2015年7月3日金曜日

『南タイの森の木』


タイで、すごい本が出ました。
『FOREST TREES of SOUTHERN THAILAND』(2015年) です。
何がすごいかって?


700ページ以上の分厚い本なのに、これは「第一巻」で、学名でAからEsまでしか掲載されていないのです。
Eu以降はこれからのお楽しみ、この分だと、第三巻にまでなるのではないでしょうか。

タイにお住まいのTomokiさんが、手に入れてくださいました。
Tomokiさんは、私のもう一つのブログ「私の拾いもの」で、熱帯の種などを紹介したとき、よくコメントを下さって、知り合った方ですが、いまは、おもにfacebook上でのおつき合いです。
そのTomokiさんが、fb上でこの本を紹介していらっしゃって、「欲しい人がいれば」というお話だったので、お願いしました。

しばらく前まで、植物図鑑と言えば、写真ではなく、絵の方が正確でした。しかし木を、全体の姿から、葉、花、実といった細部まで表現するとなると、絵だけでは限界がありました。
やがて写真が主流になり、次第にわかり易い写真が撮られるようになったものの、アップも引いたものも欲しい、しかも多種類欲しいとなると、本づくりが難しいのか、なかなかよい本がありませんでした。

私は植物の本が好きで、行った先々でも、よくその土地の植物図鑑をさがしたりします。
『インドの植物』、『南部アフリカの木』、『プレトリアの野生の花』、『フィリピンの花』、『エチオピアの植物』、『聖書の植物』などなど、日本では手に入らない興味深い本を手に入れましたが、絵が簡単すぎたりして、あるいは長大なシリーズのほんの一部だったりして、大満足できる本と言うと、そうそうありません。 
それらに比べても、『FOREST TREES of SOUTHERN THAILAND』 は素晴らしい!
熱帯多雨林の植物に関しては、おそらく世界一でしょう。
大きくて重く、森の中に携帯することはできませんが、いろいろな角度や時期の写真や絵が多数挿入されていて、わかりやすさ抜群です。


例えばフタバガキ科だけで、71ページにも及んでいます。


カキノキ科も45ページです。
熱帯では柿は育ちませんから、そんなにカキノキ科の木があるとは、想像もしてみませんでした。

タイ南部は半島ですが、東北部や北部が、気候風土で大陸の特性を持っているのに比べると、島嶼(とうしょ)の特性を持っています。
ですから、『FOREST TREES of SOUTHERN THAILAND』は、他の東南アジアの島嶼部、マレーシア、インドネシア、フィリピンなどの森の木にも、参考にできるはずです。


著者は、『A FIELD GUIDE TO FOREST TREES OF NORTHERN THAILAND』(2000年)と同じ、シモン・ガードナーとピンダー・シディスントーン、それとコンカンダ・チャヤマリットの三人です。

どの木にも、タイ語名がタイ語で書かれていて、タイ語で検索もできますが、Tomokiさんによるとタイ語版も出ているそうです。
ビルマなどに比べると、タイ人はあまり本を重視しない人たちでした。35年前には、誰も本を読みたがらないし、本屋さえほとんどありませんでした。
それが、こんなりっぱなタイ語の本ができるなんて、隔世の感があります。

本のつくりは、『A FIELD GUIDE TO FOREST TREES OF NORTHERN THAILAND』が、(ガイドブックだから)ソフトカバーであるのに対して、『FOREST TREES of SOUTHERN THAILAND』 は、ハードカバーになっています。
これだと、見たいページを押さえていなくても開いておくことができて、とても便利です。








3 件のコメント:

karat さんのコメント...

表紙の絵、素敵ですねぇ。タイの南の森の不思議さと豊かさに満ち満ちています。中身は英語だし専門的すぎて読めそうにないですが…。
フタバガキというのですか、羽根つきの羽根のような種子は。表紙にも絵がありフタバガキは目だまの一つですね。
そういえば半分に折った細い紙の中央に金属のクリップをつけて上から落としてくるくるして遊んだことがありますが、あんな感じで森に散っていくのでしょうか?

karat さんのコメント...

追伸 コメント投稿の際、色々な写真から食べ物を選ぶとかサンドイッチを選ぶとか、面白いです。ロボットは認識できないってことですかね。

さんのコメント...

karatさん
フタバガキ科は世界で約600種類あり、タイには約80種類あるそうです。私はまずその実と言うより木姿に魅せられました。もううっとりするような、りっぱな木姿です。カーンとまっすぐ高くて、シンボリックです。その木の下にたたずんで見上げて、ふと足元を見たらあの羽のついた実がびっしり落ちていたときは、どきどきしました。

合板材料のラワン(フィリピン語、マレーシア語ではメランティー)はフタバガキ科です。サラワクで、1ヘクタールに3本くらいしか生えていないメランティーを伐採するために、伐採道路をつくったりするので、熱帯多雨林全体が破壊されることが長く問題になっていました。フィリピンのラワンが壊滅的に伐採されたあと、マレーシアのメランティーがほぼ採り尽くされました。有用樹とは何かと、考えさせられます。

ごめんなさい。コメントが面倒みたいで。
私自身は、コメントするとき、ときおりローマ字を読まされますが、たいていは「私はロボットではありません」という箱にチェックを入れるだけ(笑)でコメントできます。プロバイダーも、いろいろ考えているのですね。