2012年2月1日水曜日

かせ繰り機


幼いころは、まだもののない時代でした。祖母は、叔母が小さいころ着た古いセーターを解いて、私や弟のセーターやヴェストを編んでくれました。
「毛糸は、ビーファイブ(英国製)が一番」
というのが、祖母の口癖でした。なるほどビーファイブは、何度も染め直しても、何度も編みなおしても使える、しっかりした毛糸でした。



糸を染めるときは、かせにします。
ほどいた糸をかせにするときは、手伝った覚えがありません。大人たちは自分の足を使って、かせをつくっていたのでしょうか。
編みぐせがついて、縮れた糸は、やかんの口にT字型の器具をつけて通し、お湯を沸騰させて伸ばしていましたが、もしかしたら、それはずいぶん後になってだったかもしれません。

そして、かせから毛糸玉にするときには、たいてい子どもに声がかかりました。
向き合って座り、両腕に糸を掛け、巻き取るのに合わせて、腕を動かして、ひっかからないようにしました。


かせを玉にするには、他の人の腕を借りる以外ないと思っていたのに、織物を習っていたときそろえたかせ繰り機は、これまで見たこともないような美しい道具で、びっくりでした。
先生がノルウェーで織物を学んだ方だったので、織り機も、かせ繰り機も、糸車もノルウェーから取り寄せたものでした。


今日、納戸の片づけをしていて、そのかせ繰り機が、何かの下敷きになって、頭(首)が折れてしまっているのを発見しました。
「たいへん、なんてこと!」

力がかかるところなので、折れたところをボンドでくっつけるというわけにもいきません。でも、大工道具と、材料があってよかった、なんとかなおせそうです。


いつも釘隠しに使っている、樫の埋め木の太さが、折れた棒とほぼ同じだったので、使えます。
折れて、ぎざぎざのところを鋸できれいに切り、まずキリで中心を決め、ドリルで穴を開けます。


頭についていた棒も切り取り、やはり穴を開けます。
そして、心棒に埋め木をボンドをつけて差し込み、糸を支える部分を通し、頭をボンドづけして完成です。


よかった、なおりました。
修理しやすい、しかも見えないところが壊れたのは、 不幸中の幸いでした。


かせ繰り機は、下の玉になっている部分を押し上げると開きます。かせにした糸をかけておいてから開いて、かせの大きさにあったところでとめます。


 そして、 木のねじをしめれば固定できます。いろいろな大きさのかせに対応できます。


机にとめるのも木のねじ、使っていて本当に楽しくなる道具です。

2 件のコメント:

mmerian さんのコメント...

すごく素敵なかせ繰り機!
私の母も昔、古い毛糸を解いてはお湯で伸ばして新しいセーターを編んでくれました。プロ級に上手だったので、娘は編む必要もなく、編み方を伝授しませんでした。そのうち、いい毛糸が簡単に手に入るようになり、お古を使うことも無くなったようです。
毛糸玉つくりの手伝いをしたことさえ、忘れかけていたので懐かしいです。

さんのコメント...

mmerianさん
素敵でしょう?松だと思いますが、木も素敵、形も素敵、それでいて機能が優れているので、言うことありません。

近くで手に入る素材だけで、技を重ねてきた職人さんのつくるものって、廣島さんの籠などにも通じますが、そばにあるだけで幸せです。

なんて、使った方がいいのだけれど、なかなか...。