2019年5月13日月曜日

ガティップ・カオ


ラオス、ヴィエンチャン近郊の村でつくられている蒸したもち米入れ、ガティップ・カオ(タイ語ならクラティップ・カオ)です。
どうも日本向けに小物入れとしてつくってもらったらしい、そのため、ガティップ・カオにはつきものの、紐抑えと紐がついていません。
かつては紐も、ヤシの葉で編んだりした味わい深いものがついていたのかもしれませんが、私の知る限り、40年も前からナイロン紐などがついていて、取り外してしまいたくなるのも、むべなるかなという感じですが。


のぞいて見ると、中は竹を半削りした皮の部分を表に出しています。


つまり、この籠は二重に編んであって、外から見ても中から見ても竹の皮側しか見えないつくりになっているのです。
編み方は、半皮つきの薄く薄く削ったひごを、皮を内側して、底から編みはじめます。形ができたところで口(縁)で折り返し、口から数段は形が崩れないように「綾編み」を続け、途中で形を自在に整えられる「平編み」に変えて下まで編み、底にかかったときに再び綾網に戻して、編み目を詰めると同時に形崩れしないように編んであります。


底を見ると、竹の端を始末したりした「編み終わり」感がなんとなく漂っています。


蓋の方はと見ると、こちらは編みはじめですから、本体の底に比べるとすっきりしています。


蓋の縁は折り返して始末してあるので縁は二重、蓋の中だけ、竹の半皮つきでない方(裏)が見えます。
それにしても、湿らせているとはいえ折れやすい竹を難なくきれいに縁で織り込んだ腕、ラオスの籠師さん、お見事です。
ヴィエンチャン近郊の村で食事をいただいたことも何度かありましたが、この形のガティップ・カオには、出逢ったことはありませんでした。


ラオスでもっとも一般的なのは、この形でしょうか。
これらはラオス南部、パクセあたりの人がつくったものです。


タイでも、東北部と北部では蒸したもち米を食べる文化を持っています。
クラティップ・カオも村によって形は様々、竹と木の板との組み合わせたものもあり、ラタンと木を組み合わせたもの(左奥)もあります。
蓋の頭が尖った形のクラティップ・カオはおもに、東北部のマハーサラカム県とヤソトーン県でつくられ、使われています。


タイ北部ナーン県の最北部、ラオス国境に近い村の長老の手による、木彫りのクラティップ・カオです。家には長老手づくりの道具がそこここにありました。大きな木のねじ形のサトウキビを絞る道具、たばこの葉を細く刻む道具などなど、いずれも見事なものでした。
木のクラティップ・カオの底は抜いてあり、そこに丸い板を置いて使うようにできています。
私が泊めていただいた家では、前列のような市場で買ってきた竹で編んだコン・カオにもち米を入れていて、こちらが村では一般的でした。

クラティップ・カオとコン・カオの違いは何か、どちらも蒸したもち米入れですが、紐がついているついていないの違いだけかもしれません。クラティップ・カオがお櫃でコン・カオがお弁当箱というわけでもありません。
みんなで田んぼや畑に行くとき、クラティップ・カオをぶら下げていき、出小屋の柱などにかけておいて、食事時にはそれを囲んで食べることもあります。
もち米は朝まとめて蒸したのを夜まで食べるので、紐がついていれば、涼しいところに吊るして置けて、アリにやられる心配もありません。


これはどちらも市場で見かけたクラティップ・カオで、左はココヤシの殻でできています。
ココヤシのものの蓋は、マハーサラカム県やヤソトーン県に見られる形なので、そのあたりでつくられたものかもしれません。
ちなみに、クラティップ・カオやコン・カオは、もち米の乾燥を防ぎます。
  

コン・カオのいろいろです。
ラオスのもの、タイのもの、山地民のもの、平地民のもの、いろいろ混じっています。
仕事でタイに頻繁に出張していたころ、市場で手ごろなコン・カオを見かけると買っておきました。フタバガキの羽のついた種などを拾ったときコン・カオに入れておけばスーツケースの中でつぶされないで運ぶことができたからです。


コン・カオはあちこちに置いて来たり、人にあげたりしたのに、クラティップ・カオとコン・カオを一堂に集めてみたら、こんなにありました。






8 件のコメント:

かねぽん さんのコメント...

おはようございます。
ちょうど弁当やおやつを入れるのにぴったりの大きさですね。
米沢でもヤマブドウの皮で編んだカゴが作られていますが、高くてとても手が出ません。

karat さんのコメント...

おはようございます。二重に編んであるとはすごい技術ですね。
外側から見て隙間があるので、もち米こぼれないの?と思いましたが、二重構造で中はきっちり隙間なく編んであるのですね。それでいて外側に風が通る仕組みですか…。床に置いても食べ物を直に置く感じじゃなくていいですね。
今、ベトナムのプラかご(ppバンドで編んである)がまあまあ廉価で日本でも売られていますが、色々バラエティーがあって、こういう技術はお手の物なのですね…。それにしてもやはり本物の竹は素敵です。

さんのコメント...

かねぽんさん
いい籠たちでしょう?
ヤマブドウは昔から高額、籠バッグが流行ってからさらに高くなっていますね。
その昔、山形に主張した帰り、「山寺くらいは観てください」と言われて途中下車して訪ねると、門前のお店でヤマブドウの籠をいっぱい売っていたのを思い出します。新幹線が通っていない頃から高額でした(笑)。
蔓を採る手間は大変だと思いますが、高すぎ!平気で6万、7万するようです。最近、私の周りでは「ヤマブドウの籠を持っているといかにもって感じじゃない」と、持つのを敬遠する向きもあるようです。私なんか、「あら、あの人ヤマブドウの籠を持っている!ヤマブドウの籠を持つような人だったんだ」と心に刻んだりしてしまいます。単なるやっかみですが(笑)。

さんのコメント...

karatさん
隙間をつくらず編むには綾編みが最適ですが、膨らませたり絞ったりしたいときは編み目の隙間で調節できる平編みが最適なのでしょうね。
内側を縁まで編んで竹が折れないように曲げたら、逆さに置いて一気に編んでいくんでしょうね。
まず、幅の揃った薄い竹ひごをつくるのが、私には到底できない技です。しかも、ラオスの村には竹専用の打ち出した刃物なんかなくて、草を刈ったり木を切ったりする安物の刃物で何でもやっているのだからすごいものです。

kuskus さんのコメント...

私も編んだ籠が大好きです。
その土地の生えている植物で、その土地の暮らしに合ったものが生み出されるという
知恵がずっとなくならないでくれるといいなぁと思います。
春さんには嫌われそうだけど、
山ぶどうのかご、私はずいぶん昔に会津の三島の人に編んでもらったのを使っています。
編む手間だけではなく、蔦を刈ったらその場で皮を剥いでしまわなくてはならないので、
たくさんは採れないということを考え合わせても、とても安い値段で編んでもらいました。
中間の業者が大儲けをしているんじゃないでしょうかね?
そのかごを手に入れたときに、くれぐれもツヤを出すために油類を塗ったりしないようにと言われ、
使った時間で少しずつ味わい深くなっていくのを楽しんでいます。
竹のかごが青い色から飴色に変わっていくのも楽しいですね。
自然の素材は、手に入れた時の喜びプラス変化していく楽しみもあって嬉しいです。

さんのコメント...

kuskusさん
大変失礼しました(;^_^A
確か、ヤマブドウの素材を集めるのは木に登っている蔓がだめで、土の上をまっすぐ這った蔓を使うんだったですよね?家の裏にも生えますが、全部木に登っています。
その素材を集めるまでの大変さはいかばかりかと思います。単なるやっかみです。許してくださいm(_ _;)m
こんど見せてね(笑)。建築家のO.Yさんも、A4が楽に入るような大きくて素敵なヤマブドウのバッグを持っています!

kuskus さんのコメント...

いえいえ、春さんが値段や流行に物の価値観をおいてないことは知ってますよ。
私は安く編んでもらえたので手に入れたけど、素敵でも今みたいに高い値段をお店で払ってまで
欲しいとは思わないです。
自分や家族の使うものを身の回りの材料で作るということこそ、もっと流行るといいですね。

さんのコメント...

kuskusさん
ありがとう。確かに身近なものでつくるのが一番です。
でも、その材料集めですぐ挫折してしまいそうです(笑)。からむしも集めれば布ができる、竹細工もできる、草からも縄ができる、できるできるで、何もしていません。
こんど集まって手仕事をするとき誘ってください。挑戦してみます(^^♪