2020年7月22日水曜日

登山人形

農民美術人形について、詳しいことはすでに書いたので、ここでは省略しますが、働く農民の姿の人形とともに、山登りの人形が数多くあります。
何故、生活が感じられるものに混じって、山登りの農民美術人形(こっぱ人形とも言う)がつくられはじめたのか、しかも数が多いのか、不思議です。スキーの記念とは言っても、当時の家庭にはあまり似合わないだろうと思っていました。
しかし、何度も山登りの人形を見ているうちに、ふと、山登りの農民人形が祖父母の家の二階にあったことが思い出したのは、数年前のことでした。以来、見るたびに懐かしい気持ちになっていました。

祖父母の家あった山登りの農民美術人形は、10センチ弱の高さ、白樺の直径は4センチくらいだったでしょうか。ノミの彫り跡を見せている尖った山は無着色、登る人は服やズボンは、水色や薄若草色で彩色されていたような気がします。
若き日の父が買ってきたものか、それとも誰かにいただいたものだったのか、私が見たころは、あまり人目につかない二階にひっそりと置かれて、埃をかぶっていて、この人形に関して誰も注意を払ったり、話題にしたりすることはありませんでした。
祖父母の家の二階への階段は、「梯子段」と呼んでいた梯子のようなもので、最上段の端が丸い棒に通してあり、使わないときは天井からぶら下がっている可動式の木の棒をかませて、吊っておくようにできていました。
降ろしっぱなしだと部屋が狭くなるのでいつも吊っていて、子どもは梯子段を外そうにも手が届きません。二階の窓を開け放して風を入れたり、二階の押し入れに入っていたお雛さまを出したりするとき以外は、雨戸が閉まっているので薄暗く、子どもにとっては縁のない場所でした。


そんな、子どものころに家にあったことを思い出してなかったら、関心を持つことがなかった登山人形を、一つだけ持っています。


高さ4センチ、直径2センチの小さな人形で、山もついていません。
台には朱で、「上高地」と書いてあります。


手の込んだ登山人形には、登山者が二人いるものもあり、山があったりトンネルがあったりと、小さいながら大自然を彷彿とさせるものもあります。


しかし、何もない方が想像力を膨らませることができる場合もあります。登山している人とも取れますが、ただものをかついで、黙々と山道を行く人にも見えます。


 コンピュータのディスプレイの脚に置いているので、ふと目に入ると、
「彼は今日も頑張っている!」
と思わず見つめてしまい、ちょっと元気が出ます。








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