バター攪拌機には、何故か惹かれます。
以前住んでいた家の棚の上の天井近く、真ん中に置いてあるバター攪拌機は、1950年代のイギリスのものです。
ガラスビンに牛乳を入れて、蓋についているつまみを回すと、歯車でつながっているガラスビンの中の木の羽がくるくる回転して、やがて牛乳が分離してバターができます。といっても、やったことはありませんが、二時間ほどかかるそうです。
ハイテクのようで、なんだかおかしいほどローテクでもある、不思議な雰囲気の道具です。
二十年も前から持っていたバター攪拌機は、高杯に乗せて、土間のぐらぐらしやすい飾り台に置いていたのが仇となり、昨年の地震でガラスビンが粉々に砕けてしまいました。
あのときは、いろいろなものが壊れました。でも、壊れたものを惜しむより、残ったものに感謝する気持ちの方が強かったものです。
ただ、バター攪拌機は蓋が残っただけに、目にするたびにガラスビンが思い出されていました。
そんな思いが通じたのでしょうか、似たものが見つかりました。
こうして並べてみると、壊れないで二つ並んでいたら、どんなによかったことかと思ってしまいます。
残された蓋を、お菓子のビンに乗せてみました。ちょっと口が合っていません。
ガラスは割れやすくて、中の木の羽は消耗品です。それに比べると、歯車のついた蓋はたいへん頑丈にできていて、ちょっとやそっとでは、壊れそうにありません。昔は、ガラスビンや木の羽の別売りがあったに違いありません。
いつか、蓋にあったガラスビンに回り逢いたいものです。