2022年2月10日木曜日

井上さんの籠

Sくんから、水俣の井上さんに籠を頼もうかと思うんだけど、目が飛び出るほど高いだろうか、と問われました。


15年以上前に、井上さんの腰籠を注文したとき、農業で頑張っている元同僚のSくんにもひとつプレゼントしました。それが今でも現役で活躍していて、Sくんは気に入っていて、大豆などを入れる籠にも、井上さんの籠が欲しいと思ったようです。
「あれから15年以上経っているから、それなりの値段になっているかもね」
「ネットショップで見たら、3万円もしているから、どうかなと思って」
「ネットショップほどではないと思うけどねぇ」
訊くと、Sくんは井上さんのホームページも見ていて、水俣市の市役所にも問い合わせて、電話番号も教えてもらっていて、もう買おうと決めているのだけれど、値段だけが気がかりのようでした。
一時、井上さんは地元の人の注文しか受けなかったときもありました。今はどうか、なにせSくんは現役のお百姓なので、問題はなさそうです。
Sくんは結局注文しました。
大きめの籠と小さいのと2つ、半年ほどでできあがるそうでした。Sくんが送った腰籠の今の写真を見て、井上さんも喜んでくれたようでした。
Sくんも井上さんも名の通った大学で国際関係学を学び、どちらも英語がよくできて、一時は海外で国際援助の分野で働き、そして今はSくんはお百姓、井上さんは籠師さんをしています。

さて、近所のお蕎麦屋さんが12月いっぱいでそれまでの店を閉め、1か月間のお休みののち、節分から元の店のすぐ近くに新しい店を開きました。


そこは百姓家で、敷地には数軒の建物が建っていますが、母屋を住まいにして、納屋を店に改造したものです。

Sくんが籠を注文したことから、そう言えば、お蕎麦屋さんのおかみさんが我が家にあった井上さんの籠に惚れ込み、籠を注文したことがあったのを思い出していました。それももう、10年以上前のことです。
てっきり使うのだと思ったら、もったいなくて使えないと、前の店には飾ってありました。

お蕎麦を食べようと、開店早々行ってみましたが、あの籠も見たいと思っていました。


その籠は、新しい店でもやっぱり飾ってありました。
新しいときは美しい緑色だったのに、すっかり飴色になっています。ご家族でおそばを食べるときは、この籠を使っていらっしゃるのかもしれません。
井上さんは、技術をつないでいきたいと言っていました。注文すればこうやって形になって地球上に残っていく。使い倒すのもいいけれど、残っていくのもまた、素晴らしいことだと思いました。





 

2 件のコメント:

かねぽん さんのコメント...

おはようございます。
腰籠も背負い籠も、こちらでは「はけご」と呼んでいます。山菜採りやきのこ採り、農作物の収穫に欠かせないものですが、何十年も前に作られた物がいまだに現役で活躍しています。
これでは籠作りをする人も、さぞかし儲からないだろうなと思います。

さんのコメント...

かねぽんさん
そんなに長く使うって、素敵なお話ですね(^^♪
何十年も前につくったのが壊れない、壊れても籠師さんに頼むと縁巻きとかし直してくれる。そんな籠師さんは評判が評判を呼んで、やっぱり仕事が途切れないと思います。
観光地の籠屋さんなどで買うと、籠がすぐ壊れてしまったりします。すると愛着もわかないし、同じものを見かけても二度と買いません。
と言いつつ、大きな落ち葉籠は2つも使い倒してしまいました。壊れないように密に編んであるのは、軽快に使うのはちょっと重い。というわけで粗く籠目に編んでいるのを使うと、軽いけれど壊れやすい。兼ね合いも大切ですね。
我が家でも柿をもぐときなどの腰籠は、大きいのや小さいのを使い分けています。