2019年1月12日土曜日

愛知の招き猫+

骨董市の、「がんこさんの親父さん」と私が呼んでいる骨董屋さんの持っているものといえば、がらくたが多く、品揃えに一貫性がありません。
でも、時代劇の小道具さんも、こんなのが欲しいだろうなと思われるような、稲わらで編んだ「もっこ」を持っていたり、中央アジアの珍しい皮の鐙(あぶみ)を持っていたりと、びっくり箱のように何があるかわからないので、毎回、覗かないではいられません。
先日の骨董市では、親父さんの店には、等身大の子どものマネキンが並んでいました。
「こんなもの、買う人がいるのかしら?」
と見ていたら、西洋人のおじさんがやってきて、
「じゃぁ、これ、いただいていきますよ」
「あいよ」
と一体を抱きかかえて行ったので、びっくりでした。
いったい、家の中のどこに置くつもりでしょう?

そんな親父さんの店の棚にいる招き猫の後ろ姿を、遠くから見つけました。


近づいて、正面に回って見ると、愛知の猫でした。
稚拙な絵つけなので、湿気て剥げたあと、自分で絵つけしたのかと思われるほどですが、耳のとがった愛知の猫には、ときおり、そんないたずら描きのような猫を見かけます。

『郷土玩具招き猫尽くし』を見ると、旭土人形、起土人形、犬山土人形など、似た猫は載っていますが、これと同じ猫はいないので、どこでつくられた猫か特定できません。ただ、この猫は土がとても薄いので、犬山土人形ではないかと思います。


愛知は、その昔から焼きものの一大産地だけあって、よい陶土に恵まれています。
古い三河系の招き猫には、とても大きなものがありますが、よく伸びるいい土がなければ、大きい猫をつくることも焼くこともできません。


その中でも、犬山土人形は、とりわけ薄くできているのが特徴だそうです。


『郷土玩具招き猫尽くし』に載っていた愛知の猫たちは、犬山人形も含めて、どれも手を顔の真ん中あたりまで挙げていますが、この猫はやる気なさそうに、頬っぺたのあたりまでしか挙げていません。他のところでつくられたのかもしれません。

愛知の土人形には、産地の名前がついていました。三河土人形、旭土人形、起土人形、犬山土人形などのほかにも、古知野土人形、棚尾土人形、新川土人形などがあり、それらは「おぼこ」(尾西では「おこし」)と呼ばれていました。
おぼこは行商人に担いで売り歩かれ、人々は一つ、また一つと買い足して、節句の時に贈ったり、飾ったりしたものでした。


挙げた手は華奢で、まるで手びねりでつくったような手ですが、型を合わせた線が腕の途中までついているので、手の先はともかく、途中までは型でつくったもののようです。


さて、猫のわきには、汚れた土の犬張り子犬もいました。
なんと、貯金箱になっています。これは型に手で土を貼りつけて成形したものではなく、どろどろにした土を流し込んで作ったものです。
「犬ももらうわ」
と言ったら親父さん、犬のお金は取りませんでした。


この犬、犬張り子犬にしては、脚が揃わず(左右対称ではなく)、わずかに前後になっています。


しかも、前脚と後ろ脚がおなかの下でつながっていますが、貯金箱としてつくったので、お金を入れるスペースを取ったためでしょう。


というわけで、犬猫うちそろって仲良くいらっしゃいました。








2 件のコメント:

karat さんのコメント...

これは手の上げ方がちょうどよくて、普通に猫が前足を挙げてる感じで、本当に招かれている感じがしますね(^^)。

さんのコメント...

karatさん
まるで私でも描けそうな絵つけですが、見ていると味が出てきます。噛むほどに味の出るするめと言ったところでしょうか(笑)。
味のあるお顔と、味のないお顔、紙一重なところが面白いところです。言われてみれば、やる気のなさそうなと思った手も、いい具合で、愛嬌があるかもしれません(^^♪