2022年1月9日日曜日

コンゴの籠


コンゴに住む、ヨンベと呼ばれる民族グーループの人が編んだ籠です。材質はヤシのようです。
大きすぎるからかセールにされていたので、手に入れることができました。


コンゴには熱帯多雨林もあり、植生が豊かなのでラタンだけでなく、さまざまなヤシが生えていて、人々の生活に使われてきたものと思われます。


片方だけ、紐通しのようなものが残っていたので、元々は身と蓋を2か所でつないであったのかもしれません。


この籠は、芯材を巻き材で巻きながらくるくると編んでいく、アフリカによくある巻き編み(コイリング)という技法で編んであり、長径が65.5センチもある大きなものです。
内側には色が褪せないで残っていて、元の豪華さを偲ばせています。


蓋の上に重いものを乗せていたのか、蓋の真ん中あたりがへこんでしまっていました。


これをなおしてみようと、しばらく水に浸しました。

熱帯アジアやアフリカに自生するヤシのラタンは、約600種類あり、棘などを使ってほかの木に登って行くのが特徴です。太いの細いのいろいろあり、長い材料が採れるので、さまざまな地域で籠や家具につくられ、使われてきました。
しかしこの籠は、ラタンではないヤシを使っている可能性もあります。

ヤシの葉柄を裂いた紐と、ヤシの葉で編んだ蓋もの

写真の束ねたものは、パルメラヤシの葉柄を細かく裂いたものです。


カンボジアではパルメラヤシの葉柄を裂いたものは、束ねる紐として使ったり、縄を綯ったりしますが、これで籠を編むことはありません。竹、ラタン、ヤシの葉など、籠の材料はいくらでもあるからです。
しかし、コンゴではどうか?ラタンではなくて水に浸して柔らかくした別の種類のヤシの葉柄を裂いて籠をつくった可能性も、消し去ることはできません。
アフリカには乾燥地も多いことから、アフリカの巻き編みの籠といえばギニアグラスやエレファントグラスなど、イネ科の草の籠を思い浮かべてしまいますが、ヨンベの人たちが住んでいる場所では、容易にヤシが手に入るものと思われます。


大好きなザンビアの籠も素材がコンゴの籠のものによく似ています。


上がコンゴの籠、下がザンビアの籠です。


さて、しばらく水に浸した蓋を裏から押し上げるように押してみました。すると蓋が平らになって、いい形に復元されてきました。


このまま乾かすと、いつかのエレファントグラスの帽子のようにしっかりかたまって、簡単には形崩れしない籠になりました。

コンゴは世界有数の資源産出国で、コバルト、ダイアモンド、金、銅、スズ、タンタル、タングステンなどの鉱物が産出されています。この鉱物資源争奪のため争いが絶えず、産出地域の住民は、銃撃によって土地を奪われたり、過酷な鉱山労働に従事させられたり、性暴力を受けたりと、さまざまな迫害がなされています。
そして採掘された鉱石は、携帯電話やパソコンなどの電子機器を中心とする多様な工業製品の原料にするために、世界中に輸出されていますが、コンゴはその恩恵をまったくと言っていいほど受けてなくて、最貧国のままです。
コンゴで長年、女性への性暴力による破壊と向き合ってきて、2018年に、ノーベル平和賞を受賞した医師のデニ・ムクウェゲ氏は、
「コンゴは扉も窓もない宝石店のようなもの」
と例えています。
携帯やパソコンを使っている人たちのほとんどはコンゴの窮状を知りもしません。せめて思いだけでも馳せたいと思います。





2 件のコメント:

rei さんのコメント...

どちらの籠も良いですねー。インドネシアのアタの緻密に編んだ籠に似ている様にも思えます。どれだけの時間と労力が掛かっているのでしょうか。
素材によっては、水に暫く浸けて柔らかくしてから編むものもありますが、完成品を水に浸けて形を整え直す方法、成程です。

さんのコメント...

reiさん
ありがとうございます。そうそう、アタの籠によく似ています。
アタはシダの茎を裂いたものと言われています(実際そうなんだろうけれど、笑)。アフリカにもあるのかな?アフリカの熱帯多雨林の植生はよく知りませんが、古い大陸だし、シダ類はいっぱいありそうな気もします。
ただ、コンゴの籠はラタンでできているとか、クバ(ビロウ、Livistona chinensis)でできているなどという記述があるので、ヤシではないかと思っています。

エチオピアの高坏の形をした籠も、草籠でしたが、長く段ボール箱にしまっていて形が崩れたので、濡らして矯正したことがありました(笑)。