2014年8月5日火曜日

東南アジア式パンツ


 タイの「農民服」の定番のパンツです。


タイの中でも一番よい農民服とされているのがプレー県でつくられたもので、しっかりした布地を藍染めにして、しっかりと縫ってあり、とても長持ちします。
日本でも藍は虫を除けると言われ、野良着に使われてきましたが、タイでも同じです。


マチは前二枚、後ろ二枚ずつはぎ合わせたものです。脇に長方形の布を二枚、腰にも長方形の布を二枚、マチが前後ろで四枚、計八枚の布をはぎ合わせつくっています。
前後はなくて、どちらでも着られます。


着方は、履いてから、布の端を持ってサロンのように左右にピンとひっぱり、一方の端を腰に沿わせて前に折り、しっかり押さえておいてからもう一方も折り、端をねじったり、巻き込んだりして着ます。
これはちょっと布が厚手なので、私は上からベルトをして、ベルトより上の布を折り返して着ていました。
少々激しく動いても、一日、着崩れることはありませんでした。


その上に、農民服の上着を着れば、パーフェクトな農民スタイルです。
でも、これではあまり農民、農民し過ぎるので、上には白い農民服を合わせたりしていました。

このような、畳むと平らになり、二枚の長方形の脇布をマチでつなげたパンツは、タイ、カンボジア、ヴェトナム、そして東南アジアの山岳地帯に住む諸山岳民族の間に広く行きわたっている形です。もともとは、中国服から来ているのかもしれません。
 
 
黒いサテン(繻子)のパンツは、カンボジアのおじいちゃんたちが好んで履くパンツです。
カンボジア人はちょっと褐色の肌をしていますが、老いてなお筋肉質な上半身は裸のままで、下にこのサテンのパンツを履いた長老たちのカッコいいこと。
私も真似して部屋着にしたいと、市場で手に入れました。

この光るパンツはカンボジアのおじいちゃんだけでなく、東南アジア各国に住む中国系のおじいちゃんやおばあちゃんが着ているものでもあります。


ラットの『カンポンのガキ大将』に描かれている、店先に座っているおばあちゃんは、タイ、マレーシアなど、どこの街でも見かける中国系のおばあちゃんで、日がな一日を通りに座って過ごします。このおばあちゃん、やっぱりこのサテンのパンツを履いています。

余談ですが、もう少し若い、赤ちゃんにご飯を食べさせているおばちゃんが着ているのは、パジャマにしか見えない、ツーピースで、やはり中国系のおばちゃんたちの定番です。


タイの農民服は、農作業しやすいように短めの丈のものもありますが、サテンのパンツはくるぶしまである長いものです。
マチは細かく、複雑にはいであるのですが、布が足りなくて寄せ集めたわけではない証拠に、裏表、同じはぎ方をしています。

このパンツは、私には問題がありました。
布がつるつるすべるので、なかなか腰に留まりにくいのです。もっとも、これもベルトをすれば問題なく留まりますが、なにせくつろぎ着として使おうと思ったもの、家でベルトで締めるなんて、とんでもないので、今でもときたま、思い出して着るくらいです。


これは山地民ヤオ人のパンツです。
脇布はびっしりと刺繍した長方形の布、それに四角い布を三角に折ったマチをつけています。


マチをもっと大きくすると、山の中では歩きにくいのか、幅の広い布は織れなかったからか、パンツの裾のあたりには細い別布をあしらって、歩きやすさを確保しています。
手紡ぎ、手織りの布ですから、履き心地は抜群です。


30年ほど前まで、ヤオ人が農作業のときも家庭にいるときも日常的に着ていた、民族衣装一式です。
頭に巻く布、上着、上着を縛る帯、そしてパンツです。どれも重要で、どれ一つ欠けることはありませんでした。


パンツは、タイの農民服のパンツと同じように前に寄せて重ねて着るので、刺繍布は真横についているのですが、着ると前に寄ったようになります。


私は、勝手に腰にゴムを入れて着ているので、模様は左右にきます。


ヤオのパンツよりもっとマチが大きいパンツです。やはり山地民が着ています。
上の三枚のパンツは、工場で織った広幅の布を使ってつくったものもありますが、基本的には地機(じばた、いざり機)で織った細い幅の布を使うものです。
ところがこのパンツは、広幅の布だからできる形ですから、早くから広幅が織れる高機を使っていた南アジアからの影響の大きいものです。
一枚の布を切らないで、折り紙のように折って、足と腰が出るように縫い合わせてあります。


脇にスリットを入れ、紐を回して結んで履きます。


着ると、後ろは布がだぶつきますが、足がパンツの中で自由で、なかなか履き心地のいいものです。



2 件のコメント:

karat さんのコメント...

こんにちは。
なるほど、一番下のタイプが、私がバリ島で買ってきたのと同じですね。昔からある形だったんですね…。
上のタイの農民のパンツは、タイパンツと言って東南アジア系の雑貨を扱うサイトで売ってるのを見ました。
 私としてはヤオ族のパンツが履きやすそうだなと思いますが、刺繍がすごいですね。普段身につけるものにもきれいな刺繍をびっしりするのですね…。
何だかそれがもったいなくて、私は普段に履けそうにないです。(^^;)

さんのコメント...

karatさん
つるつる滑るサテンのパンツを除いては、どれも履きやすいです。サテンのパンツも、毎日履いていたら、きっとずるっと解けなくなると思います(笑)。
マチが大きい、karatさんも持っていらっしゃるパンツは、布に張りがなくて、くたっとしているものを使うとうまくいくようですね。一度タイの絣布でつくってみたことがありましたが、張りがあり過ぎて、模様があるのもうっとうしくて、全然着ずに解いてしまいました。
民族衣装は大好き、ヤオのパンツも、いつも洗濯機で洗濯しますが、びくともしません。民族衣装だけで決めるわけにはいきませんが、一部なら取り入れて楽しめます。なんちゃって、じつはヤオの衣装、上着も頭に巻く布も持っています(笑)。やれやれ。