寝室の床に屑籠が転がっていました。
ロボット掃除機の仕業です。何かをちょっと引っかけると徹底的に攻める、というかあがけばあがくほど絡まって逃げられなくなり、部屋の隅からここまで引っ張ってきてしまいました。
掃除機は、やっとのことで脱出したのでしょう。紐が切れていました。
この籠は、ラオスの少数民族の(おそらく)ラフが編んだもので、いろいろな太さのラタンを、太く裂いたり細く裂いたりして使い分け、場所によっては丸のまま使ったり、半分に割って使ったりして、細かく丁寧の編んでいます。
そして紐は、何ヤシかはわかりませんが、ヤシの繊維で綯われているようです。
ラオスには、約50の民族グループが暮らしていますが、それぞれの民族名では呼ばず、ラオルム(低地ラオ人)、ラオトゥン(山腹ラオ人)、ラオスン(高地ラオ人)の3つに分けられています。
底のつくり方もお見事、板を足すことによって、少々乱暴に扱っても籠部分が傷んだりしません。
紐はどう直していいかわからず、ただ結んでおきました。
これまで、屑籠の紐を引っかけたことはなかったので、しばらくは、置くときの向きを気につけながらこれを使い続けてみます。もっとも、この場所の屑籠は、もう少し小さいものでもいいのですが、すると軽いのでますます掃除機に攻められてしまいます。
さて、ラタンにはいろいろな種類があるのは知っていますが、いったい何種類くらいあるのでしょう?
手持ちの、『熱帯の有用植物』、『ヤシの生活誌』、『FOREST TREES of SOUTHERN THAILAND』などなど、載っていそうな本をひっくり返してみたけれど、簡単に触れたり、触れていなかったり、詳しい記述がありません。
ではと、ネットで学名の「Calamus rotang」でも調べてみてもたいして書かれていませんでしたが、ダメもとで、「トウ」でウィキペディアで見たら、やっと見つかりました。トウ台下暗しでした。
ラタンとは、ヤシ科トウ亜科の植物のうちでつる性の茎を伸ばす植物の総称ですが、13種類、約600種類あるそうです。私は生えているのは4種類くらいしか見たことがありませんが。
かつては籠だけでなく、家具にもよく使われ、日本にも早くから輸入され、かつてはどこででも見かけるものでした。とくに三つ折れ寝椅子は、私が育った家にもあったし、親せきの家にもあったし、旅館にもありました。
祖母が大正時代の初めに初月給で買ったというミシンの椅子は、曲木にラタンの座面が張ってありました。この椅子の座面は、夫が踏み台代わりに乗って踏み抜いて(この上に立つなんて、ありえない!)、20年ほど前に機械編みのものと取り替えてもらったものですが。
ラタン細工は飛行機の内装にも使われるなど(どんな形にもつくれて軽いから?)、ついこの間まではありふれた素材でしたが、熱帯多雨林の消失や採集に手間がかかることなどから、消えつつあります。
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