学生時代に手に入れた、山形張り子の小さな犬を大事にしていました。
上品な姿で、絵つけも繊細、表情もよくて大のお気に入りだったのですが、あぁ残念、いつの間にか失われていました。
引っ越しはたくさんしたし、空き家に荷物を保管していたことも多かったので、湿気に弱い張り子はずいぶんだめになってしまいましたが、山形張り子もそのうちのひとつだったのでしょう。
山形では、鞠猫はいまでもつくられているようますが、犬はつくられていません。
三春張り子の狆(ちん)です。
おでこのひっこんでいるところ、どんぐり眼、意匠化した松のような鼻、何とも言えません。
こんな顔を毎日見て過ごしたら、ほっと気が抜けて、安産間違いなしだったことでしょう。
猫でもないのに、大きな鈴を首から下げている張り子の犬は、産地不明です。
三春の犬に比べると、子どもの工作のようなできですが、それにはそれなりの味わいもあります。
この犬ののんびり顔もまた、安産のお守りにはぴったりでしょうか。
高松張り子の鯛持ち犬。
高松張り子は、もろくて壊れ易い張り子です。
ちょっとした衝撃ですぐへこんで胡粉の落ちる脆さ、膠の混ぜ方のせいか、色もはがれ落ちやすいく、めくれ上がってはがれてしまいます。
やっと犬とわかる程度です。
高松張り子の宮内ふささんは、1883年(明治16年)に生まれて、7歳のころから見よう見まねで人形をつくりはじめ、90歳を過ぎても制作(晩年は絵つけだけ)されていましたが、1985年(昭和60年)に、102歳で亡くなられました。
考えられないほど精力的な方で、ものすごい量をつくられました。
いまでも、ヤフーオークションで宮内ふささんの張り子やひねり人形が出品されていない日はないくらいですが、私が驚くのはその数より人形たちの状態のよさです。どれも、箱に入れてしまっておく以外とても保てない美しさで、飾って毎日見たい私には真似できないことです。
我が家にも、宮内ふささんのつくった張り子やひねり人形がありますが、残念ながら、だいたいこんなぼろぼろの状態になっています。
0 件のコメント:
コメントを投稿