織物教室は、先生亡き後わからないことだらけですが、堂々巡りしたり、停滞したり、気を引き締めもせずに、最後の弟子の3人で、のんきに続けています。
Kさんは、教室に来たのは私と同じころですが糸紡ぎ歴が長く、細くて均一な素敵な糸を紡ぎます。先日は、こげ茶色の羊毛を紡いで、あまりにも糸がきれいなので、1色で模様織りにしたらということになりました。
ところで、Kさんは先生存命中には平織りの布を1枚織っただけ、亡き後もう1枚織りましたが、それは先生である近藤さんが糸の計算しておいてくれたもので、自分ではどのくらいの量の糸を紡いだらつくりたい大きさのものに足りるか、どう整経(せいけい、織り機に経糸(たていと)をかけること)したらいいのか、Kさんも私も習っていないのです。
私は、ずいぶん前にノルウェーで織りものを習った先生に織物を習ったことがあるのですが、それは糸紡ぎより織りに重きを置いた教室で、基本はノルウェーの市販の糸で織ったので、自分で紡いだ糸の計算はちんぷんかんぷんです。20グラムで30メートルに紡いだ糸と、20グラムで40メートルに紡いだ糸、あるいはいろいろな太さが混じって紡いだ糸(私はいつもこれ)を、どの太さの糸を経糸にしてどの太さの糸を緯糸(よこいと)にするか、それによって、全体の使用量や経糸の密度を計算をしなくてはなりません。
それは糸さえ大目に紡いでおけば適当にごまかせるとして、どれも平織で織るのではなく、いろいろな織り方で織りたいとしても、Kさんには経験がないのでどこから手をつけていいのかわかりません。ところが、私がかつて習った織物教室では、織物がどうやってできるか、まず組織図を描くことから習ったので、少しはKさんに伝えることができます。
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灰色に見えるけれど実物は漆黒 |
というわけで、1色で織るならと、その昔、タイのスリンの織物屋さんで手に入れた、平織りと綾織りの混じった絹織物を出してみました。スリンの村のクメール系の女性たちが、蚕を飼って生糸を紡ぎ、その糸を木の実で黒く染めて、手織り機で織ったものです。
レンズで覗いて見ると、織り目の細かさに改めて感動、目を拾うのが精一杯です。
Kさん自身が織り方を組織図に起こさなければ、いつまで経ってもわからないのですが、Kさんに伝える前にと、試しに私が組織図に起こしてみると一模様が思ったより、大きいものでした。
これでは経糸を上げ下げするために綜絖と結んだ踏み木の踏み方が複雑になるので、もっと単純な織り方を選ぶ必要がありますが、乗り掛かった舟なので、この組織図を完成させることにしました。
経糸(たていと)が見えるところを黒でまずマークして、それから定規で線を引き、塗りつぶすのですが、目がチカチカして、ちょっと油断すると間違えてしまいます。
「あっ、線が曲がった。何だ、物差しが切れている!」
これでは、まっすぐな線が引けません。プラスティックの物差しでカーターを使った人は誰なのか、想像がつきます。
右下あたりの一部だけ、塗りつぶしてみました。全部塗ったら、右下に描いたタイアップから、筬への経糸の通し方(左下)と、踏み木を踏む順番(右上)を描き込まなくてはなりません。
タイアップとは、4枚の綜絖と6本の踏み木をつないだ図で、教室のKさんが使おうとしている織り機はこのタイアップになっています。踏み木を踏んだら、黒く塗りつぶした綜絖が上がるので、織った布の経糸が見えるという仕組みになっていて、真ん中の2本(3と4の踏み木)だけを交互に踏むと平織りができ、いろいろ順番を変えて6本を踏み変えるこ変えることで、無限の模様ができます。
おそらく、こんな単純な織り方に落ち着くのではないかと思われます。
これだと枠で囲って赤く塗ったところが一模様でその繰り返しなので、綜絖通し(左下)は1、2、3、4と単純な繰り返しで、踏み木(右上)も6段の踏み方を繰り返すだけなので、いちいち組織図を確認しないで、そらで織ることができます。
ちなみに、スリンではどうしていたのでしょう?
平織りの綜絖は2枚だけですが、そのほかに模様綜絖を用意して、綾織りを入れるときだけ模様綜絖を使って織っています。
さて、教室では暮れから綴れ織りを続けています。持ち運べる織り機をみんなでつくったので、どこででも織れて、細切れの時間も利用することができる、はずでしたが、家ではほとんど手をつけることがなく、なかなか進みません。
みんなで1枚ずつ織って、こんこんギャラリーで売ってもらって、近藤さんが残した猫のくりちゃんの餌代の一助にしてもらうつもりでしたが、今年に入ってくりちゃんが旅立ってしまい、はっきりした目標がなくなったので、なかなか織り進まないのかもしれません。
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