2010年7月11日日曜日

けずりかけ 笹野一刀彫



山 形県笹野のけずりかけ、お鷹ぽっぽです。
私の持っているものは、小さなものですが、凛とした気品があります。




大 学1年の夏休み、私は東北に行ってみたいなと考えていました。民具や手仕事に関心があったからです。
「やすこさんも東北に行きたがっていたよ」と 友人に聞いて、さっそく話してみました。「さっちゃんも行きたがっていたから、一緒に行こうか」と、話がまとまりました。
同級生のやすこさんとは、挨拶 程度のあまりよく知らない間柄、ましてや、留年生で、しかもほとんど学校に来ないさっちゃんとは、それまであまり口を聞いたこともありませんでした。

そ のころ、国鉄には地域別の周遊券があって、一枚買うと、一定期間、いろいろなところに、乗り降り自由でした。もちろん、学割もききました。三人は東北の周遊券を買い、上野から夜行列車に乗って出発しました。
みんな、アルバイトで貯めたお金を握っての旅行ですから、夜はユースホステルや木賃宿に泊まり、食事は地方の名物どころか、一番安いうど んや定食を食べて切り詰めて、目いっぱい歩き回る旅でした。

知りませんでしたが、さっちゃんは、郷土玩具を収集していました。だから、やすこさんと私も必然的に郷土玩具 制作地、制作者を訪ねることになりました。




最初は、「なんで馬のおもちゃなんか買うの?」といぶかっていましたが、訪ねた先の、何気ない家に一歩足を踏み入れたとたん、部屋いっぱいの極彩色の土人形が目に入ったりして、だんだん、郷土玩具に興味がわいてきました。
そして、宮城県を過ぎて、山形県に入り、米沢の街の金物屋のショーケースの中で、昼間訪ねたばかりの作家さんの家ではもうつくっていない、古い餅搗き兎を見つけたころには、私ももはやいっぱしのコレクターになっていました。

笹野一刀彫は、笹野千手観音が建立されたころ(807年)からつくられ、観音さまの縁日で売られていたようですが、1780年ごろ、上杉鷹山公が農民の副業にと奨励して、盛んになりました。
アイヌのイナウの技法と精神が取り入れられて、木彫りは、より洗練されたものになりました。




この兎は、しっぽを押さえると、かたん、かたんと、餅を搗きます。




巣に座っている鶏は、それからずいぶん後に手に入れたものです。古い玩具には、見かけない形なので、あるいは昭和の新作かもしれません。しかし、イナウの伝統をよく引き継いでいて、なかなかおもしろいものです。




裏返してみると、ただ削ってあるだけではなく、スパイラルになっています。

ちなみに、お鷹ぽっぽは、上杉鷹山公にちなみ、徳を慕い、あやかるようにという意味を表し、餅搗き兎は懸命な働きを、鶏は早起きを表しているとか、東北の、農民の生活ぶりがうかがえます。

三人は、それから二度ほど一緒に旅をして、金沢、輪島、京都、倉敷などに行きました。しかし、2年生の夏でしたか、さっちゃんが退学して、あこがれのヨーロッパに、船で旅立って、おしまいになりました。
やすこさんとはときどき会いますが、さっちゃんは、あれ以来、行方知れずです。誰も、消息を知りません。どうしているのでしょうか。

6 件のコメント:

bluemoon さんのコメント...

春さん、やっぱりすごいですね。
おっしゃる通りです。
ダントツ1位はうさぎ。
同時2位に、カエルとカメ。
昨日も、衝動買いしそうでした(笑)

刺繍はハンガリーのカロチャのものです。
自分が持っていったものですし、親しいので、裏だということ、言いました(笑)

こうなるとリバーシブル。
気に入った裏側で仕立てるのは、グッドアイデアです。

バティクを見る目が変わりました。お土産で頂いたバティクのエプロンを引っ張り出してきて着けています。

bluemoon さんのコメント...

間違ってしまったところに、
前のコメントを書いてしまいました(笑)

ここに書こうと思っていたことは。
写真を見て、高校の修学旅行で東北を回った時に、鷹と鶏の一刀彫を買ったことを思い出したことです。写真と違って、鶏も鷹と同じような形でした。どっちにするか決めれなくて両方買いました。一刀彫を買っていたのは、私ぐらいでした(笑)ウサギもあるんだぁ。

自分の持っているものを、思い切って2分の1にしなければいけない時に、後ろ髪を引かれる思いで片付けました。当時の状況から仕方なかったことなのですが、どれも残しておきたかったです。

さんのコメント...

bluemoonさん
あはは、うさぎ年だったのですね。カエルとカメ、カメはうさぎが負かしたから(笑)、わかりますが、カエルは関係ありましたっけ?なんて、関係なくてもカエル好きの人はたくさんいますね。
そうでしたか、ハンガリーの刺繍はよくは知りませんが裏表見分けるのが難しそうですね。でもああいう刺繍ですから、見る人が見たら一目瞭然なのでしょう。
バティクは、手で蝋を置いたものとプリントがあります。歴然とプリントとわかるものもありますが、よくわからないものもあります。手描きでも雑なのもあるし、プリントでも見事なのもあります。手描きのすごいのは、2メートルの布を描くのに、毎日働いて1年もかかるそうです。

さんのコメント...

bluemoonさん
一刀彫のうさぎは当時はつくられていなくて、近くの雑貨屋だったか、つくっている人のところだったか忘れましたが、すでに埃をかぶって古くなっているのを買いました。うさぎの餅搗きのモチーフは大好きですが、たいてい縦杵を持っているもので、あの形は面白いです。今はつくっているのかなぁ。
私も、いろいろ処分しなくてはならないときもありました。そんな「もの」どころじゃなくて。だから、こうして何も捨てないでいられるときは幸せなときだと思います。まあ、持ち過ぎですが(笑)。

bluemoon さんのコメント...

春さんのコメントを読み、初めて考えました。なぜ好きなんだろうと。
ウサギとカメは、パッと思いつきませんでした。そこを掘り下げて考えてみて(笑)、思ったことは、母の影響かも・・・、です。
父には申し訳ないくらいの母親っ子でした。母は、神社仏閣にゆくと、干支ものをよく買ってきてくれました。また母はミドリガメが好きで、何度か飼っていました。ウサギとカメ、多分ここからだと思います。
カエルは私の好みから。緑色のモリアオガエルの、パッチリした目や手足の先のふくらみとか、愛らしく思います(笑)

バティクのエプロンと布とシャツが家にあります。じっくり観察した結果、どれもプリントのようです。春さんのブログを読まなければ、こうして眺めることはなかったと思います。勉強になります。

さんのコメント...

bluemoonさん
あはは、好きに理由はありません。好きになったら好きですね。もっとも、その存在を知らなければ、好きにもなれませんが。
我が家には生きたカエルがいっぱいいます。特に青ガエルって可愛いですね。私もヤシの葉細工のカエルとかは持っています。あとうっとり目のカエル、なんていったっけなあ、一目ぼれでした。