地下室に入れっぱなしにしていた
時代箪笥を引っ張り出してきたのは、昨年の9月末でした。
以来、風に当てていたと言えば聞こえがいいけれど、ホール前の軒下に、見て見ぬふりをしながら放置していました。
しかし先日、ホールの扉のレールの上をふさぐのに脚立を使わなければならず、置いてある箪笥が邪魔になり、動かさなくてはならなくなったので、久しぶりに触りました。
今年に入ってから雨は降らず、空気は乾燥しています。
4か月前に、途中まで引き出して、にっちもさっちもいかなくなり、こんな姿で放置していた引き出しを、試しに引いて見ると、なんとすっと抜くことができました。何年もたまっていた湿気が抜けたのです。
その下の引き出しは、無理に引っ張ったので前板の上が外れてばらばらになりそうになっていますが、これも抜くことができました。
これを買った1970年代当時は、巷で時代箪笥を見かけることはほとんどありませんでした。
骨董屋市は京都の東寺くらいしかないし、敷居の高い、昔ながらの骨董屋さんには、時代箪笥が置いてあったとしても、目が飛び出るほど高いものでした。
これもつくりは悪いのに、手が届いたとはいえ、そこそこの値段でした。今買ったら、悔しいけれど、半分か三分の一の値段で買えるものでしょう。
それゆえ捨てるのは、箪笥をつくった先人に申し訳ないと同時に、
「もったいないことをしたなぁ」
という自責の念もあったのです。
でも、邪魔ではあるけれど、使えるなら問題ありません。修理してみることにしました。
何も寒空の下で作業しなくてもいいと、居間に運びます。
木の釘(竹の釘?)を使ってつくっていますが、釘は短いし、板が薄いので、板端の方に釘が入っている、この仕上げではちょっと無理があります。
どうせ、一度は捨てる気だったのだから、ボンドと極細ビスを使って、しっかり留めることにしました。
一つ目の引き出しをなおすと、要領がつかめました。
乾燥しすぎて木釘が痩せて外れたのか、底板が外れてしまった引き出しもありました。
とにかく丈夫にと、薄い底板もビスで補強します。
もともとはぴったりしていただろう底板、縮んで隙間だらけになっています。
なんと、木釘だけでなく、すでに釘で修理した跡も発見です。
古いことなので、買ったときに鉄釘が使われていたのか、それとも私が打ったのかは、不明です。
これは、無理やり引っ張った、一番下の引き出し、前板は外れただけでなく、ちょっと反ってもいます。
クランプで押さえながら、しっかり留めました。
前板だけケヤキで、あとは杉の時代箪笥、漆の艶は失われてしまいましたが、前よりは少し頑丈になったはずです。
ところで、これを置くところは、宴会室、改め織り室しかありません。下見に行くと、周辺機器はあるし、茶箪笥は入れたし、早晩、ごっちゃごちゃになりそうな気配がしていました。