2018年4月9日月曜日
モシの家、ロビの家
ほかの本を探していたら、『サバンナに生きる』(川田順三著、くもん出版、1995年)が目に留まりました。
ぱらぱらっとめくってみて、読んではいないし、写真もじっくりとは見ていなかった本だと気づきました。購入当時は、カレンダー制作にかかわっていたこともあり、日ごろから、カレンダーに使える写真がないかと探していたので、その視点だけで見たものだったのでしょう。カレンダーには、一か月見ても見飽きない写真が12枚と表紙用の、合計13枚必要で、日ごろから心がけていても、なかなか出逢わないものでした。
さて、『サバンナに生きる』は、文化人類学者の川田順三さんが、30年にわたってかかわったブルギナファソのモシ人を中心に、周辺の西アフリカの人々の暮らしを、ご自身で撮られた写真と文で綴られた本です。
あらためて見たり読んだりしてみると、農作業、糸づくり、機織り、土器づくり、鍛冶、籠づくり、家づくりなどなど、サバンナの日々の暮らしが文化人類学者の視点で捉えられ、論じられているのが面白くて、数日、読みふけってしまいました。
かつて日本人で、アフリカのことを、書物で得た知識としてではなく実際に経験したこととして書いた本は、彼の著書くらいしかなかったころ、『サバンナの博物誌』(新潮選書、1979年)や、『サバンナの手帖』(新潮選書、1981年)は、得難い本でした。
もっとも、『博物誌』の方は、朝日新聞連載で読んで、本になっても読みましたが、『手帖』が出たころは、初めて知った東南アジアの魅力に夢中で、斜め読みしかしませんでしたが。
『サバンナに生きる』の写真の中から、モシ人たちが、円形の家を建てるところを紹介してみます。
モシは円形つなぎの家をつくります。円形つなぎの家は、屋根の下には間仕切りをつくらない個室で、子どもは母親と同じ部屋に住みますが、男の子は大きくなると、新しく自分の部屋を持ちます。
家づくりは、まずコンパスで、地面に丸を描くことからはじめます。
土に枯れ草を刻んだものなどを混ぜて、よくこね、積んでいきます。乾いたら、またその上に積みます。乾燥地帯ですからすぐ乾き、約二週間ほどで壁が出来上がります。
日干し煉瓦をつくって積むのは、モスクのような大きな建物だけで、小さな家はこうやってつくります。
十分な高さになったら、壁の表面を土で塗って平らにして、その上に、木の枝で屋根を乗せるための骨組みをつくります。
個室は、人が減ったり増えたりするたびにつくったり、取り壊したり自由自在です。
屋根は、イネ科の草を「扇形」になるように編んだものを、広げながら葺いていきます。そして、てっぺんにひょうたんや、古い土器など乗せたら完成です。
円錐形の屋根は、雨季の豪雨を耐え、強風にも強くて飛ばされない構造です。
民族グループによって家の形が違うのは知っていましたが、川田さんによると、気候風土による違いだけでなく、その気質などによっても、形が違ってくるようです。社会が穏やかなモシと、わりと血の気が多いロビでは家の考え方もつくり方も全然違って、ロビたちは要塞のような家をつくります。
別の地域ではなく、わりあい近くに、丸い家と四角い家が混在しているのも、よく見かけました。
ロビの家については、我が家の古ぼけたアルバムの中にも、もう色も消えかかった写真があります。
これは大きな家、というか集合住宅で、ロビの家は一か所を閉じれば、中に入れなくなります。
囲いの中に道や、屋根のない中庭もあります。
外壁から遠い家は、いったん他人の家の屋上に上がって、他人の屋根づたいでないと自分の家の中庭にたどり着けません。屋上から中庭に降りるはしごは、いつでも外せるような、丸太を刻んだもので、お年寄りなどには大変だと思ったものでしたが、慣れれば何でもないのかもしれません。
カラー写真は、年月を経てぼやけてしまいましたが、家の向こうに、穀物が大きく育っている畑が広がっているので、季節は雨季です。
屋根が平らな家の屋根に開けた明り取りには、雨季の間は焼き物などを被せて、雨が室内に入らないようにします。
平屋根ですから、水が逃げるよう、雨トイはしっかりつくってあります。
手前が、雑穀畑です。これは、シコクビエでしょうか。
乾季のサバンナは遠くまで見渡せて、道がなくてもどちらにでも行けますが、雨季になると景色は一変して、シコクビエだと遠目も効きますが、ソルガムの畑では道の両側に背より高い壁ができて、いったい今どこにいるのか、周りに何があるのか、皆目見えなくなってしまいます。
我が家にある、サバンナのかけらです。
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2 件のコメント:
見ていると自分も土で家つくりをしたくなるような...そんな風景ですね。円錐形の屋根も風に飛ばされない工夫、なるほどです。雨樋の素材は何でしょうね、ここには竹などは生えていなさそうですし?木製なのかな。
hattoさん
雨どいは木を刳り抜いたものだったと記憶しています。この写真は丸く見えていますが、半分に割ってから刳り抜いていたような。やきもので土管みたいなのをつくっていたかなぁ?市場で売っていれば需要がありますね。
あんなに激しい雨のところで平たい屋根にするなんて、おもしろいです。モスクのように土でとんがり屋根にすることも可能ですが、それでは、つながった集合住宅にすれば雨仕舞が大変だし、屋根の上を歩けません。
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