八郷には、水車を使って百年前と同じ方法で、杉の葉のお線香をつくっている方が今でもいらっしゃいます。また、かつては水車で脱穀、水車で陶土をつくるなどなど、筑波山から流れ出る水はいろいろなことに利用されていました。水力発電を起こそうとした方さえいらっしゃったそうです。
GTさんは、15年ほどにわたって、『八郷町民文化誌・ゆう』を編纂、発行し、さまざまな角度から、「八郷の文化」に、光を当てていらっしゃった方です。
そんな二人の話を、数日後には有機農業の勉強のため、オランダの大学院へと旅立つシャントヌが聞いていました。そして、水車を見てみたいというので、訪ねてみました。
水車は、思ったより大きいものでした。
複雑に組んでつくってあります。
GTさんのお話では、八郷には今でも水車をつくれる大工さんがいて、八郷だけではなく、近隣の地域の水車も、つくったり修理されたりしているそうです。
水量は、思ったよりわずかでした。
あとでわかりましたが、このときは水車は回っていましたが、水車小屋の中の、杉の葉を粉にする装置は止めてあったので、水量も最小にしていたようでした。
水車を回す水は、家の脇を流れている谷川の上流から引き込み、最後のところは木管を使って、水車の上に導いています。
これは、上流から、水車の方を見たところです。
木管の水路は15メートルほどでしょうか、それより上流は、掘って石やセメントで固めた水路です。
谷川の水量は一定ではありません。土砂降りの雨が一気に流れて増水することもあれば、少ない時もあり、また風で折れた枝などが大量に流れてくるときもあり、それらの現象に対応できるよう、さまざまな工夫がされています。
何ヶ所かで水量の調節ができるようになっていますが、これは木管がはじまったところの水流変更弁です。
その日は水車小屋の中の杵を止めていたので、最初に見た時はこのように、水車には最低限の水しか行かないように、板で堰をつくっていて、ほとんどの水は谷川に戻していました。
そして、あとで杵を動かして見せてくださったときは、この堰板を動かして、もっと木管に水が行くようにしたので、水車もより早く回っていました。
上流の、取水口です。
ここから水路がはじまり、奥に見えるのは谷川です。
ここでも水量を調節すると同時に、左の水車への方向にはゴミがいかないよう、フィルターがはめ込んでありました。
取水口からの帰り道、水車のある建物の方を眺めたところです。
傾斜になった地形に、筑波石が、ごろごろとあります。
五代目の駒村さんが、いろいろ説明してくださいました。
右に見える、壁のない建物では、水分の少ない冬場に採った杉の葉を保管し、乾燥させています。
杉の葉は、樹齢50年以上のものが最適だそうです。
杉の葉のお線香には、緑の染粉は入っていますが、それ以外は一切添加物は入っていません。お線香は檜の葉などでもつくれるそうですが、粉をまとめるためのつなぎを入れなくてはなりません。つなぎを入れなくてももつくれるのは、杉の葉だけだそうです。
また、関東以西の暖かい地方の杉の葉では粘りが足りないので形がつくれず、関東以北の寒い地方の杉の葉では粘りが強過ぎて具合が悪く、関東あたりの杉の葉が一番いいそうです。
自然乾燥させた葉は、まず水車小屋の中にある粉砕機で、小さく刻みます。
これも動力は水車です。
それをここで粉にします。
右奥に林立している棒が、すべて杵になっていて、大きな歯車の軸棒についている出っ張りで押し上げられて、落ちて、杉の葉を粉にします。
大きな木の歯車は、水車以上に素敵でした。
手前三本の杵の高さが、奥の杵の高さとは違うのが見えます。
この日は、手前の三本だけ動かして、実演してくださいました。
使わない杵は、紐で吊っておくことによって、水車がずっと回り続けていても、働かないようにすることができます。
作業場では、できたお線香を束にしていました。
お線香を一列並べにして、目印をつけた棒で幅を計り、手際良く束にしていきます。
お盆直前ですから、一番忙しい時かもしれません。
こんなお線香をつくっているのは、たぶん、ここだけです。
水を引いて、流れもあり築山もある庭が素敵に手入れされていたので、いつも庭の手入れでは苦労している私は、思わず、
「庭の手入れが大変でしょう」
と、間抜けなことを訊いてしまいました。すると、
「手を掛けるのが大変なんて言っていたら、こんなことをしてお線香をつくりませんよ」
と言われてしまいました。
もっともなことでした。
杉のお線香は優しい匂いがします。
4 件のコメント:
宮崎では、線香の材料に使うタブの葉を集めて、子どもの頃におこずかい稼ぎをした、という話を聞いていました。地方で、使われた植物が違うのですね。
mmerianさん
ネットで見ると、タブの葉の粉はお線香の粘結剤として使ったようで、主成分はやはり杉の葉だったようです(http://www.yabegawa.net/dounload/paper/5-3senkou.pdf)。
ここは、杉ならちょうど粘結剤の要らない気候だということで、タブの葉は必要なし、子どもたちは小遣い稼ぎができませんね(笑)。杉の葉にも、個体によって、よいのとそうでないのがあるそうです。
水車で粉にすると、熱を持たないので、香りが飛ばないそうです。とてもゆったりした気分になるお線香です。
水車線香、楽天で売っていますよ。いかがですか(笑)。http://item.rakuten.co.jp/suisuisya/nk011/
お線香、杉の葉のみで作られているとは、、、。機会があれば購入して焚いてみたいです。香りがとても気になります。淡路島なども線香つくりが有名ですが、こちらでもこんなに手間をかけて、丁寧につくっているお線香があるのですね。ずっと継続していってほしいですね。
hattoさん
五代目の駒村さんが、「みなさんに支えられて」とおっしゃっていましたが、水車をなおしたりつくったりする人、杉の葉を集める人、お客さんなどあってのお線香屋さんということなのでしょうね。筑波山は、「筑波石」という湿気を含んで腐りかけた石でできています。というか、年月を経て、御影石の塊だった山ががばらばらに崩れた石ころになっています。だから筑波山から流れ出る谷川も、とってもいい感じ、水車を設置したり、水を引いたりするにはもってこいの地形です。
私が見た時は、お盆用にか緑色のお線香をつくっていましたが、いつもは枯れ葉色です。http://www.yutari.jp/chihou/chihou_yasato/cc130823_02.htm 楽天でも売っていますよ(笑)。杉の葉でお風呂を沸かすような匂い、香りが強いのが好きな夫は一度にたくさん火をつけて楽しんでいます。
コメントを投稿