2022年8月16日火曜日

木の海老


 宮城県遠刈田の木地玩具の海老車です。


引っ張ると、髭が出たり入ったりします。


その細工をするため、胴体と頭は別につくり、頭の中は刳り抜いて細工をしてから接着しています。
『日本の木地玩具』を見ると、1960年代、遠刈田では佐藤文助さんと作田栄一さんが海老車をつくっていらっしゃったようですが、その後、それぞれの後継者(息子さん)たちも海老車をつくられたようです。
作田家の海老車はお腹が白いので、お腹が白くないこれは佐藤家でつくられたものかと思いますが憶測の域、定かではありません。


それに、お腹には「小形」と書かれています。小形さんという木地師さんはいらっしゃらなかったようなのですが。
遠刈田はかつて、木地玩具づくりの盛んな地域で、東北地方の中でも、もっとも盛んと言われていました。戦後、こけしにはブームが来ましたが、動くおもちゃの木地玩具は、ブリキやプラスティックなどの工場製品に押されて、あまり見向きもされませんでした。


海老車は、じつは遠刈田オリジナルではなくて、神奈川県の小田原の動物玩具を手本としてつくられたものとされています。土であれ、張り子であれ、郷土玩具には他の地域のものを写して、それをその地のものとして発展させたものが、数多くあります。それは、自分もつくってみたいという好奇心と、地元の子どもたちにもこんな玩具を与えてやりたいという、親心だったと思われます。

遠刈田の、引っ張って遊ぶ動物玩具はほかに、虎、鶴、兎、馬、犬、アヒル、バッタなどがあり、それぞれ首を動かしたり、舌を出入れしたりしますが、私的には、虎と海老がとくに造形的に優れているようで、好きです。


我が家の海老たち、点滴チューブの海老素焼きの海老、そして木の海老です。

1980年代の半ばに、バンコクに行った帰り道だったか、家族で台湾のRさんを訪ねたことがありました。空港に出迎えてくれたRさんは、竹で編んで、竹の先にぶら下げた海老を2つ手に持っていました。私のおもちゃ好きを知っていたのです。
竹の海老は大切にしていたのですが、カンボジアに赴任していて留守をしていた間に、息子が飼いはじめた子犬のアルシが齧って壊してしまったとか、帰った時には捨てられて、もうありませんでした。





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