2022年8月1日月曜日

給食の話

孫のはなちゃん、東京から越してきて、4月から八郷の中学校に入ったのですが、
「給食がまずい」
というのが、最大の不満でした。はなちゃんは文京区の小学校に通っていたのですが、小学校では給食がとてもおいしかったそうです。文京区では学校ごとに給食をつくっています。それに対して、八郷の小中学校では給食センターで給食をつくっています。


給食がまずいと言っていることについて、市の方にお話する機会があったのですが、その方のお話では、定期的に開かれている茨城県の県南の給食の食べ比べ会においては、八郷の給食は近隣の地域に比べて美味しいとの評判だとのことでした。ということは、東京の小学校と八郷の中学の給食のおいしさの差は、学校でつくってつくりたてを食べられるのと、給食センターでつくって運ぶのとの違いだろうと、そのときは理解しました。
そのうち、はなちゃんが、
「牛乳は八郷の給食の方がずっと濃くて美味しい」
と言いだしたので、我が家で給食の話題は、沈静しました。


さて、私の好きなラジオ番組『安住紳一郎の日曜天国』の7月31日のゲストに、文京区立の小学校の管理栄養士の松丸奨(すすむ)さんが、出ていらっしゃいました。
松丸さんは小学生に入学したときは、学校給食が食べられませんでした。それが先生からの、
「一口学校給食を食べたら、これまでできなかったことができるようになるよ」
という一声で、逆上がりなど苦手なことができるようになるたびに、
「給食のおかげだ」
と思っているうちに給食が好きになり、やがて高校生になり、進路を選ぶときには、
「大好きな給食を職業にしよう」
と栄養士になった方で、最高においしい給食をつくろうと日夜腐心していらっしゃいます。
2013年には学校給食甲子園(総参加数2266校)で優勝されました。学校給食甲子園は、地場食材の活用をテーマにした、実技もある競技会なのですが、大都会の東京は地場食材という点では圧倒的に不利、そんな中で松丸さんは江戸東京野菜に行きあたり、のらぼう菜を使って優勝されました。


松丸さんのお話では、文京区では給食にハンバーグやコロッケなど、加工食品を使うことができません。プリンが欲しければ自分でプリンをつくり、揚げパンが欲しければ揚げパンを揚げるしかないそうです。そして、給食はカロリーも予算も決まっています。その中で、いかに美味しい給食をつくれるかが、面白いところだそうです。
松丸さんの勤務先は文京区の小学校ですが、それ以前は池袋の学校に勤務されていました。池袋は美味しいラーメンの激戦区です。そのラーメンを給食で越えようと、松丸さんはおいしいラーメン屋を食べ歩き、ラーメン屋の裏口をのぞき、だしに使う昆布の、名入りの段ボール空き箱を見つけて、それを頼りに発売元に連絡を取りました。
給食では予算の制約があるので、名のある材料は変えません。ところが、有名な「羅臼昆布」にしても、境界線があって、ある浜から外は「羅臼昆布」とは名乗れない。そんな浜で採れた、品質は同じ、だけどノーブランドの昆布を安く手に入れることができて、とうとう、有名店を越えるような美味しいラーメンを学校給食で出すことに成功したそうです。


はなちゃんが美味しいと言っていた給食の裏側には、松丸さんのような人たちのたゆまぬ努力があったのです。

あるとき、松丸さんが2年生の男の子に、
「明日は揚げパンだなぁ」
と声をかけたら、大喜びしているだろうと思ったのに、
「腹にもたれるんだよなぁ」
と、おじさんみたいな感想を言われ、揚げパンをなんとなく揚げていたことに気づきました。それから1か月、毎晩自分の台所でたくさんの鍋を並べて揚げパンを揚げ続け、とうとう200度で1分10秒が一番おいしいと適正な時間と温度を見つけ出し、徹底してそれを守りました。
後日、揚げパンが腹にもたれると言っていた男の子に、
「揚げパンはどうだ?」
と訊いたら、
「美味しい」
と言ったそうでした。

すごいなぁ、600食もの給食に精魂を込める姿勢、数人の食事に、いかにして手を抜こうかと考えている自分の生活が恥ずかしくなってしまいます。
というわけで、はなちゃんが子どもにしては舌が肥えているというわけではなく(子どもはみんな舌が肥えていますが)、松丸さんのような人に支えられて、文京区の給食の質が高かったことがわかりました。
病院では3食あり、保育園ではおやつがあるのに、小中学校の給食は1日1食、そこにすべてをかけられるところが、学校給食の醍醐味だそうです。
参りました。








2 件のコメント:

hiyoco さんのコメント...

前にも話した気がしますが、藤沢市も小学校は各学校で手作り、食材は極力藤沢産のものを使うようになっています。スープは骨から取り、春巻きはひとつひとつ手巻き。隣の鎌倉市から転任してきた栄養管理士の方が驚いていました。早く出来上がるのもだめだそうで、火を入れるのは11時○○分からと決まっているそうです。
去年の学校給食甲子園の優勝校はひたちなか市立の学校でしたよ(笑)。1日1回こだわったご飯があるのはいいですね。大抵のお母さんは手を抜くことを考えると思うので(苦笑)。

さんのコメント...

hiyocoさん
わぁ、藤沢市も給食は美味しいのですね。全国で60%の公立学校が、給食センターではなくて学校別に給食をつくっていて、加工食品の使用の有無などは市や区ごとに決めているそうです。
生徒の人数にもよるのでしょうけれど、学校ごとの給食は楽しそうですね。給食前に学校中にいい匂いが流れるのも、給食の一部だそうです。私は脱脂粉乳がトラウマになった世代で、給食室から流れてくる匂いも嫌でしたが(笑)、美味しい学校給食がずっと思い出になるって素敵なことです。
ひたちなかの小学校の献立を見てみました。さすが、茨城は日本でも有数の食料自給率が高い県なので、献立の材料には事欠かないですね。干しいもとちりめんじゃこの混ぜご飯とか、奥久慈しゃもとれんこんのかみかみソテー、茨城彩り野菜とさくらたこの梅香さっぱりあえなどなど、茨城の食材のすごさを見せつけるような献立でした(笑)。