2018年8月10日金曜日

エウェの布


ガーナのエウェ人の織物、腰巻布です。
この写真では、右を「わ」にして、二つ折りにしています。広げて、女性が腰に巻きます。

赤ちゃんをおんぶして踊っているお母さんが素敵!赤ちゃんの足が見えます

布の幅は約120センチ、長さは200センチ前後あるので、胸元から巻いてワンピースのように着ることもできます。
と言ってもこの写真は、腰布を丈短く巻いて、別布で胸を巻いていますが。


織る方向としては縦じま方向、下から上へと織ります。
しかも広幅ではなく、細く織った布を14本、濃い色の布と薄い色の布を交互につなぎ合わせています。それだけでもたいへんな作業量ですが、つなぎ合わせたとき、模様がつながって、大きな斜め格子の模様になるよう、あらかじめ計算して模様が入れられています。


細かく段数を数えながら模様を織り入れたとしても、そのときそのときの力の入れ具合で布の長さが変わってきます。それに途中で中断したりすると、段数はわからなくなってしまいます。長さのガイドをつくってそれをあてながら、均等な長さになるように織ったのでしょうか?
さすが、アフリカで最高の技術と言われる、エウェの織りものです。


布端には、模様織りをほどこして、アクセントにしています。
模様織りは面倒だけど、細い布一本を織り終わったという達成感を、その都度味わえたことでしょう。
ちなみに、織り手は男性です。


織り糸は、細くてしっかり撚りがかかった糸なので、自分たちで紡いだのではなく、イギリスの紡績工場でつくられたものかもしれません。白糸を手に入れて、藍染にしたのは、エウェの人たちです。
新しい染料も使ってみたかったのか、濃い色で織ってある布の真ん中の花紺色の経糸(たていと)は、化学染料で染めたものが使われています。
化学染料が世界的に使われ始めたのは1900年前後で、これも20世紀初頭の織りものと思われます。
織り込んだ模様糸は、市販のすでに染めてある糸です。
   

これは布の裏側を見たところ、布と布を丁寧にかがってつないであるのが見えます。


左の布は、エウェのケンテ、男性用の民族衣装です。
男性の衣装は、織り方は同じで、細く織った布を綴り合せますが、女性の腰布の倍の数をつないで、約200×240センチの大きい布にしたものです。


ネットで見ると、こんな具象的な模様を織り込んだケンテもあり、なんとも素敵です。


それを男性は、片方の肩にかけてから、身体に回して着ます。


追記:
糸を紡績製品かもしれないと書きましたが、布端をよく見ると、自分で紡いだ糸でした。
綿を育て収穫して糸に仕上げるまで手仕事でした。細く細く、紡いであります。





2 件のコメント:

hiyoco さんのコメント...

化学染料で染めたというのは見てわかるのですか?あと、これらの布は絹ですか?
模様織りは気の遠くなる作業ですね~。
昨日図書館でまたちらっと民族衣装の本を眺めた時、ケンテクロスは格式ある布だとあったので、ああ、だから春さんが子供がケンテクロスをこのように纏うことはないと書いていたのだな~と合点がいきました。

さんのコメント...

hiyocoさん
化学染料は見てわかります。とくに青い色の染には世界中で藍が使われましたが、何度も染めると濃くなりますが、このような花紺にはならないので一目でわかります。この織物で言えば、水色(浅黄色)が藍で軽く染めてあり、紺が藍で回数を染めてあります。
これは経糸だけが見えるように経糸を何本どりかで太くして、緯糸は細くして、緯糸が隠れるように織っていますが、緯糸は何色かと見たら同色でした。そして、なんと機械紡ぎの糸ではなくて手紡ぎでした!エウェの人には申し訳なかった、綿を植えて自分で収穫して紡いだ糸でした。木綿です。絹のように光沢があってぼさぼさしていないので、てっきり撚りを強くかけた紡績の糸かと思ってしまいました。

模様糸だけが市販の糸でした。模様織り自体は、普通に織っていくところに色糸を挟むだけですから、これはそう難しいものではありません。ただ、よく計算しないとうまくいきません。きっとその職人さんの家の得意な織り方とか、見本とかいろいろあったのでしょう。模様糸はこの場合少量染めるより、買った糸の方が簡便だったのでしょう。鮮やかな赤などは、自分では染められませんし。模様糸にはレーヨンらしきものも混じっていましたから、ヨーロッパ(この場合イギリス)は、アフリカを資源国として見るだけでなく、市場としても見ていたのでしょう。1960年代、エウェではなくアシャンティの場合ですが、市場にレーヨン以外の糸は売っていませんでした。木綿は地球上での生産に限りがあるので、熱帯でよく育つにもかかわらずお金持ちの国に回して、アフリカや東南アジアには化学繊維をあてがったのだと思われます。
ケンテは、普通の人なら「ケンテもどき」ですませるくらい、時間がかかった織物なのでなかなか買えません。大きい布をまとった人の写真を探すと王の写真が多く、頭に何か乗せて鯱張っている写真ばかりなので(笑)、ケンテらしいケンテではないけれど、笑顔の素敵なおじさんの写真(最後の写真)にしました。この布も写真だけではわかりませんが、とっても素敵です。