2011年10月19日水曜日

ふるい



稲の刈り取り機のコンバインがあれば、刈り取りから脱穀、ごみとの選別まで、一気にできてしまいます。
ところが、稲を手で刈り取って、はざ掛けをして干し、足踏み脱穀機で脱穀するとなると、籾はちぎれた稲の葉や、稲穂のかたまり、ヒエの実などが入り混じった、すぐには籾摺り機にかけられない状態になります。

そこで籾を選別するのですが、選別の道具の唐箕は、大きくて出したり入れたりがちょっと面倒です。唐箕の下に敷く、大きなシートも必要で、一日仕事で一気にやらなくてはなりません。
しかも、唐箕を使うには、羽を回す人と、上の口からごみ交じりの籾を入れる人、最低二人は必要です。その上、久しぶりに使うと、羽の回し具合で、ごみと籾がうまく分かれず、やっとこつをつかんだころには終了ということになります。




というわけで、私はほとんど手箕だけで、籾を選別します。ちょっとした気分転換がてら、空いた時間を利用してはしこしこ、次の年の二月ごろまでに、時間をかけて少しずつきれいにします。
そのとき、篩(ふるい)が、必需品になります。

八郷にきてまもなく、Uさんから大豆をいただいたとき、大豆を選別する篩を見せていただきました。八郷の中心地に、篩屋さんがあるというのです。
お米をつくるようになり、篩が必要になったときに思い出して訪ねてみると、篩職人だったおじいさんはすでに亡くなり、戸を半分閉めて、残った篩だけを、おばあさんがひっそりと売っていました。
幸い、籾が下に落ちて、大きいごみが残る網目の大きさの篩が、一つだけ残っていました。

具合よく使えましたが、脱穀するときに混じった土などは、この篩では取り除けません。籾は落ちないけれど、小さなごみが落ちる篩も必要でした。




そこで、また訪ねて、網目の小さい篩を手に入れました。




篩を買ってから数年後に、母から、祖母の使っていた篩をもらいました。祖母の家をたたんだとき、捨てるに忍びなくて持ってきて、しまい込んでいたものでした。
古いものですから、ほどなく檜の板を留めてある桜の木の皮が切れたので、また篩屋さんに持ち込み、篩屋さんの知り合いの職人さんに修理してもらいました。




祖母の篩には、墨で祖父の名前が記してあり、購入年は、昭和二十七年(1952年)とありました。

脱穀直後など、夫と二人で仕事するときには、二つの篩が威力を発揮します。そんなとき、夫はいつも古い方を使いたがります。ずっと使いやすいと言うのです。




比べてみると、網目の大きさはほぼ同じですが、新しいのはステンレス線でできていて、古いのは銅線でできています。銅線の方が、ステンレス線より細く、その分だけます目が大きくなるので、籾を通しやすかったのでした。
また、古いのは尺寸でつくってあり、新しいのはセンチでしょうから、それによっても微妙に網目の大きさが違っていたのかもしれません。




道具は、ほんの少しの違いで、使いやすかったり、使いにくかったりするものだと、改めて感じたことでした。



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