夜、布団に横たわりながら『かご・バスケッタリー ー編み組みのうつわー』(町田市立博物館の展示会に合わせて出版された解説書、1984年)を開いていました。全体で56ページの薄い冊子、さしあたり読む文庫本も漫画もないとき、横になっても腕に重くない冊子として手に取ったものでした。
『かご・バスケッタリー』はほとんどのページが籠の写真で、写真は隅から隅まで何度も見ていたのですが、文はまともには読んではいませんでした。巻頭に、関島壽子さんの「かごにみられる編組技法の展開」という文が載っていて、世界最古の籠は北米ユタ州で見つかった1万年前のものであるとか、かごとは小さな植物をつないで空間をつくるものだとか書いてあって、「ふむふむ」と引き込まれていると、籠を編み方によって分類しているところがありました。
A.絡み編み、B.絡み結び編み、C.組み編み、D.巻き上げ編み、E.平織り編み、F.捩り編み(もじりあみ)の6種類です。
いろいろな技法があるから、籠の技法の分類は難しいだろうなと思いながら、6種類に分けてある編み組み方の説明を読んでみると、やっぱりややこしい。経ひご(たてひご)と緯ひご(よこひご)の太さが違うとき、「平織り編み」として、経緯同じ太さで網代ではなく平編みにしたのを「組み」としてあります。確かに結果は同じなんだけれど工程が違うし、また「組み」にした平編み(平織り)は「経緯」の区別はない、などと考えているうちに、すっかり眠くなって寝てしまいました。
左が「組み」右が「平織り編み」です。
『かご・バスケッタリー』を読んだ朝、ベッドでぼんやり天井を見上げていると、タイの籠が目に入りました。
「あれはもじり編みかな?」
『かご・バスケッタリー』に載っていたもじり編みの籠は袋物、筌(うけ)などです。タイにももじり編みの、漁具ではない籠があったのかしらと棚から降ろしてみたら、全然違っていました。
トンカムのおばさんがココヤシの葉柄で編んだ籠は、もじり編みではなく、内側と外側交互に沿わした竹ひごに細いビニール紐で絡めて留めて形づくっていました。
底は、外側だけに竹ひごを絡めて、内側を平らで使いやすいように保っています。
トンカムのおばさん、今更ながら思いますが、大変な力作でしたね。
でも、もじり編みではありませんでした。
もう一つの籠は、外側と内側のひごを交差させて、ものすごく丁寧に綴っていました。
底は「組み編み」です。
これももじり編みではありませんでした。
もう忘れてしまったけれど、刑務所の受刑者の作品販売に2度ほど行ったことがあったので、そのとき買った籠だったかもしれません。
分類するとしたら絡み編みになるのでしょうか?
『世界のかご文化図鑑』では、技法についてはどう扱っていたかと、開いてみました。
もじり編みはありましたが、想像していたのと全然違いました。
上のジンバブエの平たい籠は、細い枝や草木の固い茎を、イララヤシでもじりながら綴っています。左下は輸出用につくられた中国製のイグサの籠、世界各国に輸出されました。右下はイネ科の草本で編んだタンザニアの籠です。
「そうか、ジンバブエの籠はもじり編みだったんだ!」
なんとなく、アフリカの平たい籠は巻き編みだと思い込んでいましたが、棚からジンバブエの籠を降ろしてみたら、確かに巻き編みではありませんでした。
この籠は、南アフリカに住んでいた下の妹が母へのお土産に買って来たものでした。
固い材料は細い枝、それを編まずに経緯に重ねただけで底にしているところが斬新です。
底からあげてきた木の枝を柔軟な緯材で編んでいるのだけれど、もじりながら編んでいるのかどうか、じっくり見たのだけれど、よくわかりませんでした。
中国の輸出用の籠は、我が家にも来ていて、目の前にありました。これも、母のところからやって来た籠です。
『世界のかご文化図鑑』には、ボルガタンガの籠ももじり編みとして載っていました。
ところで、『世界のかご文化図鑑』のもじり編みの章には、筌などありませんでした。それではどこに分類されているのかとページをめくってみると、もじり編み(TWINING)ではなく、オープンワークに分類されていました。
マダガスカルの魚をすくう籠です。
魚をすくう籠も超素敵ですが、頭に乗せている組み編みの籠も素敵です。
フランスの籠もオープンワークに分類されていました。
もじり編みで綴じているように見えますが、いろいろな技法で綴った透ける籠をオープンワークの籠と呼ぶなら、我が家にあるタイの籠や、ブルギナファソのスンバラを濾す籠など、すべてオープンワークに含まれるので、結構すっきりします。
もっとも、つくり方を厳密に追及する人だったら、割り切れない気持ちが残るかもしれません。
ちなみに、『世界のかご文化図鑑』では技法の章で、巻く、束ねて巻く、組んで巻く、組む、多方面から組む、もじる、経と緯Ⅰ、経と緯Ⅱ、フレーム型の籠、絡める・輪にする、アセンブリ、オープンワークの12の分類に加えて、底、縁、取っ手、蓋を加えていました。
「平織り編み」で私が感じた違和感は、「経と緯編み」にすればすっきりすることがわかりました。
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経と緯Ⅱの事例 |
また、経と緯編みが2つに分かれているのは、ただ単純に編むのが「経と緯Ⅰ」で、「経と緯Ⅱ」はそれにもじりを加えたり畝をつくったりするものだそうです。