タイ人はお守り好きです。老若男女、誰でも首からぶら下げています。
泥棒など、悪いことをする時は、お守りに見られないよう、
「ちょっとだけ、見ないでください」
と、隠してからことに及ぶという話もあります。
外国人は美術的な価値の高そうな古いお守りに目が行きますが、タイ人が注目するのは、ご利益のあるお守りです。
我が家にあるお守りのほとんどは、下の息子が友だちのチャイから餞別にもらったものです。
家族でタイで暮らしていた時、夫は仕事でアジア諸国の、時にはアフリカや南米のスラムを飛びまわり、私は居心地のいいバンコクのスラムに入り浸っていました。
ところが、インターナショナルスクールに通っていた息子たち、とりわけ下の息子のタイ人の友人の親たちは、タイ経済をけん引するような財閥ばっかりで、息子は休日ごとにリゾート地にある親の経営するホテルに誘われたり、高原の牧場に誘われて馬に乗ったり、ときにはシンガポール旅行に誘われたりと、まことに優雅な暮らしをしていました。
中でも、チャイの家は、どこかの国からタイに贈られたシロクマを、動物園では経費がかかって飼いきれなくなったので、自宅に引き取ったというほどのお金持ちでした。
このお守りには、高僧のお姿が写されています。
よくはわかりませんが、高僧のお守りは、簡単に手に入るというものではなく、お寺でたくさんの喜捨をして初めて手に入るもの、しかもそんな高僧には、一般人は一生お目にかかれないようなものだと思われます。
が、いかんせん、そのあたりにはまったく疎く、なにもわかりません。
お守りは、首にかけないなら、仏像同様できるだけ高い場所に置いておかなくてはならないと思い、普段は神棚に、小さな甕に入れて置いてあります。
高僧のお守りの裏はこんな感じです。
仏陀のお守りもあります。
裏には、装飾文字で仏像の姿を表してありますが、読めません。
何かの記念日につくられたものか、王さまのお守りもあります。
そういえば、何かのパレードで、チャイのお父さんが王さまに大型のロールスロイスを貸したという話もありました。
プンミポン国王陛下のお守りの裏には、
ラッタナコーシン王朝の、歴代すべての王、ラーマ一世からラーマ八世までが描かれています。
この、おがくずを固めてつくったような、首からかけられないお守りだけは、シンポジウムのために日本にいらっしゃったプラパチャック師が、水戸で殺人罪で裁判中だったタイ女性たちに会うために、つくばにあった我が家に一夜お泊りになったとき、私がいただいたものです。
プラパチャック師は、森林を伐採から守るために果敢に活動されていたお坊さまですが、暗殺の脅威も日常的で、長い活動で力尽きたのか、日本にいらっしゃってから確か一年もたたないうちに還俗なさいました。
タイでは、どんなに長い間僧門にいても、どんな高僧でも、チーオン、衣が熱くなったと感じたときに還俗することは、よくあることです。還俗することは、僧門にとどまって戒律を守らなかったりするより、ずっといいことなのです。
さて、これをいただいた時の師のお言葉は、
「これは、売ってはだめだ」
「はい、尊師」
神妙に答えましたが、えっ、売るわけないでしょう!
いったい誰が買う?
ともあれ、あれから二十年くらい経ってしまいました。タイの新聞を目にすることもなくなったので皆目わかりませんが、元プラパチャック師でいらした方は、今もお元気でしょうか?
タイ僧門の戒律では、お坊さまたちは地上の生き物をうっかり踏みつぶさないよう裸足で歩きます。でも、今ではお坊さまたちもそれを守っているのは朝の托鉢時だけくらいですが、プラパチャック師は切り株などの多い森の中でもいつも裸足で、日本にいらしたときは肌寒かった時だったと思いますが、裸足で歩かれているのが印象的でした。
さて、別れてから三十年も経った息子の友人たち、今ではバリバリの経営者たちですが、中には人気歌手から映画監督になった子もいます。こんな消息が知れるのは、facebookのおかげのようです。
私たち家族も、お守りのおかげかどうか、元気に過ごしています。
2 件のコメント:
プラクルアンは、高いものは、億までありますよ。
その形は、ソムデットという形。
形は一応、アンティークでは、一番高いクラスのものですね。
はてさて、ロマンですねー。
匿名さん
コメントありがとうございました。
コンピュータが使えない状態で、すっかりレスポンスが遅れてしまいました。お守りについてはまったく知識がありませんが、現在は神棚、これまでも腰より高いところに置いてきました。
タイに住んでいたときはアンティークのお守りも見かけましたが、自分で価値がわからないものには近づかないほうがいいと思い、避けてきました。今デンマークにいて、ヴァイキングの銀細工とか琥珀を見かけると、友人が「これ見て見て」と言いますが、私はすっかり海岸の石ころにはまっています(笑)。
石ころにも、尽きぬロマンが詰まっています。石を見ていると、「デンマークに来てよかった」としみじみ思います。
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