2021年9月12日日曜日

『いのちなりけり』


葉室麟さんの雨宮蔵人(あまみやくらんど)三部作を読み終わりました。
実は、武士が出てきて刀を振り回したりする物語は、もともと好きではありません。ところが、葉室麟さんの物語には、ほぼ切り合いがつきものだし、藩などで不正が行われてそれを正そうとした人が狙われたり殺されたりするとか、お家騒動とか、私の決して好きではないテーマが繰り返し出てきます。
それなのに、読んでしまうのは、どういうことでしょう。

この『いのちなりけり』のシリーズには、実在した将軍たちや大老など幕府要人の面々、将軍の母や妻や局など大奥の面々、天皇など公家の面々、大名たち、学者たち、画家、歌舞伎役者、吉良上野介や赤穂浪士の面々など、誰でも名前を知っているような人たちが、これでもかと出てきます。そして彼らの意向を受けたり受けなかったりして、柳生、伊賀、公儀隠密、歩き巫女など、忍びの者たちが暗躍します。

以前、シリーズ2の『花や散るらん』の途中で、登場人物の多さにうんざりして、挫折したことがありました。今回は、シリーズ3の『影ぞ恋しき』の、しかも下巻から読んだので、全部読み通すことができました。楽しみがなくなるので、いつもは結末を先に読まないのですが、中には結末を知ってから、ゆっくり読める物語もあります。
登場人物が多いだけでなく、何とか藩の何とかさんの息子などというのはまだしも、例えば将軍の側室が産んだ子が養子にもらわれて、さらに養子に出され、それがのちに見いだされて名前を変えてといった風に、一人でも名前がころころ変わっている人も多くいます。
いったい、何人くらいの登場人物がいるのか、パッと無作為に開いたページの人の名前を拾ってみただけで20人以上もいましたから、もしかすると、名前が出てくる人だけで、200人はくだらないかもしれません。しかも、名前は一字違いで似ていたり、昔の読み方なので、ルビが振ってないところは読めなかったりします。

ある物語を読んで、その続きを読んでみたいと思うことがありますが、雨宮蔵人シリーズのように、一人を長い年月追い続けたものは、楽しみが続きます。
また、『蜩の記(ひぐらしのき)』の羽根藩シリーズのように、1つの藩に焦点を当てて、人は変わっても、同じ場所を舞台にしたものも興味深いものです。

一作読むだけでもエネルギーが要る長編を、かくもたくさん書き残したものよと、葉室麟さんには感謝です。






4 件のコメント:

karat さんのコメント...

「蛍草」のドラマをテレビで見て、葉室麟を知り原作を読みました。
続いて葉室麟の物を読もうと思ったのですが…解説等を見るとお家騒動の話とか多くて私も苦手で、そのまま遠ざけていました。春さんのブログを見て、今度なるべく軽いものから(^^;)、読んでみようかと思いました。

さんのコメント...

karatさん
私も『蛍草』から入りました(笑)。あれも豪商と結託して私腹を肥やす、お家騒動でしたね。
私の軽くてお勧めは、『辛夷の花』、『峠しぐれ』あたりでしょうか。ちょっと重いけれど、『蜩の記』シリーズは読みごたえがあったような気がします。ずいぶん前に読んだので、すっかり内容は忘れていますが(笑)。

karat さんのコメント...

ありがとうございます。その辺から試してみます。(^^)。

さんのコメント...

karatさん
花のような女性が出てくるのも、特徴ですけどね(笑)。