暮れに一度、一緒に織りものを習っていたKさんとSさんと3人で集まりました。
織りものの先生だった、亡くなった近藤さんの兄上が、教室を自由に使ってくれていいとおっしゃってくださったので使わせてもらったのです。
Sさんは縄文に関心があり、子どもたち向けにいろいろな縄文体験をするイベントなども開いている方です。糸紡ぎはその文脈で関心があり、現代の織り機を使って織ることにはこだわっていません。むしろ、昔の織り機が再現できたら体験してみたいくらいに考えている人です。
縄文時代には蓆(むしろ)編み機を使った編みものしかないとされていましたが、発掘や調査によっては、まだまだ変わる可能性もあります。土の紡錘は出土しても織り機は木製のため出土は期待できませんが、弥生時代の遺跡からは織り機の片も発見されています。
Kさんは、原毛の染色や糸紡ぎの経験が長い方です。紡いだ糸で編みものなどしていましたが、教室のことを知り、私と前後して生徒になり、これまでに平織りのショールを1枚織っています。近藤さんの織物教室では糸からつくるので、ほぐしたり、洗ったり、染めたり、紡いだりと糸づくりに時間がかかるので、なかなか織るところまで到達しないのです。
2作目として、綾織りのショールを織る予定で、近藤さんの見本帳から模様を選び、経糸(たていと)の量、本数、長さ、使う筬(おさ)の目、などを決めてもらって、整経するばかりとなっていたところで、先生を失いました。
このままで解散するには、忍びないという声を汲んで、その昔織りものに手を染めたことのある私にできることがあればと、やれることからやってみることにしました。
見本帳は分厚く、Kさんがどの模様を選んだかは知らなかったのですが、とにかくこれらを、組織図にすることにして、借りてきていました。
この見本帳は、「綾織変化組織」という、綾織り=斜文織りを基にして模様をつくる織り方で、組み合わせによっていろいろな模様をつくることができ、人の考える数だけ模様をつくることができます。
見本帳の左上に貼ってある紙が綜絖(そうこう)の通し方を描いた紙で、漫然と見ていたころはまったく気づきませんでしたが、これが重要な手掛かりになりました。
私は、訓練の意味もあって、見本帳の模様を組織図に起こす練習をしました。
組織図とは、どのような順番で踏み木を踏んで模様をつくるかを表した図のことです。
綜絖は4枚使います。
左下が綜絖に経糸の通し方を表したもの、一番手前の綜絖から順に通し、1-2-3-4、1-2-3-4と繰り返して通してつくる模様です。
右下は、綜絖と踏み木の結び方です。綜絖と踏み木を結んであれば、轆轤式(ろくろしき)の織り機なら、踏み木を踏むと綜絖が下がる。ということは、綜絖に通した経糸は、踏まないときは上がっていて、布の表に経糸が見えるということになります。
左上の一番面積の大きいところが模様の出方で、経糸が出ているところを「黒」であらわすことになっています。ということは、白いところは緯糸が見えています。
綜絖と踏み木を結ぶ順番(右下)、綜絖通しの順番(左下)、模様(左上)が決まると、この3つを照らし合わせながら、踏み木を踏む順番(右上)を割り出すことができます。
見本帳は織り目がこまかくて、糸が一様な太さでない手で紡いだ糸だったので、どんな織り方をしたのか、なかなか読み取れないものもありました。
たとえばこれ、
「どうなっているの?」
と、虫眼鏡で見ても、裏返してみてもわかりにくい! 見ているうちに、頭がごちゃごちゃしてきます。
こんな、組織図にできないものも、いくつか出てきました。
さて、暮れに集まったときKさんに訊くと、Kさんが選んだ模様は上の写真の模様でした。わかりやすくて助かりました。
この模様でさえ、肉眼で見ると四角の真ん中の経糸(白糸)が見えなくて、最初は頭をひねりました。
綜絖と踏み木を結んでいる組織図(右下)を見るとわかりますが、常に4つの綜絖の2つが上に上がり、2つが下に下がっているので、模様の右端を縦に4列で見てみると、どの段も経糸緯糸が2列ずつ出ていなくてはおかしい、ありえないということになります。
これは、上の布を裏から見たものですが、模様はまったく違います。最初はこの面を見て組織図に落とそうとしたため、うまくいきませんでした。
綜絖の通し方は、1-2-3-4の繰り返しではなく、1-2-3-4-3-2の繰り返しとなります。
ところで、教室でKさんがこれから使おうとしている織り機を見たら、見本帳に描いてあった綜絖と踏み木の結び方の順番(右下)が違っていました。そこで、踏み木を踏む順番だけ描きなおしました。右下を違えると右上も違ってきます。
Kさんは教室にある織り機で、足の踏み方を、2-6-1-5-2-5-1-6の順番に繰り返せば、この模様が織れるのです。
来週、2回目の集まりがあります。
私も教室では一度しか織ったことがありません。また、近藤さんの使っていた整経機と私が使っていた整経機がまったく違うので近藤式の整経の仕方はうろ覚え、とうていできそうにないので、1年半前に卒業された、ベテランのOさんにこの日、来ていただくことになりました。これでKさんはなんとかなりそうです。
整経機とは、経糸を織り機に順番よく張るための、とても大切な道具です。
そして、この私も、2枚目を、昼夜織りで織るばかりになっていました。しかも今回は自分のドラム整経機を使って整経してみたいと申し出ていたので、船頭はいませんが、古い記憶の糸を辿って、できるかできないかやってみるつもりです。
で、昼夜織りの組織図を描いているのですが、邪魔が入ります。
陽ざしのあるところで影ができると、目がチカチカしてしまいます。
しかもノートを占領されたりもしています。
「のどかだ、にゃぁ」
2 件のコメント:
組織図はダンスのステップ見たいですね。春さん、やること山積みで時間がいくらあっても足りませんね(笑)。
hiyocoさん
そうでもないです。けっこうネットのジグソーパズルなんかやっていて、夜中に「あれはもうやめようよ。時間のロスでしょう」と思うのに、昼になったらまたやったりしています(笑)。時間、ありすぎていますよ(笑)。
Kさんと私がちゃんと織物ができたらいいですね。
♬でっきるかな、でっきるかな♬
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