2018年8月11日土曜日

地機(じばた)

先日訪ねた笠間のYさんは、タイのチェンマイ郊外に住むモンの人たちの織る布で、服をつくって売っていらっしゃいます。
といってもマルチ人間のYさんのことですから、服づくりは気が向いた時だけという感じでしたが、ミシンは、よだれの出るような(と言っても私はミシンが苦手ですが)工業用ミシンを各種持っていらっしゃいました。

Yさんは最初、ネパールのチベット難民の織る絨毯(じゅうたん)に惹かれ、見よう見まねで段通用の竪機(たてばた)を手づくりされ、ご自分でも織ると同時に、日本の気候風土に合った柄をデザインして、ネパールで織ってもらっていました。
やがて、化学染料の使用など、いま一つネパールの織りものにもの足りなさを感じ始めたころ、タイのモンの手紡ぎ、手染め、手織りの布と出逢われて、自分が探していたのはこれだったと気づかれました。
そして今では、その布を縫製したり、糸でニット製品をつくったりなさっています。
「前に段通を織った竪機は、どの部屋にあるのですか?」
「あぁ、それはもう壊して、家の一部になっちゃった」
Yさんは、家の増築に増築を重ねていらっしゃいますが、その過程で竪機は姿を変えてしまったようでした


この、もと蚕小屋の二階にあった織り機は、モンの機(はた)を参考に、現地の人に教えてもらったり、写真に写してきたりして、原理を把握して、Yさんご自分でつくられた織り機です。
織った布を巻き取る棒は、固定してありません。左に見える帯を自分の腰に回して背中で引っ張ることによって経糸(たていと)を張る、地機(じばた)です。
えっ、ちょっと。
モンの地機には似ていません。

タイに住むモンの地機

モンの地機は、経糸をさばきやすくするために、太い竹を使ってあるのが特徴です。

ラオスに住むモンの高機

そして今では、ラオスに住むモンを含め、多くのモンが足で踏んで綜絖(そうこう)を上下させる、高機(たかばた)を使っています。

結城紬の地機

Yさん手づくりの機は、どちらかと言えば、結城紬の地機に似ています。
おたずねしなかったのですが、原理は同じだからと、結城の機を参考になさったに違いありません。


と、布の巻き取り棒の間にあるのは刀杼(とうじょ)です。
刀杼は杼と筬(おさ)を兼ねていて、筬がなくても刀杼で織った布を締めることもできます。


いずれにしても素敵な織り機でした。


結城は織り子が職能化した地域ですが、日本の一般の地機は、こんな構造でした。







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