2014年10月8日水曜日

リスのシャツ

だいたいのところには普段着で出かける無精な私、しかも普段着は数枚の着まわしですが、ときおり別の服を着る必要に迫られることもあります。
そんなとき、昔着ていた服の中から目当ての服を見つけようと、いつもは開けない引き出しを開けて、いろいろさがしたりします。


そんなことをしていると、こんな服が出てきました。
タイ、ビルマなどの丘陵地帯に住むリス人のシャツです。


リス人の民族衣装は、いろいろな色の布を重ねて縞模様をつくるのが特徴で、もともとは手縫いで重ねたものですが、これはミシン縫っています。


ところが、飾り布以外の仕立ては全部手縫いです。
 

ミシンでつくった飾り布を買い、青い生地と組み合わせたのかと裏を見ると、服地と飾り布は一体になっています。


ということは、襟と袖口用に縞模様をつけた生地と、同色の無地の布がセットになったものを売っていたということです。それを買って自分で縫うということが、かつてリス人の間で広く行われていたに違いありません。

タイの丘陵地帯に住む人たちが日常的に民族衣装を着ていたのは1980年代のはじめまで、今から約30年前のことです。
 

仕立ては、あり合わせの糸を使ったのか、縫い糸の色はまちまちです。


ボタンを留めると、前見ごろがちょっと引き上げられてしまいますが、着てみると、これでちょうどよかったのでしょう。
ちなみにこれは男性のシャツで、下にパンツを履きます。

私は、このシャツを着たことがあったか、あったとしても数回でした。
というのも、私が着ると、いろいろな装身具をつけなくても、顔がアジア顔ですから、もろリス人に見えてしまいます。
ちなみに、今でも持っている黒いブラウスを着ていて、
「ポル・ポトの兵士みたいだね」
と言われてしまったこともありました。


これが女性の普段着です。
1980年代半ばまでは、日常的に着ていました。


子どもが、かわいい!


これらは、全部機械織りの生地を使っています。


1800年頃、イギリスで力織機で布を織ることがはじまり、以後、できた布をイギリス植民地をはじめとする世界各地に運んだことは、もたらされた地の織物に大きな影響を与えました。
タイも例外ではなく、綿栽培や手織りが次々と失われ、代わりに粗悪な機械織物が入ってきました。
また、戦後は、戦争のために開発された技術を使った人造繊維のポリエステルなどが出回り、丘陵に住む人々とは言え、その影響を免れることができませんでした。


これが正装。普段着より数倍華やかです。
写真は、『FROM THE HANDS OF THE HILLS』1978年、Media Transasia、香港より転載しました。







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