2015年4月17日金曜日
ソマリ
東京新聞に、『恋するソマリア』(集英社、 2015年)の著者、高野秀行さんのインタビュー記事が載っていました。
普段、現地ルポみたいな本は、あまり読みません。ちょっと通り過ぎただけなのに、少ない経験をもとに、さもそれが全部のように述べている本が、多々あるからです。
それでも、「ソマリア」という言葉に惹かれて、買ってみました。
これがなかなかおもしろい。
くすくす笑いながら一気に読めてしまいます。
ソマリ人は、さっぱりしているけれど、弁が立つ、言い勝とうとする、ごっつい性格です。ぼやぼやしていたら、言い負かされてしまいます。 ところが著者もなかなかしつこい性格で、めげないで、これでもこれでもかと、ソマリの人々に喰らいついていっています。
著者は、ソマリ人たちと接触できる地域以外の人で、自分より上手にソマリ語を話す人は地球上に20人とはいないだろうと豪語する、かなりの自信家でもあります。
だからか、ソマリ人たちとの攻防で唖然とするような事態になっても、たくましくよみがえります。
ソマリという民族グループは、同一民族で同じ言葉を話しながら、ソマリランド、プントランド、南部ソマリア(以上旧ソマリア)、ジプチ、エチオピア、ケニアに分かれて住んでいます。
もちろん、過去の植民地統治が、今に大きく影響しているのですが、ではソマリの人々が一つの国をつくればいいのに、と言ってもことは単純には運びません。
それぞれ地域で氏族(ソマリ人のよりどころのようなもの)が違い、肥沃な土地で農耕をしてきた人々もいれば、沙漠で遊牧生活をしてきた人もいます。
また、過去の植民統治のあり方(イタリアの直接統治とイギリスの間接統治)で、伝統的な社会秩序維持のシステムが崩れなかった地域もあれば、すっかり崩れてしまっている地域もあります。
高野秀行さんのもう一冊のソマリアの本、『謎の独立国家 ソマリランド』(本の雑誌社、2013年)は、このもつれたソマリ社会の関係をわかりやすく説明してあります。
『謎の独立国家 ソマリランド』は500ページもある力作で、著者がソマリに入れ込むきっかけとなった、初めてのソマリランドへの旅からはじまっています。
ソマリランドは、「あのメチャクチャに内戦が行われているソマリアで、独自に内戦を終結して平和になっている国」なのに、国際社会からは、「国とは認められていない国」 なのです。
以前、私の働いていた団体では、この本では南ソマリアと呼ばれている地域のエチオピアの国境近くのルークという町に近いところで、プロジェクトを持っていました。
私自身はソマリアには一度しか行ったことがありませんが、毎週、東京事務所のミーティングで聞くソマリアの話は、もうおとぎ話のようにおもしろかったのを覚えています。
例えばソマリ人の間では、買いものをするとき、近しい人には安く売るのが当たり前です。
親戚値段、氏族値段、ソマリ人値段、外国人値段などの間にも、事細かな違いがあって、それをあやまたず売り買いするのが、立派なソマリ商人であり、立派な買いもの客です。
そのため、日本人が買いものに行くのと、首都モガデシュから来たスタッフが買いものに行くのと、地元のスタッフが買いものに行くのでは、金額に大きな差が出てしまいます。
ところが、地元の人が買いものに行くと、いつも日がな一日帰って来ません。
というのも、友だちに会うと見過ごすわけにはいかない、買いもの用のお金で清涼飲料水をおごったりしてるあいだに別の友だちとも会い、そうやっておしゃべりしている間に、一日はあっという間に過ぎていくというわけです。
それでも、日本人が買いものに行くより半額以下だったら、どうします?
では、といって日本人がついて行ったら、いきなり高くなるとしたらどうします?
もちろん、領収書なんて望めません。
そんな、おもしろい難題を毎週のようにつきつけられる、数限りない逸話に満ちたソマリア。
南ソマリアには、長老たちが話し合いでもめごとを終結させるという伝統が失われているので、アル・シャバーブの存在も含め、当分平和はやって来そうにありません。
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2 件のコメント:
ソマリアの女性は10等身くらいスマートで、現代美を象徴するような女性が多いので、世界的なファッション・モデルも多数輩出し、僕らが会ったソマリア女性もなかなか魅力的なものでした。
岩崎駿介さん
ソマリの人たちが、女性だけでなく男性も魅力的なのは十分承知しています。
エチオピア女性も美形でしたが、ソマリ女性には負けていましたね。
この『恋するソマリア』に登場するモガデシュのテレビ局の支局長、弱冠二十二歳のハムディも、すごいねぇ。おそろしく魅力的です。
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