遊びに来ていたひろこさんが、
「あの子、前からいたっけ?」
と聞きました。
そう、前にはいませんでした。
ここはずっと花、花がない時は花入れだけ置いてありましたが、しばらく前から、この子の指定席になっています。
花より、人形の方が、目を引きます。
強烈な個性で、人の心をかき乱そうとしたりしないので、この子はいつもここにいても、全然嫌な感じがしません。
友人のSさんは、人形が嫌いです。
Sさんは子どもの頃、お兄さんと二人で分担して、縁側など板の間の拭き掃除をするのが日課でした。
ところが、お座敷には男女一対の市松人形が飾ってあり、Sさんはそれが怖くてたまりませんでした。なんとかお座敷には近づきたくたいと思っていたそうですが、お兄さんも同じ心境だったのでしょうか、
掃除する場所を取り合って、喧嘩していたそうです。
確かに、まだ西洋人形の影響を受ける前の市松人形の中には、毎日見るには怖過ぎる子がたくさんいました。
窓を背にして立っているこの子の顔は、逆光でいつもはあまり見えません。
でも、なかなか可愛い顔をしているのです。
五味渕孝さんのおつくりになったもの、「おでかけ」という名前の人形だったと思います。
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