2025年3月15日土曜日

イスラエルとパレスチナ


3月13日に、ユダヤ系デモ隊の数百人が、8日に「反イスラエルデモを主導した」として移民当局に拘束された、アメリカ永住権を持つマフード・カリルさんの釈放を求めて、ニューヨークのトランプタワーのロビーに座り込み、うち98人が逮捕されました。
ユダヤ系で反シオニスト団体の「平和のためのユダヤ人の声」は、
「ファシスト政権がパレスチナ人や、アメリカの資金提供によるイスラエル政府のパレスチナ人虐殺の終結を求める全ての人々を犯罪者として扱おうとするのを、黙って見過ごすつもりはない」
とXに投稿しています。


ちょうど、岩波ブックレット『イスラエルとパレスチナ』(ヤコヴ・ラブキン著、鵜飼哲訳、2024年)を読み終えたところで、どうまとめて伝えようかと考えていたところでしたが、一人でも多くの人にこの本を手に取って読んでもらいたいと思い、日本語版に向けた序文を、そのまま書き写すことにしました。

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日本語版への序文

 本書の日本語版の出版準備が進んでいる今も、イスラエルはパレスチナに対する戦争を、主にガザで、だが別の場所でも続けています。植民地主義的なシオニストの夢は一貫して、相互の尊重に基づく共存と平和を求めることよりも、パレスチナ人を丸ごと厄介払いすることでした。11ヵ月近く、世界が見ているにもかかわらず、イスラエル軍は何十万人もの民間人を殺害し、障がい者にし、飢餓にさらしています。
 イスラエルは世界の世論を鼻であしらい、国際司法裁判所を含めて国連を見下しています。イスラエルの不処罰は米国の公然たる共犯が主要な原因です。米国が供給する武器や爆弾がジェノサイド犯罪に使われています。米国の覇権下にある日本を含む他の国々は、ロボットと電子戦争用の機器を含む武器をイスラエル軍に供給しています。この死の氾濫の期間を短縮するという、熱意に欠けた約束は、たいていの場合、その歴代政府が自立的な外交政策を長らく放棄してワシントンに従順に追従してきたこれらの国々の世論の憤激を懐柔しようとしているにすぎません。
 イスラエルがジェノサイドを行えていることに二番目に大きな責任を負っているのはドイツです。ドイツはイスラエル支持を国是に格上げしました。米国の政策がイスラエル・ロビーに牛耳られているのに対し、ドイツはユダヤ人とイスラエル、ユダヤ教とシオニズムの混同に基づいて行動しています。この混同はドイツで、しかしまた他の至るところでも、政治家や共犯的なメディアによって公衆の頭に叩き込まれています。
 本書は日本の読者がステレオタイプを振り払い、どうして大勢のユダヤ人がシオニズムを拒絶し、イスラエルを非難しているのか理解する助けとなるはずです。卓越したラビ(注:ユダヤ教の指導者)たち、傑出した知識人たちははるか以前から、ユダヤ人国家という思想そのものを、ユダヤ人とアラブ人にとって等しく命取りになりかねないものとして断罪してきました。ユダヤ人国家はさらに、世界にとっての危険でもあります。なぜならイスラエルは核保有国であり、シオニズム・アパルトヘイトの基本原理を放棄するくらいなら、自国も、周囲の全ても、破壊することを辞さないでしょうから。
 イスラエル軍が犯している蛮行が日々ニュースで伝えられるなか、異常なことが正常になってしまっています。多くの人がこれを受け入れているのは、大量虐殺、民族浄化、ジェノサイド等、どのように形容されようともおぞましいことに変わりないこの事態を、ユダヤ人の過去の苦難と結びつけているからです。しかしパレスチナ人を一世紀にわたり虐げてきたことで、犠牲者だったユダヤ人は無慈悲なイスラエル人になりました。日本の市民が国家として、社会としてのイスラエルをよりよく理解することができるようになるのは、現実を見えにくくし、犯行を免罪する不明瞭な概念である「ユダヤ人国家」と、イスラエルをもはや見なさなくなったときです。そのとき初めてイスラエルは、他の任意の国と同様、やったことに即して、判断されるようになるのです。

2024年8月      ヤコヴ・ラブキン

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イスラエルでは、パレスチナ人だけに向けられた矛先はユダヤ人市民に対しても拡大されています。ある歴史の教師は、イスラエル人による爆撃の犠牲者の名前を何人か公表しただけで逮捕されました。
この本には、暴力の先には絶対平和がこないことが、わかりやすく書かれています。

先日ラジオで、生産と市場をを考えるとき、武器が最も永続的に儲かるものであることが話されていました。自動車などは、行きわたれば頭打ちになるけれど、武器は戦争さえあればどんなに高額な戦闘機であれなんであれ、一瞬で破壊され、次が必要になるというのです。そして、日本も武器製造に、堂々と舵を切りたいのだけれど、日本学術会議がそれに賛成しないので、政府は圧力をかけていることが話されていました。
私たちは、戦争には加担していない、他岸のできごととのんきに構えていますが、実はすでに加担しています。経済の論理に押されてもっと激しく巻き込まれないよう、少なくても考えながら生きたいと思います。





4 件のコメント:

かねぽん さんのコメント...

おはようございます。
いつもながら、よくぞ言ってくれましたと思います。
なかなか真実が伝わらないのは、マスコミやSNSが自分たちにとって都合の悪い主張を抑え込んで世論を操作しているせいもあるかと思います。今や自分のブログが最後の牙城なのかも知れません。
僕の好きなピアニストで、指揮者としても超有名なダニエル・バレンボイムさんは、イスラエル人でありながらパレスチナに対する非人道的行為を批判しつづけていて、イスラエル人とアラブ人が共に演奏する「ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団 」を立ち上げて活動を続けています。
イスラエル人にもまだ善良な人が残っているのです。

さんのコメント...

かねぽんさん
ありがとうございます。この本には、何故正当な意見がかき消されて世に伝わってこないかも詳しく書かれています。
著者のヤコヴ・ラブキンさんはソ連生まれですが、イスラエルでも数年暮らしています。今上映されている映画『NO OTHER LAND』は、イスラエル軍による破壊と占領の現状を、カメラに収めて世界に発信することで占領を終結させて故郷の村を守ろうとするパレスチナ人青年と、彼に協力しようとその地にやってきたイスラエル人青年2人による決死の活動を、2023年10月までの4年間にわたって記録したドキュメンタリーですし、私の知っているパレスチナの男性も何度かイスラエルに投獄されて拷問も受けイスラエルを心底憎んでいましたが、縁があってユダヤ人女性と結婚、イスラエルにい続けることはできませんでしたがアメリカに渡って幸せに暮らしています。
お互いを知り、思いやり合えば共存できたのに、どうして平和裏に共存できなかったのか。一部のシオニストの暴走が、ナチによるユダヤ人虐殺より多くのパレスチナ人を死に追いやってしまったこと、今も続いていること、それを私も含めた人たちが許してしまっていることが残念でなりません。

anton さんのコメント...

私も、ちょうど先日、映画「NO OTHER LAND」を観てきました。米国では、この映画のことさえメディアが伝えないという現実もあったと。それでも、今年のアカデミー賞で長編ドキュメンタリー大賞を受賞したこと、少しくホッとしました。淡々と描かれていましたが、一軒一軒ブルトーザーで壊されていく我が家。ほんの少しく前に自分たちも辛い体験を民俗としてしたはずなのに。こんなことを、、、と。パレスチナで医療支援をしている若き友人から、この映画のこと薦められて。「パレスチナのこと、多くの人に関心を持って欲しいから」と。

さんのコメント...

antonさん
コメントありがとうございます。
レイシズムと植民地主義の重い過去を持つ国々が今なおイスラエルに加担、皆殺しを続けていること、残念でなりません。
『イスラエルとパレスチナ』のあとがきに、詩人エメ・セゼールが1955年にヨーロッパ的人間に差し向けた告発が今なお生きているという一節があります。
「彼(ヨーロッパ的人間)が赦さないのは、ヒットラーが犯した罪自体、つまり人間に対する罪、人間に対する辱め自体ではなく、白人に対する罪、白人に対する辱めなのであり、それまでアルジェリアのアラブ人、インドの苦力、アフリカのニグロにしか使われなかった植民地主義的やり方をヨーロッパに適応したことである」
パレスチナ人やアジア人は今なお、白人からは人間とは思われてないのです。