2021年7月31日土曜日

『父の絵具箱』

眠る前のひととき、本を読むのが日課でしたが、今は腕が思うようには動かせないし、疲れやすいので、しばらくは読書を諦めていました。
昼間にはときおり、それまでに読みかけていた本を開いてみるのですが、どうも根気が続かず、すぐ飽きて読み続けることができません。


そんなおり、Kokeshi Wikiで武井武雄(1894-1983年)の娘さんが書いた、『父の絵具箱』(武井三春著、六興出版、1989年)という本を知りました。
絵は知っていても武井武雄については、何も知らなかったので、買って読んでみました。

根気のない私でも、すらすら読める本でした。
長椅子に寝っ転がって読んでいると、隣に越して来たM+MのMちゃんがやってきました。
「武井武雄って誰?」
わぁ、知らないんだ!
Mちゃんは『キンダーブック』で育たなかったのかしら?


『父の絵具箱』の帯は飯沢匡さんが書いていて、
「これをたたき台にして、今後武井武雄の研究は一段と進むことになろう」
と結んでいますが、一世を風靡した武井武雄は、今では遠い人になっているのが現実です。

長野県岡谷の旧家に一人息子として生まれた武井武雄は、小さいころから絵がうまく、絵描きになりたいという初心を貫いて、上京して東京美術学校に入学、油絵を描いていましたが、卒業後は、日本初の童画家として、多くの作品を残しました。


水彩画だけでなく、木版画、エッチングなどでも表現、独特の画風は、多くの人を魅了しました。


また戦前は、郷土玩具を精力的に集め、蒐集家としても知られました。
しかし、東京大空襲ですべての作品やおもちゃは灰と化し、戦後は二度と集めることはしませんでした。
武井武雄同様、すべてのコレクションが東京大空襲で灰になった河上目呂二とも深い親交があり、戦前は、自転車隊をつくって、あちこち訪ね歩いています。


武井武雄は制作のかたわら、庭をつくり、家具をつくり、古はがきを利用したトランプやカルタなどつくって、戦中戦後のもののない時代も、楽しく生きようとしています。また、夫人の梅さんは裁縫上手で、服だけでなく旗(自転車隊のための)などつくって、生活に彩りを添えています。


三春さんによると、武井武雄は彼が描いた絵のいろいろなところにこっそりと自画像を忍ばせていて、あんなにたくさんの自画像を描いた人は他にはいないのではないかということです。

夫の母にも、私の母にもこの本を読ませたかった。きっと楽しんで読んだはずです。
余談ですが、武井武雄の誕生日と夫の誕生日は同じ日でした。





2021年7月30日金曜日

猫のおもちゃ絵2


明治中頃につくられた、木版浮世絵、猫のおもちゃ絵です。
これはいったい何をあらわしているのか、意味不明ですが、明治の空気は伝わってきます。
ただし、東京の町でのこと、田舎とは大きな隔たりがあったことでしょう。


見世物小屋は、大流行りに流行っていたようです。


サーカスというより、曲芸団。
まだまだ江戸の見世物の続きです。


お風呂屋さんの女湯。
明治中頃、東京ではすでに男湯、女湯がわかれていたのでしょうか?
明治に日本に滞在した外国人たちが混浴に驚き、とくに宣教師たちは、由々しきことと大騒ぎをしています。なかには、自分たちの価値観で混浴をあるまじきものとみなしながら、じつは見物したがっている自分たちの方が、色眼鏡で見ているのではないかと、分析している外国人もいますが。


いせ辰の芸尽くし。
いせ辰は、元治元年(1864年)創業、今でも台東区千駄木にお店があるのが、不思議なくらいです。


踊り尽くしの方は、当時の演目などわからないので、さっぱり。
角兵衛獅子くらいしかわかりません。



 

2021年7月29日木曜日

猫のおもちゃ絵1

いま巷では、オリンピックという大きな運動会が開かれています。


日本人は運動会好き、明治中頃の「猫のおもちゃ絵」にも、運動会が描かれています。


全体はこんな感じ、もとは木版の浮世絵ですが、私の持っているのは絵葉書にしたもの、たぶん、伊勢辰で買ったものと思われます。


明治にも、浮世絵の伝統は脈々と残っていたのですね、歌川国芳一門が大活躍で、たくさんの猫のおもちゃ絵を残しています。


これは、ただの子どもの遊びですが、この中から運動会の芽が育ったのでしょうか。


かわいい猫たちです。




 

2021年7月28日水曜日

うなぎテゴ


ずいぶん前に、水俣の井上克彦さんに「うなぎテゴ」をつくっていただきました。
その時はまだ家ができてない頃で、家の明かりにするつもりでした。
「細いですよ」
と言われたのですが、口の方に小さな電球を入れると全体が光って、並べて2つ吊るすと、とてもきれいじゃないかと思いました。
ところが、家ができてみると、そのカントリーな雰囲気から、残念ながらうなぎテゴの明かりは似合いそうにありませんでした。無理に使うと、民芸風になってしまいます。


家がモダンな場合、籠の明かりはよく似合います。
カンボジアでは食卓には、ヴェトナムの籠を使っていました。


明かりは素敵でした。


つくばに住んでいたときも、食卓には籠の明かりを、居間にはイサム・ノグチの「あかり」を、小さい置き型のと、


大きい天井から吊るすのと2つ使っていました。


紙で提灯状につくった「あかり」は、アメリカでも、東京郊外に住んでいたときも、タイでも使っていましたが、どれもモダンな家だったので、似合いました。
タイで住んでいた家は、築100年ほどの古い家でしたが、それでもモダンな雰囲気でした。


東京郊外の家では、食卓には瓢箪を使っていました。
これも、今の家には合いません。


母屋ができるまで住んでいた仮設のビニールハウスでも、籠の明かりを使っていました。


ところが、今住んでいる家では籠や瓢箪は無理、ルイスポールセンのライトを使っています。
というわけで、うなぎテゴは明かりとして使うことができませんでした。


うなぎテゴはとても細く、編みはじめの部分が特に大変そうです。


カンボジアでは、雨季に舟で行くとき、よく川岸に積み上げられたうなぎの筌(うけ)を見かけました。舟から降りたときに近くにあったら、何とか頼み込んで分けてもらいたいと思いながら、手に入れたのは、川エビの筌だけでした。もっとも、いつも仕事で訪ねていたので、そうそう筌を集めることにうつつを抜かしてはいられなかったのですが。
左はタイのブリラムのパンさんのつくったうなぎの筌、先は紐で縛って使います。


かくして、水俣のうなぎテゴは、明かりとして使われることなく、漁具の棚に収まっています。






 

2021年7月27日火曜日

国芳が来た!


hiyocoさんから、大きなお菓子の缶が届きました。
あらぁ、申し訳ない。私の不注意で怪我したばかりに、要らぬ心配をかけ、散財させてしまいました。


何気なく白い紙を外すと、
「おおおっ」
缶には歌川国芳の「猫のすヾみ」が印刷されていました。


凮月堂のゴーフルとラングドシャの詰め合わせです。
夏限定なのでしょう。


花模様だとばかりに見過ごしていた缶の周りの模様は、猫の肉球模様でした。


これから、納涼舟遊びをしようとしている猫の姐さん、夏だというのに着物を3枚も重ねているのは、何か理由でもあるのでしょうか?
帯に差している巻紙も気になります。
「猫のすヾみ」の周り、よく見ると、かつぶしを稲わらで結わえたもので飾っています。昔はこうやって乾したのでしょう。


舟の兄さんたち、こちらは涼しげな浴衣姿です。
hiyocoさん、ごちそうさまでした。

今日は病院に行く日ですが、朝起きてから、妙に右の第一肋骨が痛い。首から腕へと痛みが走り、キーボードもままに打てなかったのですが、久しぶりに痛み止めを飲んで、少し収まりました。記事は昨日下書きをしておいて、よかった!
腕は入院していたときの方が問題なく動いていましたが、今はゆっくりでないと各方向には動きません。肩全体の痛みはすっかり取れて、夜もよく眠れるようにはなっているのですが。
まっ、元気に生きているので、何の不足もありません。

追記:

寝違えたのか、首を動かすだけでも痛かったので弱音を吐きましたが、すっかり良くなり、手を動かすこともできます。




 

2021年7月26日月曜日

郷土玩具をクッキーで


転落前に、ちらちらとながめていた本があります。
『みんげいクッキー』(Trigo e Cana著、誠文堂新光社、2015年)という、クッキーのつくり方の本です。


私的には、本の題名である「みんげい」が気になります。
「民藝」とは、柳宗悦、河井寛次郎、浜田庄司によってつくられた言葉で、それまで一顧だにされなかった、名もない人々がつくった優れた手工芸品を指す言葉ですが、戦後、地方のお土産ものには、「民芸品」という言葉が乱用され、「みんげい」は手垢にまみれ、正統な手工芸品とは区別しなくてはならないほどになっています。
作者か、あるいは出版社か、「郷土玩具」は市民権を得た言葉ではないと判断して、「みんげい」を使ったのだと思いますが、ちょっと残念でしょうか。



それはさておき、内容は47都道府県の郷土玩具をクッキーにしたもの、そして詳しいつくり方を載せたものです。


どれもなかなかの可愛さ、


紙つばめのようにかたまりでない形のもの、黄鮒のように棒のついたものも、よくできています。


材料や使う器具、手づくり器具のつくり方なども、細かく載っています。
基本的には焼いたクッキーに卵白を泡立てたアイシングで模様を描いたものですが、日にちが経っても腐らないよう、生の卵白ではなく、乾燥卵白を使っています。
また、色は、三原色の食用色素と竹炭パウダーを使っています。


色は、4色だけで無限につくれます。


卵白を泡立てたアイシングは、3種類の固さのものをつくり、


使う場所によって、使い分けています。


一つ一つ、どんな手順で描けばいいか、説明つきです。


鳩車の編んでいる感じ、リアルです。


実物大の型紙を見ると、意外と大きいクッキー。そうでなくては、こんなに細かく表現できないのでしょう。


すぐ出来そうな感じですが、実際はたくさんのコルネとたくさんの色アイシングを使い分けなくてはならず、しっちゃかめっちゃかになって、うまくはつくれないことでしょう。


でも、見ているだけでも楽しい本です。