『ベトナム低空飛行』(赤瀬川原平著、ビジネス社、1996年)は、路上観察のハノイとホーチミン市版、とってもおしゃれな本です。
赤瀬川さんは、いろいろなお顔を持っていましたが、この本は、路上観察者+写真家、それに一部イラストレーターのお顔も見せています。
路上の静物[1]
もうこのままで作品であると、ぼくらは思うが、今日もお客はなくて居眠りだけで終わるかもしれない。
東南アジアで暮したことのある人なら、これが「何屋」さんであるかすぐ言い当てられます。ガソリン屋さんなのです。
清涼飲料水の空き瓶に入れたガソリンは、ガソリン・スタンドより少し高いのですが、ほんの少量でも嫌がらずに給油してくれます。
お金もたいして持っていない、ガソリンがなくなりそうなバイクには、なくてはならない存在です。
現代は「手間」を惜しみますが、手間をかける生活は、充実したものです。
回遊仕立て
開きかと思ったが違う。二匹ずつきっちり腹合わせで並べてある。一匹余ったらどうするんだろう。
このほかにも、帽子、肉団子、人形など美しく並べてある写真が続きます。
赤いポリバケツ
ぼくは何故だかフェルメールの絵を思い出した。美は乱調にあり。壁で計算しているのも大胆。
眠る男[2]
停めた二輪車の上で横に伸びて眠るという凄い芸当。これなら絶対に盗まれない。これこそ昼寝のプロだ。
こんな、嘘のような人も、東南アジアではよく見かけます。人間は、技を磨けば何でもできるものです。
門前の赤犬
扉のくすんだ緑と壁の黄色、それとの配色を考えているような赤犬。
口を開いてのぞかせた舌の色が、この場面で一番鮮やかである。
実の成る家
ほとんど路上のショートケーキだ。この可愛い小窓の造り方。ほとんどパウル・クレーだ。
どの写真にも、赤瀬川さんの温かい目が注がれています。
私にとって、赤瀬川さんを最初に目にしたのは漫画家として、70年安保時代の『朝日ジャーナル』に連載されていた、「櫻画報]でした。
当時、私たちはアメリカに住んでいましたが、ヴェトナム戦争反対や徴兵拒否、黒人の人種差別撤廃運動などで、アメリカも熱く揺れていた時代でした。
『朝日ジャーナル』は当時、隅から隅まで面白い週刊誌でしたが、赤瀬川原平さんの、「アカイ、アカイ、アサヒ、アサヒ」で、「櫻画報」は終わると同時に、このことで『朝日ジャーナル』の編集長は更迭され、以後『朝日ジャーナル』からはおもしろさが消え、やがて廃刊に追い込まれていきました。
その当時は、赤瀬川さんが、いろいろなお顔をお持ちだとは知らなかったので、数年後に再びお名前を目にした時は、同姓同名の別人かと思ったほどでした。
10月26日に亡くなられた赤瀬川原平さんに、追悼の意を表します。
2 件のコメント:
近年すっかり変わってしまった小道具にドライバーがありますね、
殆どプラス型です。
戦時中は敵性語禁止で「柄つき螺まわし・らまわし」でしたが(笑い)
先を研ぐと結構役にたちますね、
春さんの道具を見て思い出しました。
昭ちゃん
「柄つき螺まわし・らまわし」、知りませんよぅ(笑)。ネジ回しです♪
マイナスが多かったのは、つくりやすかったのでしょうね。手は痛くなるし、すぐネジ山が破損して、入りも出もしなくなって困ったものです。まっすぐ入れるのも大変、やり直すのも大変、棚などがやっとできたころは、手が赤くなり、マメもたっぷりできていました。
それに鉄でしたからすぐ錆びて、木の色も変わり、取り替えようにも抜けもしない。今のインパクトドライバーは夢の道具です。昭ちゃんちにもあります?
マイナスドライバーは、ペンキの缶を開けるのとか、セメントをはがすスパチュラ代わりとか、全然別のことで大活躍しています(笑)。
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