2010年1月7日木曜日

ラオスのちゃぶ台


ラオスの平地と、タイ東北部には、民族としては同じ人々が住んでいます。言葉はそっくりで、文化もよく似ています。しかし、別の国として年月を経ているわけですから、もちろん違うところもたくさんあります。 タイ東北部の農村では、食事をするときは床にござを敷き、その上におかずを置きます。そして、おかずを円く囲んで座り、近くの、蒸したもち米を入れたお櫃の中から、手でご飯を取り、手の中で転がしながら丸めて、おかずと一緒に、あるいはおかずに浸しながら食べます。 ところが、ラオスの家庭では、たいてい竹で編んだちゃぶ台が使われ、おかずはちゃぶ台の上に並びます。 前出のカンボジア人の同僚Nと、ラオスに行ったときのことです。私は例によってけっこう大きな荷物を持って行きましたが、Nは、小さな小さなバッグ一つしか持っていませんでした。
「えっ。これだけ?」、
「だって持ち運ぶのが面倒じゃないか」。
Nは、
「母が、ラオスのちゃぶ台が欲しいなんて言っているんだよね」
と、つぶやいています。
「カンボジアにはないもんね。一緒に見てあげるわよ」
ラオスに着いて、仕事の合間に時間を見つけて、Nを二度もビエンチャンの市場に引っ張って行ったのに、彼は迷っているだけです。
「買ってあげなさいよ、お母さんに。安いじゃない」
とうるさい私。
「うーん。だけど、持って帰るのがめんどくさいなあ」
「私が運んであげるわよ。心配しないで」
しかし、Nは全然決心がつきません。 そうこうしているうちに、私は楕円形のちゃぶ台を見つけました。ほとんどのちゃぶ台は円形で、日常品だから太い竹でざっくり、雑に編んであります。しかし、その楕円形のちゃぶ台は細いひごで丁寧に編んであって、めったに見かけないほどよくできています。サイドテーブルにもなるし、飾り棚にしても使えます。
「私、あれを買おうかな」
と言ったら、案内してくれていたTさんが、ぷっと吹きました。
「また、病気が出た!」
とうとう私は、予定もなかったのにちゃぶ台を買い、Nは買いませんでした。 帰りの飛行機、硬く辞退したにもかかわらず、Nは私のちゃぶ台を運んでくれました。それだけではなく、道端で見つけて手に入れた、大きな籠まで運んでくれたのでした。





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