元同僚の久津輪雅さんは、岐阜の県立森林文化アカデミーで教鞭をとりながら、グリーンウッドワークを普及する活動をしています。
グリーンウッドワークとは、生木を細工する方法です。それにしても西洋では木の匙が、人々にどう受け止められているのか、知りたいものです。
私たちの友人のデンマーク人のイエンスと、ヴェトナム人だけどフランス生まれ、フランス育ちのアン夫妻は数年前に我が家に滞在したとき、木の匙に全く関心を示さなかったというより、使うのを嫌がっている感じが見えました。
匙を、ヨーロッパでは16世紀から使っていますが、最初はみな木の匙、そのうちお金持ちは金属の匙を使うようになり、普通の人たちは相変わらず木の匙を使ってきました。
みんなが金属の匙を使えるようになったのは、そう昔のことではありません。20世紀に入ってからとか、第二次世界大戦後かもしれません。
木の匙は、どちらかというと忘れ去られたものです。
もちろん、ヨーロッパでも、直接口に運ぶ匙ではなく、調理用具としては、木の杓子やターナーがずっと使われています。
日本では、箸、杓子など木で、金属の匙の伝統はなかったからか、すんなり木の匙を口に運べます。というかかつて、どうしても金属を口に入れられない同級生がいたほどでした。
上から二番目はその上と同じ匙。割れたので隣のKさんに漆でつないでもらい、漆をかけてもらった |
我が家の、口に運ぶ木の匙も、久津輪さんに倣って並べてみました。
夫は無類の木のカトラリー好き、今ではほとんど金属は使いません。
上から5番目だけアンティーク。スウェーデン |
これらは、口に運ぶ匙ではありません。
琺瑯、漆、ガラスなどの器や鍋と一緒に使うとき、木の匙や杓子は音を立てないし、傷もつけないので、とても安心です。
ただ、よく乾燥させてから仕舞わないとかびるので、それだけ気をつければいいのです。
岐阜県立森林文化アカデミーでは、木にかかわる人を要請するため、正規の学生への授業だけではなく、一般の人向けにもワークショップを開いて、グリーンウッドワークや伝統的ものづくりを進めています。
すでに、鵜飼の鵜を入れる籠をつくる人や、和傘の骨をつくる人なども現れたと聞いていますが、さらなる後継者、手仕事を次世代につないでいってくれる人を求めています。
この写真は、おもにはフィリピンの匙たちです。
木の匙だけでなく、ココヤシの匙、竹の匙、東南アジアの匙たちはバラエティーに富んでいます。
4 件のコメント:
春姐さん
季節に合ったそれぞれの食器や用具で食事の話題を楽しむ
なんて時代はもう来ないのかなー
全てが個の時代ですね。
母と娘三人夕食は賑やかでした。
昭ちゃん
確かに、夏しか使わない食器、季節ごとの箸置き、客用のコップなどなどありましたね。
昭ちゃんたちご夫婦とお嬢さんたちの食卓、「異人たちとの夏」のような食卓だったんでしょうね。私の両親たちもそうでした。
でも、私の祖母の子ども時代は、おしゃべりすると叱られるし、お醤油を多く取りすぎたら、飲まされたと言っていました(笑)。
木の匙がいっぱい!こんなにいろいろあるのですね~。
イエンス&アン夫妻が木の匙になんとなく拒否反応を示していたのが面白いですね。ヨーロッパでは格が低いのかもしれませんね。
考えてみれば、実家には木のしゃもじはあっても木のスプーンはありませんでした。今うちで使っている木のスプーンは、小さな息子がスープを飲むとき「あちっちっ」とならないように無印で買ったものです。今ではスープの時は必ず3人とも木のスプーンです。
hiyocoさん
そうでした。私の実家にも木のスプーンはありませんでした。特に口に入れるものは。
今では、カレーは木の匙、パスタは木のフォーク、ヨーグルトも木の匙です。音がしないのがいいですよね。
夫は寒天を食べるときでも木の匙を使おうとするので、「寒天は金属のを使って」とよく注意します(笑)。茶碗に流し入れた寒天を、先のとがっていない木の匙で掘りながら食べるなんて、考えられます?(笑)。
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