縫物をしようとして針山を見て、やたら縫い針がなくなっていることに気がつきました。
よく針が見当たらず、新しい針を出して使っていましたが、考えてみれば変な話です。
針山は、タイの昔の屋台のうどん屋さんの薬味入れの、実物より小ぶりなものを利用しています。真鍮のカップ型で、その中に自作、と言っても切った髪を入れて縫い縮めただけの針差しを入れています。
針山をつくって以来初めて、布部分を引っ張り出し、つまんで押してみると、出るわ出るわ、針がぞくぞくと出てきました。知らない間に、こんなにたくさんの針を飲み込んでいたのです。
針山は、待ち針を気をつかわずさせるよう、高さのあるものです。そのため、待ち針を抜いたり刺したりするたびに、頭のない針が中へ中へと入っていったのでしょう。
特に和裁用の細い針は、針山に刺しておいたもののほとんどが中に入ってしまっていました。
昔ながらの裁縫箱には平べったい和裁用の針山もついていますが、いつも使うのではなく、たまに必要に迫られてさっと取り出すには、昔の裁縫箱は大きすぎ、それでなくても億劫な縫いものが、もっと億劫になってしまいます。
しかもその裁縫箱は、針山に待ち針を立てたままでは、蓋を閉じることができないのですから、手間がかかります。
しかたない、縫い針は、使い終わったら、和針と洋針に分けて、いちいち針箱にしまうことにしました。
生まれつきケチな私は、縫いものをするとき、できるだけ長い糸を通していました。
キルティングする時など、長い糸が何度も針穴で擦れるため、もろくなって途中で切れたりすることもありましたが、それでも糸を継ぎ足す手間を考えると、できるだけ長い糸を使いたい、針の穴で擦れる糸の負担を軽くするため、針を持って糸を引っ張るのではなく、糸を持って引っ張るなど、苦心して縫っていました。
ところが、30年ほど前、遊びに来ていたタイ人の友人から、
「裁縫道具を貸して」
と言われたことがありました。
それまで、他の人が裁縫をするのをまじまじと見たことがなかったのですが、見ていると、あまりにも糸を短く切るので、びっくりしました。
私が糸を100センチ以上で使うとしたら、彼女は40センチくらいで使います。
第二のショックは、数年前にヴェトナム人の友人が裁縫箱を使っているのを見たときです。
とにかく、裁縫箱の中がすっきりときれいなのに驚きましたが、使った後、針に残った糸は捨ててしまうのです。
私といえば、裁縫箱を開けたとき、以前の使い残しの糸が針に長く残っていて、しかもちょうどいい色だったりすると、
「ラッキー」
と思って、糸通しの手間が省けたのを喜んでいたものでした。
どちらも、私には全然なかった発想でした。
発想を転換して、短い糸を使えば、糸の撚りが戻ったり、もつれたり、弱くなったりする心配が少なくなるし、いちいち残った糸を捨てれば、裁縫箱の中はごちゃごちゃと混乱せず、すっきり片づきます。
目からうろこでした。
それでも、使い残しの糸は、短いものは思い切って捨てても、長いものは相変わらず残していましたが、これからいちいち針を針箱に戻すなら、残った糸は捨てるか、あるいは専用の箱にでも入れるしかありません。
母の裁縫箱に入っていたセルロイドの針箱には、使わない、頭がガラスでできている古い待ち針を入れ、裁縫箱から出して二階の展示室に収めました。
そして、ドイツ製だったか、木の針入れには、針に糸を通すときの必需品の糸通しを入れてあります。
というわけで、針山には待ち針だけになり、すっきりしました。
でも、裁縫箱の中は、まだまだすっきりしていないのです。
たくさんの糸巻きに巻いた糸、カセを一ヶ所切って束にしたままのカタン糸やしつけ糸、ちゃこや色鉛筆、鉛筆、ゴム通しや毛糸針、メジャーや竹の物差し、複数のはさみや指抜き、へら、レース、リボン、レース編みの糸、刺繍糸などなど、数年に一度も使わないものまで場所を取っています。
もう少し使いやすい裁縫箱にするためには、さらにもう一工夫がいるのですが、なかなか。
片づけは、ただ整理するだけでなく、頭を切り替えないとできないものです。
それにしても、昨年、妹が母の退院を機に家を整理したときにもらってきた、母の裁縫箱に入っていた針箱には見覚えがあります。
もしかしたら、私の学校用裁縫箱に入っていたものかもしれません。
3 件のコメント:
おはようございます。
確かに深い針刺しですね…。
もっと浅い針山でも針が沈んでしまうことありますが…。
「昔ながらの裁縫箱」が懐かしくて、コメントさせていただきました。
母が持っていた裁縫箱にそっくりで、一番上の段の奥に隠し引出しのようなものがあり、箱の端に穴も開いていました。
幼いころにその裁縫箱を出している母の脇で、何だか宝箱のような裁縫箱で遊んでたような覚えがあります。
その裁縫箱は、今は姉のうちにいます。
裁ちばさみも入って収納力は抜群だと思いますが、もち運びは不便ですね。
私は子供が学校の家庭科の時間に使った裁縫箱を使っています。きちんと閉まって持ち運びに便利で…。
しかし、私も針に糸を残しておくタイプで…、ごちゃごちゃしてます(^^;)。
Karatさん
お母上も同じような裁縫箱を持っていらしたのですね。あれはくけ台もついていて便利です。隠し引き出しも確かに楽しいし。母からもらった時はとっても嬉しかったです。
和裁だけ、しかもいつも手元に置いておくなら、あれは最高の裁縫箱だと思いますが、ボタンつけとか、ゴムの付け替えとか、あれこれいろいろだとちょっと優雅すぎますかね。
また、針山は手だけ動かして針山を見ないで待ち針を戻すので(というほど忙しくないのですが、笑)、高さのある針山がなんとなく安心です。でも、おかしいと思っていたのですが、針があんなにもぐっていたとは知りませんでした(笑)。
いつも使っている曲げ木の裁縫箱、昔の写真と比べると、何もかも増えてごちゃごちゃになっているのに気がつきます。だからと言ってすっきり片づけると、急に不便になったりすることもあるし、まあ、こんなこと一つでも、面倒というか、片づければ片づけがいもあるし(笑)、奥が深いですね。
『昔ながらの裁縫箱』、私も持っています。
祖母のものだったと思うのですが、いつどのように
もらったのか記憶にはありません。
ただ、うんと小さい頃に祖母の裁縫箱の中に入っていた小さな和鋏が(4センチくらい)ままごとのようで、欲しくて欲しくて、泣き倒して手に入れたのは憶えてます。
この鋏、今も私の裁縫箱の中に納まっています。
『昔ながらの裁縫箱』についている小さな木の棒が
何なのかずーっと謎でしたが、これくけ台に使うんですね。素敵な智恵ですねー。
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