2014年7月24日木曜日

カンボジアの織物の道具


カンボジアの、絣をくくるときに使う道具です。
後ろの布は、そのカンボジアの絣、腰巻布にして使います。


この道具を、織り幅の長さ(約90センチ)に離して立て、四角い穴に棒を通して固定します。
そして、そこに一枚の布を織るのに必要な分の緯糸(よこいと)をぐるぐると張っていき、張った緯糸を何本かずつまとめて、絣の模様にくくるのです。

糸を引っかけるだけの機能ですから、厚めの板に穴を開け、そこに棒を差し込むだけでも事足ります。


それを、妻のために、母のために、あるいは娘のためにと心をこめて美しく彫るのが、カンボジアの男の心意気なのです。
普段使いの道具を、美しく装飾する、これ以上に豊かな「人間の暮らし」というものがあるでしょうか?


一部は透かし彫りにさえなっています。
しかも、この人だけが特に美しいものをつくったというわけではないのです。

この道具は、十五年ほど前にプノンペンに住んでいたころ、トゥールタンポン市場の骨董屋さんではよく見かける、ありきたりのものでした。
ただ、二つセットで使うものですが、一つになってしまっていたものが多かったような気がします。


先日、カンボジアのシェムリアップで、織物の村をつくって機織りを支援している、古い友人のもりもとさんが、facebookに載せていた写真です。

ポル・ポト時代に、生糸をつくる伝統は途絶えてしまいました。絣の染めと織りは復活して、プノンペン周辺にも絣織りの村がいくつかありますが、市販の生糸を化学染料を使って染めています。
そこで、もりもとさんは、もう一度桑を植え、蚕を育て、糸を繰って草木で染めることはできないかと考え、技術を持っている人たちを集め、荒れ地を開拓して織物の村をつくったのです。
いまではたくさんの若い人たちが育って、事業はすっかり軌道に乗っているようです。

そんなもりもとさんが、プノンペンに住んでいたときに、トゥールタンポン市場で手に入れた道具たち、ペアが二つ、一つずつのものが二つです。どれも、とても素敵です。


たぶん、彫る道具は切れ味のたいしてよくないナイフだったり、あるいは草を刈ったり、薬草を刻んだりする万能の鉈だったかもしれません。


こんな、生活を彩る道具つくりを楽しむような、ゆったりして心豊かな生活を送りたいと、心から思います。




2 件のコメント:

bluemoon さんのコメント...

今年になってから織り機のことをよく考えます。図書館から本を何冊か借りて見ました。これは始めてです。木製で彫り物があって、素敵ですよね。
ゆったりと心豊かな生活、こんなふうに暮らせる社会になりますように。

さんのコメント...

bluemoonさん
織り機は道具ですから、機能を果たせばよいものです。あとは、長持ちするかどうかを考えて樹種を選ぶ必要もあります。というわけで、だいたいはとってもシンプルなものです。
それが、カンボジアはちょっと特殊です。織物のどんな部品や部分にも彫りものがしてあって、しかも見事です。タイにも木彫りの織り機部品がありますが、カンボジアから学んだものかもしれません。織り機だけではなくて、生活のいろいろな道具、農具にまで彫りものをしているのがカンボジアです。面白いですよね。
もし、プノンペンに行かれることがあったら、博物館の織り機を見てください。あまりの美しさに仰天しますよ(笑)。心にゆとりがなかったら、ほんと、あんなことはできません。