2011年6月28日火曜日

もっこ





カンボジアの町の、ごくごく一般的な雑貨屋さんの店先です。
雑多なものばかりで、訪ねてもなんの興味もそそられないようなお店ですが、写真で見ると、籠からカンボジアの生活が垣間見えて、別の面白さがあります。

左の棚には、町のブリキ屋さんがつくった、バケツやじょうろも並んでいますが、目立つのは籠です。ラタンの籠も、竹の籠もあります。

並んでいる籠は、毎日の生活に欠かせないものばかり、手前右端の笊に乗せてあるのはちいさな箒です(写真はクリックすると拡大します)。その横には、お米を入れる籠や、買い物籠、茣蓙、左の方には、箒、鶏にかぶせる大きな籠などが見えます。

鶏やひよこは、昼間は庭を自由に歩きまわっていますが、夜や、ついばまれたくない収穫物を庭に乾したりするときは、この籠を鶏にかぶせます。

鶏籠の上と、地面に直接置いてある長いものは、編めるばかりに加工したラタンです。たぶん森で採集したものでしょう。
ラタンはヤシの一種で、蔓状に伸びます。枝分かれせず、他の木を支えにしながら、長いものは300メートルも伸びるものがあります。
太いもの、細いもの、短いもの、長いものがあり、育ち方も、大きな原生林の木の下でしか育たないもの、カンボジアのように道端に生えているもの、バングラデシュのように畑で栽培しているものなどなど、いろいろです。
そのままでは刺があるので、刺をきれいに取り除いてから使います。

奥にある大きな籠は「なんでも籠で」す。ゴミを入れたり、収穫物を入れたりする籠です。そして、手前は「なんでももっこ」、土や石、ゴミなど運ぶのに使います。




プノンペン郊外の村でも、副業として、もっこをつくっている村がたくさんありました。
写真の雑貨屋さんで売っているもっことは、ちょっと材料が違います。タイでもカンボジアでも、モッコは丈夫でさえあればいいので、もっとも安価で手に入る材料を使ってつくります。

プノンペン近郊の村では、近くの荒地や道端に生えている、細いラタンを使ってもっこを編んでいました。刺があるので、ラタン採りは楽な仕事ではありませんが、村の道では、よく自転車の後ろなどに、採ってぐるぐる巻きにしたラタンを、満載して運んでいるのを見かけました。

このもっこは縁にだけ、竹を回してありますが、プノンペン郊外では、竹は他の地方から運ばれたものを買わなくてはなりません。かつては村にも竹が生えていましたが、椰子砂糖を採る椰子の木に梯子として使われるなど、採り尽くされて今はありません。

日本の、放置されて山へ山へと拡大していく竹やぶを見ていると竹が採り尽くされるなんてことは考えられませんが、インドではかつて竹細工がもっとも盛んだった、広大なタミルナドゥー州一帯で、竹がまったく見られなくなっているのですから(最近の一部植林地域を除く)、人間の力は侮れません。




できあがったもっこです。
日本の手箕と形は同じですが、これを箕として使うことはありません。重い土や石を入れて運んでも、ちょっとやそっとでは壊れない、一家に一つ以上なくてはならない道具です。




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