そして、大人になってから、ふっくらと煮てしわのない黒豆を食べたとき、黒豆はこんなにおいしいものだったのかと、改めて思ったことがありました。
だから、『みおつくし料理帳』に登場する江戸の人たちが、主人公の澪が炊いたふっくらと柔らかい黒豆を食べてみて、「おいしい」と言わずに、「しわのない黒豆なんてダメだ」と口を揃えて言っているのは、ちょっと信じられないことでした。


さて、子どもたちが小さかったころ、私もおいしい黒豆を炊きたいと、『土井勝お正月料理』(お料理社、1975年)を参考にして、何年か煮ていたことがありました。


『土井勝お正月料理』は、おせち料理からお雑煮、お正月のお菓子から七草がゆまで丁寧につくり方を説明してある、美しくて有用な本ですが、参考にしてつくったのは黒豆と煮しめくらいなもの、活用には程遠かったのですが、黒豆はふっくらと、しわ一つ寄らずに炊けました。


子育て時代以後は、日本にいなかったり、父母が存命中は毎年、実家でお正月料理をいただくのを恒例にしていたりと、自分で黒豆を煮る機会はありませんでした。


この本では黒豆を700グラム煮ています。
手元にある黒豆は200グラムだけ、つくるにあたって、砂糖、しょうゆ、塩、重曹、水などほかの材料を、豆の量に合うように、計算して減らしました。


材料を熱湯に一晩浸しておいた後、煮るのは弱火で8時間ですが、豆の量を少なくした分、水の量も少なくしたのが悪かったのか、あるいは落し蓋が穴開きのものだからか、煮汁が減るのが早いので、何度も水を足さなくてはなりませんでした。また、今どきのコンロなのでお鍋が熱くなるとすぐに自動停止装置が働いてしまい、何度もガスをつけなおすなど、とてもレシピ通りには煮ることができませんでした。
煮る時間も、半分の4時間くらいだったか、夜も更けたのでやめてしまいました。


それでも、しわ一つないおいしい豆に煮あがりました。

昨年は、初めて冷凍のおせちを買ってみたけれど、まったくおいしくありませんでした。今年は黒豆とあとはお雑煮でお正月とします。


『土井勝お正月料理』のお雑煮の章では、お雑煮の由来についても書かれています。
一般的に関西のみそ仕立て、関東のすまし仕立てと言われていますが、江戸時代は仕立ての違いが階級によって分かれていて、武士階級は関西も関東もすまし仕立て、町人階級は主にみそ仕立てでしたが、全国から人が寄り集まった江戸では、みそとすましが混在していたそうです
また、江戸時代の宮中では、ひし形の角もちに丸もちを乗せた「ひし花びら」のお餅が使われていて、これがお餅の原型になり、関西の丸もち、関東の角もちに分かれて現在に至っているそうです。そして、関西と関東の中間点である三重県の北部には、今もひし花びらのお餅を食している地方が残っているそうです。

ちなみに、私のつくるお雑煮は実家でつくっていたものに似せたものです。
倉敷地方のお雑煮はどんなものだったのか、祖母と母がつくったお雑煮は、瀬戸内の漁港の祖母の実家のお雑煮を踏襲したものでした。ささがきゴボウ、ニンジンと昆布の細切りにブリを入れたすまし仕立ての汁に、ゆり根を加えたものが、大鍋いっぱいに用意されました。
食べるときは、茹でた丸餅をお椀に入れ、汁を注いだあと、茹でたホウレンソウとかまぼこ、ゆずの皮などを乗せました。どのあたりにルーツがあるお雑煮なのかはわかりません。
廻船問屋を営んでいた祖母の実家の料理には、他の地域からもたらされて定着したのであろう「薩摩めし」など、自宅以外では見たことも口にしたこともない珍しい料理もいろいろありました。






2 件のコメント:

hiyoco さんのコメント...

私も土井勝の料理本持っています。黒豆は300gに対して水10カップで載っていました。どうですか?
父の田舎が丹波なので毎年黒豆が送られてきて、母は皺がよらないようにふっくら仕上げることに余念がありませんでした。煮る前に錆びた釘を物置から探し出すのが子供心にも「錆びた釘なんて体に悪くないのか?」と思っていました。でも本にも書いてありますよね(笑)。

さんのコメント...

hiyocoさん
300gで10カップですか!!!
700gで熱湯12カップでしたから、豆の量が少ないときも、熱湯はたくさん使うということ、豆と水の量は全然比例していないのですね。私は単純計算して200gに3.5カップくらいしか入れなかったので(笑)。まったく足りなかったということでした。
でも、たびたびの差し水は面倒でしたが、なんとかおいしくできました(^^♪
最近の釘はさび止め加工しているものもあり、化学物質はご免なので鉄の太い針金(番線)をぶつぶつ切って、それをティーバッグ用の紙袋に入れて使いました。来年用に台所に置いておきましたが、来年も煮るかどうか(笑)?
お母上は関西の方なのでもちろんしわなしですよね。しわしわが好きな江戸人、考えられません。今もそうなのかな?