2014年8月9日土曜日

銀線細工


植民地の香りがする、銀の打ち出しの匙です。
この繊細さは、素朴で野太いもの好きの私の好みとかけ離れているようですが、何故か惹かれます。
きっとタイの工房やカンボジアの市場などで、何度も職人さんが銀線細工をつくっているところを見る機会があったからでしょう。


銀線細工とは、銀の薄い板を細く切って糸のようにして、それに撚りをかけておいてからくるくる巻き、接触したところを溶接しながら、平面をつくっていくものです。


東南アジア各地に見られますが、各地に見られるということは、もともと中国、あるいはヴェトナムあたりにあった技術でしょうか。
 

丸い匙にはスルタンらしき線彫りの模様がついていますから、大陸部ではなく島嶼部のマレーシアかインドネシアでつくられたものかもしれません。


薄い、薄い銀の、打ち出しが素敵です。
小さな家庭の工場や、市場の片隅にある工場で、陶器のお椀に仕込んだ脂台を前にして、小さな槌をふるっている職人さんの姿が見えるようです。


こちらは、現代の銀線細工。
銀線と言っても長年経っても色が変わらないので、合金です。その昔、若いタイの学生さんにお土産としていただいたものですから、値の張るものではありませんが(失礼)、それでも手で細工されたものです。
 

もっとも、花のブローチの線は機械でつくられています。職人さんは線からつくるのではなく、出来合いの線を加工するだけです。


我が家には残念ながら、この匙に合うような、カップ&ソーサーがありません。合うようなどころか、ソーサーのついたカップはほとんどないのですが、このソヴィエトのカップ&ソーサーはどうでしょう?


そう悪くありませんが、やっぱり木の匙の方が似合うでしょうか。
 





2 件のコメント:

karat さんのコメント...

こんにちは。
銀線細工って、東北物産展(秋田県の工芸)などで見た覚えがあり、その後バリ島に行ったときお土産屋で見かけたので、あれっ?同じ?と思っていました(それきり忘れてましたが…)。
それで、先ほどネットで調べたら、秋田の銀線細工は平戸細工とも呼ばれてるそうで、南蛮渡来の技法だったのですね…。
 それにしても、写真のブローチは花弁が7枚で、不思議な枚数だなと思いました。(^^)。

さんのコメント...

karatさん
そうそう、銀線細工は秋田にもありましたね。すっかり忘れていました。そうか、バリでは見たことがありませんでしたが、あったのですね。東南アジア諸国にあるから中国オリジンのものと思われますが、もう中国にはないのかな、技術の伝播って面白いですね。
あはは、花弁が七枚だって、気にしたこともありませんでした。どうして、ターダーくんからもらうことになったのか、彼は今どうしているのか、日本で友だちと食事するといつも一番遅いのに、タイに帰ると、誰よりも早く食べてひんしゅくを買うと言っていたターダーくんを、懐かしく思い出すブローチです。