2014年8月27日水曜日

手鞠


我が家には、母の手元からやってきた、糸でかがった鞠や、貼り絵をした鞠がいくつかあります。
中のいくつかは、母の叔母の形見として、母には大切だったものですが、中のいくつかは、わりと雑なものです。


母の叔母がつくった鞠はなかなか素敵です。
叔母は細工ものの上手な、多趣味な方でした。


その母の叔母の鞠に触発されて、私の祖母がつくったものや、あるいは祖母に勧められて、いろいろな人がつくった鞠たちです。
糸の選び方、房のつけ方、紐のつけ方など、もう一工夫欲しいところです。ちょっとしたところで、つまらないものになっています。


その、つまらない最たるものが、祖母を喜ばせようと、学生時代に私がつくった鞠です。
やれやれ。
そこいらにあったものでつくったとはいえ、既成の、撚りのかかったフランス刺繍糸をそのまま使っていて、味もへったくれもあったものではありません。
早く捨てたいと思いながら、祖母が喜んだことを思うと、なかなか捨てられません。


母のつくった貼り絵の鞠も、母がつくったのでなかったら、ただちに捨てたい代物です。
まず、鞠そのものがまん丸ではなくていびつなのが納得できません。手元には二つだけありますが、もっといっぱいあり、そのどれもが丸くありませんでした。

もらってきたとき、
「全部持って行って」
「ちょっとなぁ」
「そう。じゃあ、好きなのだけ持って行って」
「どうして、どれも丸くないの?」
「丸くならなかったのよ」
丸くない鞠を十個つくるより、丸いのを一個つくったらと思ってしまう私でした。

「なんかさぁ、模様も多すぎない?メリハリがないじゃないの。かわいくないのもあるし」
「あれもこれもって、欲張るからね」
バランスを考えず、片っぱしからべたべたと貼ってあります。
仕事は早いけれど、何でも雑なのが母です。
また、材料にこだわらず、あるもので適当にやっつけるのが母です。そのため、せっかく手をかけた袋ものが、最後の紐選びでつまらないものになったり、せっかくつくった服が、あり合わせの裏地やボタンでつまらないものになったりします。


じつは、祖母の家には、母がお手本にした貼り絵の鞠がありました。
見ず知らずの方にいただいたもので、七転び八起きの意味を込めてか、八つの姫だるまが並んでいるものでした。
鞠をかがっていた糸は、たぶんしつけ糸だったのでしょう、地味な生成りでした。
上下にはつまみ細工の桜の花びらがついていて、姫だるまはいびつで大小があり、それがバランス良く配置されていました。
墨で描かれた姫だるまの顔は、決して上手とは言えませんでしたが、とても味わいがありました。
ずっと祖母の家の六畳間の神棚の下にぶら下げてあって、見慣れたものでした。

鞠をつくったおばあちゃんは、全国の、戦争からまだ帰って来られずにいる人たちの留守家族に、その鞠をつくって届けていた方でした。


その鞠の完成度の高さと、母の鞠の完成度の低さは、ちょっと比べものにもなりません。
「あの姫だるまの鞠はどうしたの?」
「あぁ、あれ。汚れてきたなくなっていたから、捨てちゃった」
とほほ、母は何とも思っていなかったのでした。


こうやって見ると、母の鞠は丸くないだけでなく、かがり方も適当だとわかります。糸が三本も並んでいるし、しかもたるんでいるではないですか!

この親にしてこの子あり。カエルの子はカエルの子。母の悪口を言うということは、天に向かってつばを吐きかけているのと同じことですが。





10 件のコメント:

hatto さんのコメント...

お母様の手まりは、それだけで見ていて楽しくなれる作品でありますが、春さんのコメントで何十倍も楽しく見せていただきました。

前に鍋つかみを見せて頂いた時同様、ダイナミックなお母様の性格がこの毬にも表現されていますね。大らかで豊かな心を感じる、幸せ感たっぷりの毬です。

さんのコメント...

hattoさん
あっはっは。そう言ってくださるのはhattoさんだけです。まったく、こんなものを質より量で勝負してどうするんだという感じですよね。どうして、十個もつくるの?理解不能です(笑)。もっとも妹のモンペを100本以上縫った母ですから、鞠十個なんて、何でもなかったと思います。
今頃、きっとくしゃみをしていることでしょう。

しまとかげ さんのコメント...

貼り絵の鞠、賑やかでとても可愛らしいです。作るが難しそう・・・
春さん、もうご存じかもしれませんが、
ニャンコ先生meets日本の民芸というガチャガチャがあるみたいですよ。
ニャンコ先生がさるぼぼや赤べこなどに変身しています。

さんのコメント...

しまとかげさん
情報ありがとうございました。ニャンコ先生を早速注文しました。初めてのネットショップなので(最安値)、年齢をチェックする欄があって、ところが50歳以上は、50歳以上としてまとまっていたからよかったです(爆)。
貼り絵の鞠好きですかぁ?鞠は昔は鈴など入れて綿で形づくっていましたが、今はリンゴなどにかぶせてあるプラスティックの袴が弾力があってやりやすいです。それを丸めて、カセのしつけ糸などを長いまま切らないで、ぐるぐるきつく巻いていくと、だんだん丸くなります。それに、ハガキくらいかな、はがきより厚いかな、そんな紙をつくりたいものの形に切って綿を少々乗せ、縮緬をかぶせて裏で貼って表には墨で眼鼻を描いたりします。それを配置良く鞠に張りつけ、上下には紐と房をつけて終わりです。糸で模様を出すのより簡単だと思います。なんて、私はつくったことがありませんが、書いているだけで、面倒そうですね(笑)。

しまとかげ さんのコメント...

早速、注文されたのですね(笑)!
情報がお役に立ててよかったです。
わたしも欲しいガチャガチャがあるのですが、
なかなかの高額で手が出ません。がまんがまん。
鞠の作り方、読んだだけでヒエ~となりました(笑)

さんのコメント...

しまとかげさん
ありがとうございました。
私も興味をそそられるガチャガチャが他にもあることがありますが、どう飾るかイメージできないと買わないようにしています(一応ブレーキ、笑)。それに、だいたいは、フィギュアしか買いません。
今回のニャンコ先生はストラップですが、ストラップもじつは飾りにくいので、普通スルーです。でも、ニャンコ先生が赤べこになっているなんて、見逃せませんよね(笑)。
でも、そのネットショップまだ何にも言ってこないんですよ。もしかして、いい加減な店だったりして。もう少し様子を見てみます。

匿名 さんのコメント...

はじめまして。大草原の小さな家で検索していたらたまたまこちらのblogに繋がりまして読み進めているうちに とても素敵な毬を 見つけました。素敵ですね。我が家には小さな娘がいます。
毬を手作りしてあげたいなと思いました。

匿名 さんのコメント...

初めまして、お母様の鞠がとっても気に入り、思わずコメントさせていただきました。
「狙ってない感」に惹かれます。
無防備で楽しげで愛嬌があって、本当に可愛いですね!

さんのコメント...

匿名(1)さま
コメントを見逃すことはまずないのですが、見逃していました。もう一ヶ月以上も経っている!ごめんなさいね。
きっと、気を悪くなさっていることでしょう。匿名(2)さんがコメントを下さらなかったら、気がつかないところでした。
手鞠づくりは意外と簡単ですよ。小さな鞠をお雛さまの時に柳の枝にぶら下げるととっても素敵です。といいながら、なかなかつくれませんが(笑)。
コメントありがとうございました。

さんのコメント...

匿名(2)さん
コメントありがとうございました。そうですね、玄人受けなどを狙ったもの、何か斬新さを表現したいと思う心などは、自然に作品に出てしまいますね。まあ、母はつくりたいときにつくりたいようにつくったのですが、それにしてもいい加減でしたよ(笑)。だいたい鞠が丸いって基本でしょう(爆)。母がお手本にした、捨ててしまった鞠はその点、もっと深いものがありました。それに母が気がつかないところもおかしいです(笑)。