2010年7月25日日曜日

タイの籠



時々、「世界で一番手先の器用な日本人」というフレーズを、聞いたり、目にしたりすることがあります。
そう発言する人自身は、手先が器用なのでしょうか?また、日本以外の見事な手仕事を、まったく見たことがないのでしょうか?

私の見たところ、見事な手仕事は、どんな社会にも、しっかりとあったものだったと思います。それぞれ、得意な分野が、織物だったり、農具だったり、狩猟道具だったりという違いはありますが。

かつて、権力者が、職人たちを抱えて、お金も時間も気にせずに、尋常では考えられないほど手の込んだものをつくった時代がありました。そんな手仕事は、ずいぶん前に消えてしまいました。織物を例に取ると、技術のピークは、なんと約2000年前だったそうです。
一方、家族や恋人のために、あるいは属する社会で賞賛をあびたいために、精魂込めてものをつくり出していた人々がいました。こちらも、近年、それを支えていた社会が壊滅状態になっていますから、ほとんど消えてしまったことでしょう。
よい手仕事の、伝承されない、生き残れない時代になりました。

タイの中部に、細かい細かい、籠細工があります。材料は、その地域特産のラタンではなかったかと思います。タイの王室も奨励していて、新聞や雑誌で見る王女たちは、たいていこの籠バッグを持っていらっしゃいます。商業ベースのものづくりではありますが、とても手の込んだものです。
値段は高いし、ニスなどを塗っているものがほとんどで、私自身は買ったことがありませんでしたが、数ヶ月前、骨董市でなじみの誠さんが、何も塗っていない、小さな蓋つきの籠を持っていました。しかも、とっても安くしてくれました。




蓋の模様です。めがねを二つもかけて、ひごの太さを測ってみますと、0.5ミリくらいしかありませんでした。




その蓋を裏から見たところです。複雑ですが、リズムがあって、表に劣らず美しい仕上がりです。どこかでラタンをつないでいるはずですが、材料のつなぎ目など、まったく見えません。




底は、籠目模様になっています。




底の籠目がどのくらい小さいものか、裏に物差しを当ててみました。

タイでは、指輪の周りに散りばめる小さなダイヤモンドのカットや、カツラの毛の植えつけは、目のよい十代の子どもたちの専有的な仕事です。彼らは、よく見える目を駆使して、数年で目を悪くして退きます。
でもこの籠細工、熟練しなくては、とてもこうはいかないだろうし、熟練した職人さんは目が悪くなるだろうしと、他人事ながら心配してしまいました。

5 件のコメント:

ムラカ さんのコメント...

始めまして。
水戸市でタイの工芸品や雑貨の販売をしている者です。
タイの工芸品について調べ物をしていたらこちらのブログに辿り着きました。
紹介されているこちらのタイの籠は素晴らしいですね。
似たような籠を当店でも取り扱っています。
見たところプラニー工房の作品のように思われます。
しかし、ここまで細かい編み目の籠でこのサイズのものは、現地の工房でも見た事がありません。
その他の籠のコレクションも見事で感心させられました。
お住まいが八郷ということで勝手に親近感を感じ、コメントさせていただきました。
ちなみに私は、石岡在住です。
勉強の為、これからゆっくりとブログの方を読ませていただきます。

さんのコメント...

ムラカさん
初めまして。コメントありがとうございます。
そうですか水戸でタイの工芸品の販売をしていらっしゃるのですね。お店の名前など教えていただいたら、うかがってみたいです。もっとも最近とみに出不精になっていますが。
タイの雑貨も、30年前と比べるとずいぶんおしゃれになりました。
よろしかったら、我が家の方にも足を伸ばしてください。

ムラカ さんのコメント...

春さん、返信ありがとうございます。
店の名前は、Muraka's Style Shop(ムラカズスタイルショップ)と言います。
水戸芸術館の近くに店を構えております。
水戸にお越しの際は、お立ち寄りください。
というよりは、僕が春さんのお宅を訪問した方が早いのかも!?
籠コレクション、実際に見てみたいです。
タイのお話なども聞いてみたい!
一度お会いできたら幸いです。

さんのコメント...

ムラカさん
HP見せていただきました。
すごいですね。籠を作っている途中の写真、初めて見ました。いったいどうなっているんでしょうという感じです。
今週はちょっと忙しいのですが、来週以降、落ち着いたらお店に伺うか、電話でご連絡いたします。
遊びにいらしてください。

ムラカ さんのコメント...

春さん
プラニー工房の籠の編み目の細かさは眼を見張るものがありますよね。
もっと細かい模様の編み方があるのですが、その編み方は、もう編める人がいないそうです。
伝統工芸もその技術を伝えて行くのが難しくなっているそうです。
とても残念なことですよね。
伝統工芸の技術の継承に役立つことは出来ないか、といつも考えております・・・。
ご連絡をお待ち致しております。
お会いできるのを楽しみにしております♪