「修理ができました」
とかばん屋さんから電話があったのは、今月のはじめでした。控えを見ると、昨年の3月末に修理に出しているので、11か月ちょっとでできました。
じつは、まさか一年弱でなおしてもらえるとは、思っていませんでした。
というのも、持ち手が切れた
バッグを修理に持って行って以後、なしのつぶてだったお店に、半年近く経ってから電話してみると、まだつくった人と連絡が取れていないということでした。
つくった人、ゲンタさんは、いったいどこに行ってしまったのでしょう?
ご存命らしいということは、彼の友人のHさんの話から感じていましたが、Hさんもゲンタさんにはもう長く会っていないようでした。
秋になって、やっと朗報が届きました。連絡がついたのでバッグを手渡す、修理費などは追って連絡するというものでした。
「なにせ、待っている方がたくさんいらっしゃるので、いつできるかわかりません。お待ちいただいている方たちの順番ですから」
口ぶりからして、お店に同じバッグがいくつかたまっていたのかもしれません。
そんなにたくさん(数名か?)、このバッグに愛着を持っている人がいるとも取れますが、壊れやすいとも取れます。もっとも、20年以上使えば、バッグだって不具合が出てきても仕方がないかもしれません。
東京に出たついでに、受け取りに、お店を訪ねました。
「お待たせしましたね。でも2年以上待たれた方もあったのですよ」
私には場違いな、銀座四丁目の目抜き通りにあるお店で、品のいい店員さんが対応してくれました。わざわざクリームを出して磨いてくれながら、
「ほら見て。手づくりのバッグよ」
と、ほかの店員さんにも声を掛けます。
「えぇぇ、そうですか。わぁ、いいものを見せていただきました」
その会話からすると、このお店ではとっくの昔にゲンターラのバックは取り扱っていないようでした。
そして、ミシンで縫うとしてもバッグは多かれ少なかれ手づくりだと思っていたのですが、そうでもないのかと思いました。
家に帰ってからつらつら見ると、肩紐は切れてしまった短い方だけでなく、全部新しくつくり替えてくれていました。
ファスナーを開けるときのつまみの真鍮が擦り切れて取れてしまったのは、なおらないならそのままでもいいと伝えてあったのですが、新しいのと交換してありました。
素人考えでは、ファスナー全部をほどいて取り替えないとなおらないと思ったのですが、ファスナーの布の部分はそのまま、つまみだけが新しくなっていました。そして、縫ってある糸も元の糸のままようでした。
どうやって取り換えることができたのでしょう?糸をほどいて、そのまままた縫い直したのかもしれません。
このバッグのためにデザインしたという金具は、金属と金属がこすれるところが相変わらず華奢でした。あまり強く引っ張らないようにしなくてはなりません。
さて、バッグを動かすとからからと音がするので中を見ると、
取れてしまったつまみの代用にしていたストラップが入っていました。
つまみが擦り切れないように、ストラップをまたつけてそれを引っ張ってみようかとも思いましたが、二つつけると、開けるのにけっこう手間取ります。
まぁ、つまみをもって開けても、20年はもつことでしょう。