漏斗(じょうご)は、いつの時代にどこでできたものでしょう?
口の細いビンなどに液体を注ぐ需要が出てきてから必要になったもので、そう古い歴史があるものではなさそうです。
素材としては、金属、木、ガラス、陶磁器、プラスティックなどありますが、しばらく前までもっとも一般的なのは、ブリキ、アルミ、ステンレスなど金属製のものでした。
これはままごと用のおもちゃの漏斗で、金属板を機械で絞ってつくったもの、皺が寄っています。
その後、回転させながら絞る機械ができてから、皺が寄らずに絞れるようになりました。
このブリキの漏斗は、細くなったところで別の筒を差し込んで溶接してありますが、回転させながら絞るようになって、細い口も一体のものとして絞れるようになりました。
金属を絞る機械のない時代は、板金をそれぞれの形に切って、溶接してつくりました。
これはイギリスの漏斗です。
板金を切っただけでなく、縁は変形を防ぐために外に曲げてあり、持ち手も強度を出し、怪我しないようにと、折り曲げてあります。
金属を絞る機械ができてからも、機械を持っていないところでは、溶接でつくりました。
これはタイのスリンという小さな田舎町のブリキ加工屋さんで、つくって売っているのを買ったものですが、美しい仕上がりです。
タイでもカンボジアでも、ブリキ加工屋さんの店先にはオイルポット、漏斗、スコップ、バケツ、その他いろいろ、素敵なものが並んでいました。
ただ、どれもプラスティックに容易に取って代わられるものなので、もうそんなお店は消えてしまっているかもしれません。
さて、連休に遊びに来た息子から、酒屋さんの蔵から出たという、銅の漏斗をもらいました。
一枚の銅板を手で打ち出してつくってあります。
細くなった部分も一体ですが、切れ目が入っているのは、この細さでは伸ばしにくいので、太めに伸ばしておいて、後から一部切り取り、寄せて接合して、細く仕上げたものと思われます。
漏斗は、縁がゆがまないよう、端を折り返したりしているものですが、銅版の厚みを頼んでか、切りっぱなしの姿で仕上げてあります。
昔の酒屋さんは、酒ビンにお酒を詰めるときに、みんなこんな漏斗を使っていたのでしょうか。
家にある、漏斗たちです。
お米づくりをやめて、残念ながら使わなくなりましたが、竹の漏斗は宮崎県日之影の小川鉄平さんがつくってくださったものです。
竹を叩いて、繊維にして綯った(なった)紐の美しさ。
先端の蔓での綴り方の美しさ。
細部まで、「美の神経」が行き届いています。
2 件のコメント:
話題の広さに毎回楽しんでおります。
板金の美しさ丁寧な補強リブ、
末代物ですね。
昭ちゃん
末代物と思っていたら、どっこい環境が変わって、「ごみ」になってしまったのでしょう。取り壊す酒屋さんから出てきたそうです。
作家さんではなくて鍛金を生業とする人は、今でもいるのでしょうか?打ちだし鍋なんて、全部機械で叩いているんですものね。
カンボジアでは銀や銅を叩いて蓋物をつくる人が市場に普通に店を構えていました。
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