2025年4月30日水曜日

もじり編みとオープンワーク


夜、布団に横たわりながら『かご・バスケッタリー ー編み組みのうつわー』(町田市立博物館の展示会に合わせて出版された解説書、1984年)を開いていました。全体で56ページの薄い冊子、さしあたり読む文庫本も漫画もないとき、横になっても腕に重くない冊子として手に取ったものでした。
『かご・バスケッタリー』はほとんどのページが籠の写真で、写真は隅から隅まで何度も見ていたのですが、文はまともには読んではいませんでした。巻頭に、関島壽子さんの「かごにみられる編組技法の展開」という文が載っていて、世界最古の籠は北米ユタ州で見つかった1万年前のものであるとか、かごとは小さな植物をつないで空間をつくるものだとか書いてあって、「ふむふむ」と引き込まれていると、籠を編み方によって分類しているところがありました。
A.絡み編み、B.絡み結び編み、C.組み編み、D.巻き上げ編み、E.平織り編み、F.捩り編み(もじりあみ)の6種類です。
いろいろな技法があるから、籠の技法の分類は難しいだろうなと思いながら、6種類に分けてある編み組み方の説明を読んでみると、やっぱりややこしい。経ひご(たてひご)と緯ひご(よこひご)の太さが違うとき、「平織り編み」として、経緯同じ太さで網代ではなく平編みにしたのを「組み」としてあります。確かに結果は同じなんだけれど工程が違うし、また「組み」にした平編み(平織り)は「経緯」の区別はない、などと考えているうちに、すっかり眠くなって寝てしまいました。


左が「組み」右が「平織り編み」です。


『かご・バスケッタリー』を読んだ朝、ベッドでぼんやり天井を見上げていると、タイの籠が目に入りました。
「あれはもじり編みかな?」


『かご・バスケッタリー』に載っていたもじり編みの籠は袋物(うけ)などです。タイにももじり編みの、漁具ではない籠があったのかしらと棚から降ろしてみたら、全然違っていました。


トンカムのおばさんがココヤシの葉柄で編んだ籠は、もじり編みではなく、内側と外側交互に沿わした竹ひごに細いビニール紐で絡めて留めて形づくっていました。


底は、外側だけに竹ひごを絡めて、内側を平らで使いやすいように保っています。


トンカムのおばさん、今更ながら思いますが、大変な力作でしたね。
でも、もじり編みではありませんでした。


もう一つの籠は、外側と内側のひごを交差させて、ものすごく丁寧に綴っていました。


底は「組み編み」です。


これももじり編みではありませんでした。
もう忘れてしまったけれど、刑務所の受刑者の作品販売に2度ほど行ったことがあったので、そのとき買った籠だったかもしれません。
分類するとしたら絡み編みになるのでしょうか?


世界のかご文化図鑑』では、技法についてはどう扱っていたかと、開いてみました。


もじり編みはありましたが、想像していたのと全然違いました。
上のジンバブエの平たい籠は、細い枝や草木の固い茎を、イララヤシでもじりながら綴っています。左下は輸出用につくられた中国製のイグサの籠、世界各国に輸出されました。右下はイネ科の草本で編んだタンザニアの籠です。
「そうか、ジンバブエの籠はもじり編みだったんだ!」


なんとなく、アフリカの平たい籠は巻き編みだと思い込んでいましたが、棚からジンバブエの籠を降ろしてみたら、確かに巻き編みではありませんでした。
この籠は、南アフリカに住んでいた下の妹が母へのお土産に買って来たものでした。


固い材料は細い枝、それを編まずに経緯に重ねただけで底にしているところが斬新です。


底からあげてきた木の枝を柔軟な緯材で編んでいるのだけれど、もじりながら編んでいるのかどうか、じっくり見たのだけれど、よくわかりませんでした。


中国の輸出用の籠は、我が家にも来ていて、目の前にありました。これも、母のところからやって来た籠です。


『世界のかご文化図鑑』には、ボルガタンガの籠ももじり編みとして載っていました。

ところで、『世界のかご文化図鑑』のもじり編みの章には、筌などありませんでした。それではどこに分類されているのかとページをめくってみると、もじり編み(TWINING)ではなく、オープンワークに分類されていました。


マダガスカルの魚をすくう籠です。
魚をすくう籠も超素敵ですが、頭に乗せている組み編みの籠も素敵です。


フランスの籠もオープンワークに分類されていました。
もじり編みで綴じているように見えますが、いろいろな技法で綴った透ける籠をオープンワークの籠と呼ぶなら、我が家にあるタイの籠や、ブルギナファソのスンバラを濾す籠など、すべてオープンワークに含まれるので、結構すっきりします。
もっとも、つくり方を厳密に追及する人だったら、割り切れない気持ちが残るかもしれません。

ちなみに、『世界のかご文化図鑑』では技法の章で、巻く、束ねて巻く、組んで巻く、組む、多方面から組む、もじる、経と緯Ⅰ、経と緯Ⅱ、フレーム型の籠、絡める・輪にする、アセンブリ、オープンワークの12の分類に加えて、底、縁、取っ手、蓋を加えていました。
「平織り編み」で私が感じた違和感は、「経と緯編み」にすればすっきりすることがわかりました。

経と緯Ⅱの事例

また、経と緯編みが2つに分かれているのは、ただ単純に編むのが「経と緯Ⅰ」で、「経と緯Ⅱ」はそれにもじりを加えたり畝をつくったりするものだそうです。






2025年4月29日火曜日

足が好き


我が家の猫たちは抱かれるのが好きではありません。抱くとすぐ逃げたがります。
ちょっと寂しい気もしますが、たまに膝の上に来たときに、立ちたいのに、追い払うのが忍びないので座ってなくてはならない、それでも座っていられなくて膝から降ろす、その申し訳なさを考えればこれでよかったかと思います。


抱っこは嫌いですが、2匹とも歩いている足にじゃれるのが大好きです。
夜中、暗いところを電気もつけずに歩いているといきなり足に絡みつかれて、踏みそうになったり、転びそうになったりして、「ぎゃっ」と叫ぶ羽目になります。


階段も要注意です。
慣れているので、足元も見ずに降りることができますが、追いかけてきた猫に先回りされて、足の前に身体を投げ出されると、あげた足が降ろせなくなったり、階段を踏み外しそうになってしまいます。


いや、危ない、危ない。大きな荷物を持っていて、下を見てないときはとくに要注意です。


室内でも庭でも、歩いている足元に身体を投げ出す2匹の作戦はやみません。


一度はうまく避けても、二度、三度と身体を投げ出すので気が抜けません。室内ではすり足で歩くこともできますが、外ではそうもいかず、ときに踏んづけて、両方で「ぎゃっ!」という羽目になってしまいます。

ところで、犬のウナギは、足が近づくと危険を察知してさっと飛びのき、
「逃げ過ぎだろう、踏んづけたりしやしないよ」
と気を悪くするほどでしたが。





 

2025年4月28日月曜日

写真、素敵です!

土曜日に、H夫妻がいらっしゃいました。Hさんは夫の大学の後輩です。
これまで、そう深いつき合いではなく、夫人のEさんとは初めてお会いしたのですが、E夫人と夫の育った家が、目と鼻の先で歩いて数分の距離にあったこと、E夫人のお父上と夫、そしてお子さんたちが同じ小学校の卒業生だったこと、E夫人のお父上と夫がかつて同僚で面識もあったこと、私が大学院に通っていたころE夫人が同じ大学の同じ学部に在学していたことなど関係ありまくりで、話が盛り上がってしまいました。

そのHさんが撮ってくださった写真です。スマホを使っているのに撮る人によって雰囲気が違い、すごく素敵な写真だったので掲載させていただきました。


夕焼け


食堂


玄関と廊下。
OMソーラーのダクトの下にすだれを巻いているのは、手漉き紙を張り替えたのだけれど、相変わらずマルが爪で破いてしまったからです。


階段


寝室


招き猫部屋
しまった! 竹籠が出しっぱなしです。
Hさんは小学生のころ、名字に絡んで「ねこ」というあだ名だったとかで、前にいらっしゃったときの最も印象に残っていたのは、招き猫だったそうでした。
ところで、招き猫で有名な世田谷の豪徳寺は、昔は訪れる人も少なくて閑静なところだったのに、いまはインバウンドの外国人で、押すな押すなの大混雑だそうです。
インド人のシャントヌが、
「日本人は必ずバラナシに行くんだよね。僕たち行ったことがないのに」
と言っていたけれど、同じような現象でしょうか。


テラスのたたずむマル


そして、E夫人の写真、
「見て見て、魚が釣れている!」
と言って見せてくださった写真は、とっても素敵でした。







2025年4月27日日曜日

里山ギャラリー野遊


UPするのを忘れていましたが、1週間ほど前に、山の中にぽつんと建っている「里山ギャラリー野遊」に、人形のふぢこさん、木綿の織りもののくぼたさん、木工のさくらいさんの3人展を観に行ってきました。


野遊は、もとは渓流を利用した釣り堀だったとか、しばらく前まで、目の前の桜が満開だったそうです。


釣った魚をあぶる囲炉裏があった建物が、ギャラリーに改築されています。


ここで、お茶をいただきました。

ますやまさんのfbの写真をお借りしました

ところで、ものに執着のない夫、なんと珍しくも大胆なことに、このテーブルに座っている羽織のような法被をきている大工さん(かな?)を購入しました。夫はふじこさんに、
「うちは二人暮らしだけれど、もう一人あの大工さんがいて、三人暮らしもいいかなと」
と訳の分からないことを説明していました。
大工さんを、我が家に暮らす人数に加えるなら、久寿子ちゃんもいるし、お人形さんなんて、何百人いるかわからないのに.....。タマとマルもいるし。
さて、親しい大工さんの大沼さんにちなんで、この大工さんを「古沼さん」と命名して夫に告げると、
「つまんねえこと言ってんじゃないよ」
と、無視されてしまいました。
3人展が終わったら古沼さんが我が家にいらっしゃるので、また詳しく報告します。3人展は今日までです。






 

2025年4月26日土曜日

料理本


長らく出しっぱなしで、すでに景色の一部となっていた料理本がありました。
その上に掛けてある豆入りの額の写真を撮ろうとしたとき、本が邪魔だと思ったことから、なんとかしまわなくてはと思っていました。
本たちはなぜここに出ていたか? 料理本棚がいっぱいだったからです。


料理本は、台所の天袋に入れています。
右側、電子レンジの横には背の高い本、左側、レンジフードの隣は棚を2段にして、それより小型の本を収納しています。はみ出している本をしまうなら、何冊かは処分しなくては入りません。


左の棚の小型本は、比較的古いものが多く、料理本というよりエッセイのようなものも多く、もう開くこともないのだけれど、処分する気にはなれません。
インド料理、アラブ料理、タイ料理などの本は、まだエスニック料理の情報が少なかったころの本で(アラブ料理本もタイ料理本も確か日本初ではなかったかしら?)、その中のいくつかの料理を、今でも参考にしています。
レシピカードボックスも開かないけれど、置くスペースがあるのでそのまま置いておきます。


外にはみ出していた本は、わりと大型だったので、右の棚の背の高い本を取り出して、チェックしてみました。


いやはや、10年以上開いてない本ばかりです。
ぱらぱらっとめくってみて、絶対参考にしないだろうという本を数冊処分、気がつけば何年も出しっぱなしだった本を入れました。
処分できない本は1、2冊ずつ手元に置いて、順に読み直してみています。基本、料理を決めてから材料をそろえるのではなく、家にあるものや、農産物直売所で見かけたものでつくるので、料理本はやはりあまり参考にはならないということがわかりましたが。





 

2025年4月25日金曜日

韓国の竹籠


韓国(李氏朝鮮後期)の枕籠(籠枕)です。
韓国の方から弁当籠と聞きましたが、お弁当を入れるには大きすぎるような気がします。貴重品入れではないでしょうか? 旅に出て、枕籠に貴重品を入れて、それを枕にして眠れば安心です。


内側には薄くだ(へいだ)竹ひごを網代に編んだものを重ねて、二重になっています。


縁は本体、蓋ともに、薄くだ幅広の竹を回して、クズのような繊維で巻いて留めてあります。この繊維がなんとも魅力的です。


外側は、細いひごと太いひごを組み合わせた平編みで、底を平らに編んでから、胴へと立ち上げています。
長辺の真ん中には太いひごを2本入れ、片方は2本で1本として扱い、片方は2本として扱っているのは、胴に立ち上げた場合、経ひご(たてひご)が奇数でなくては編めないためです。短片に太いひご4本、長辺に太いひご12本使うことで、胴に立ち上がると経ひごが8本(両側に立ちあがるので4本×2)+23本(12本×2=1)の計31本で編んでいます。


私は籠を編んだことがないのでわかりませんが、枕に具合がいいように、真ん中をへこませるのは、こういう編み方があって自然にへこむのか、あるいは編んだあとで、竹を湿らせて重石を置いてへこませるのか、どうなんでしょう?
身の方も真ん中がへこんでいるので、枕として使っているうちに自然にへこんだものとは考えにくいです。


身の方は、上をすぼめています。蓋はぴったり閉まるけれど、ブータンの弁当籠のように開けるとき必死で格闘する必要がない、絶妙な閉まり具合です。
ちょっとだけ残念なのは、籠の内側がわりとありきたりな網代編であること、


上の写真の籠たちのように、ドキッとするような内側だったらもっともっと素敵だったのに、というのはないものねだりでしょう。


『韓国の藁と草の文化』を見ると、竹で編んだ籠が掲載されているのは京畿道と全羅道の数例だけ、圧倒的に竹ではない素材の籠ばかりです。
韓国の、現在の竹籠事情はどうなっているのかとネットで探してみると、ヨメコさんという韓国に在住されていた日本人女性のブログの中に、「竹籠を探して潭陽(タミャン)へ」という記事があるのを見つけました。


ソウルでは編み組み細工はなかなか見つからず、売られている籠もヴェトナム製や中国製ばかり、そして韓国製の籠は高い! ヨメコさんは
全羅南道の潭陽まで出かけてみます。
さすが
潭陽には籠屋さんがたくさんあるのだけれど、潭陽でも中国製やヴェトナム製の輸入籠しか売っていない店もあります。竹細工どころの潭陽でも籠師さんの高齢化が進んで、ほんの少数の籠師さんしかつくっていらっしゃらないのです。



画素数が少なくて見にくいのですが、ヨメコさんのブログからお借りした潭陽の籠屋さんの店先の写真です。日本の籠屋さんにはだいたい竹素材の籠しか並んでいませんが、上の写真の上段に、草や藁で編んだらしい籠が並んでいるのが見えていて、韓国らしいです! 


さらに、高知県の「籠屋竹虎」の社長さんのブログに、2014年に潭陽の竹祭りに行ったときの記事がありました。


2014年をさかのぼること30年、1980年代半ばまで、潭陽には300年も続いた竹市場があったそうです。


潭陽の韓国竹博物館の広場には、籠売りの銅像が立っています。


また、博物館には竹籠市場のジオラマがあります。
竹虎の社長は、小さくなってこのジオラマに入り込んで、竹籠市場のおじちゃんやおばちゃんと話してみたいと書いています。
ミニチュアの籠は竹で編まれているのだろうか? どんな種類の竹籠があるのだろうか? 私もこのジオラマを見てみたいです。


さて、『かご・バスケッタリー 編み組みの器』(町田市立博物館の展示会の解説書、1984年)には、韓国の平編みの竹籠(国立民族学博物館所蔵)が掲載されていました。
日本には、浅い籠だったらこれと同じ編み方のものがありますが、深くて口がすぼまっている形を、平編みで立ち上げた籠は、私は見たことがありません。


上の写真は、韓国の深い籠と同じ編み方をした、岡山県勝山市の籠です。
豆を入れたり、ご飯を入れたり、箕としても使える、山陽地方の万能籠です。


浅いし形も違うので、比べるのは難しいのですが、平面を曲面にするので、「もう一つの面」はこんな感じにひごが集まっています。韓国の籠の「もう一つの面」は写真がないのでわかりませんが、籠が深いし、縁がすぼまっているので、ここでひごが超混み合うのではないかと想像しました。なんだか編むのに力が要りそうです。


比べても何の意味もないけれど、こちらは網代編みから立ち上がったカンボジアの、丸い底の計量籠です。深い籠を、角をつくらずに立ち上げていくなら、この編み方の方が無理なくまとまりやすく感じます。


韓国の籠たちです。